履修した講義の感想などまとめ

まるるです。初めて記事らしい記事を投稿します。

タイトルにある通り、今回は私が2回生前期で履修した講義の感想をいくつか書こうかなと思います。(初めての記事で「noteではお気持ち表明を書こう!」なんて言ったのは一体何だったのか)

1回生の4月。手引きなどを見て、上回生配当の講義とかバンバンとることに憧れを膨らませ、先輩に教わりながら、買ったばかりの慣れないMacで履修登録をしたのを覚えています。が……どれもこれも、必修とコマが丸かぶりしていて、そんな憧れを持っていた科目はことごとく見送ることになりました。

それから1年後。履修登録ページを開ければ、前年とはうって変わってたくさんの空白! デフォルトで入れられている必修科目がほとんどなくなっているではありませんか! これにはとても感動しました。そうして、反動とも言わんばかりに上回生配当と他学部聴講を入れまくった結果、理学部専門の2回生配当の科目は分析化学のみとなりました(笑)。

さて、ここでは、京大理学部化学系志望2回生の私が講義の感想を書いていくわけですが、大抵の化学系志望の人が順当にその学部学年の講義を取れば2回生前期までに出会うような講義を書いたところで、つまらないように思います。人気の人社科目などは既に多くの人がリポートしてるでしょうし……

そこで、以下の科目に絞って書くことにします:
1)創薬有機化学演習(薬学部;2,3回生配当)
2)有機反応機構論Ⅰ(農学部;2回生配当)
3)化学数学(理学部;3回生配当)
4)有機化学Ⅱ(理学部;3回生配当)
5)有機化学演習(理学部;4回生配当)
6)無機化学ⅡA(理学部;3回生配当)
7)計算機化学演習(理学部;3回生配当)
8)科学コミュニケーション-E3(全学共通だが多分理学部管轄;とってる人少なかった)

それから、今回は割愛させていただきますが、全学共通の数学探訪Ⅱ(水5)がめちゃくちゃ推し講義です。卒業単位などに多分入りませんが、数学を専門としない人が数学の「研究」「探究」をできる、その題名通りの素晴らしい講義です。是非是非。

今後の履修登録で、皆様(特に現1・2回生の方々)の参考になれば幸いです。が、講義の感想はあくまで私の主観です。この記事の内容をどこまで信用するかは自己責任でお願いいたします。また、私は前述の通り理学部化学系志望で、それに該当しないかたには参考にならないかもしれませんがご了承ください。あと、私は文章を短くまとめるのが苦手で(既に前置きが長い)、グダグダとあれこれ書きますが、どうか悪しからず……

※理学部生の場合、他学部聴講は、履修登録の時に申請すると専門基礎科目の卒業単位としてカウントされます。その後、取り消し期間に取り消し可能です。理学部以外のほとんどの学部において、上回生配当は取れない(配当回生が合っていないとエラーが出る)のですが、配当可能学年で検索して出てくるものを取るといいと思います。


1)創薬有機化学演習(月3・薬学部)

 薬学部の講義です。2,3回生配当で、3回生が大半でした。4人の先生によるリレー講義でした。創薬、と名前はついていますが、前半は分光法による有機分子構造の解析、有機合成化学、反応機構などなど……ほとんど基礎研究的な部分というか、理学っぽいというか。難易度も、おそらく、理学部の3回生配当の有機と同じぐらいだと思います。
 後半は少し薬学っぽい内容でした。3人目の先生は、「プロセス化学」の講義をしてくださいました。研究室の中で有機合成をする上では考慮しなくていいような「安全性」「費用」などの問題を、創薬では考えなければならない、というような話です。4人目の先生の講義は「ADC = Antibody-Drug Conjugate」という最先端の抗体医薬のお話。とても興味深いと感じました。ざっくり話すと、抗原認識の仕組みを使ったDrug Delivery Systemの一種です。癌などの病巣のある場所でのみ、抗体と薬剤との間の結合が切れて薬が放出されるので、副作用とかの心配をせず、ほとんど毒のような薬剤さえ使えるというわけです(むしろそのぐらい強力でないと駄目な事情があるのですが)。生物選択ではなかった私でもわかるような説明をしてくださいました。尤も、きっと来年にはまた別のお話があるのではないかと思いますが……。この講義のおかげで、薬学の世界を初めて垣間見る機会を得て、興味を持つきっかけとなりました。
 なお、後半の先生がたも、演習問題については前半と同じく、普通に有機の演習という感じでした。
 成績ですが、全て出席点で評価されます。オンラインの時は、代わりにPandA上で「授業ノート提出」がありました。対面の場合は、毎時間小テストがあって、その答案を提出することで平常点がつくのですが、「別に解けなくてもいいよ。頑張って埋めてたらボーナスあげる」というようなノリだったので心配はいらないと思います。

2)有機反応機構論Ⅰ(木2・農学部)

 農学部の森先生の講義です。ボルハルト・ショアー現代有機化学に準拠しており、「手で覚える有機化学」を掲げていて、手を動かして反応機構を練習する機会が何度も設けられていたように思います。
 正直、理学部で「有機反応の仕組み」を学びたいと思っているひとには少し物足りないかもしれません。かなり基本的な反応のみを扱いますし、後述の有機化学Ⅱほどには軌道の相互作用とかまで踏み込まないですし。しかし、「化学反応は『押しと引き』だよ!」など、有機反応の巻き矢印を考える上で簡単な指針となるようなキャッチフレーズを何度も繰り返してくださり、手だけでなく耳でも覚えました。何より、先生の熱意がひしひしと伝わってきます。また、先生がひとりひとりの状況を見てくださったり、頻繁に学生を指名したり、Zoomになっても雑談の時間があったりと、双方向性がかなり確保されていました。そういった意味で、とても「好き」だった講義のひとつです。(あと、私が理学部だということで先生にしっかり顔覚えられてました……笑)
 成績は平常点と期末筆記試験で決まります。全学と同様、教室の前のほうにある学生証リーダに忘れずタッチするようにしましょう。

3)化学数学(火1・理学部)

 ここからは理学部の講義に入っていきます。倉重先生担当の3回生配当講義です。
 この講義は「線形代数の基本」「群論(点群)」「フーリエ解析」「微分方程式」の4つのパートに分かれており、前半のふたつ(特に群論)が圧倒的に時間数が多く、後のふたつはそれぞれ1回ずつぐらいでした。最初のふたつでは、1回生で学ぶような行列とか写像の知識をフルに活用するのです。そして、残りでは、学部入試勉強でやるような数学Ⅲの微積分を使います(1回生の微積の概念は使わなかった印象です)。3回生よりも2回生のほうがこうした記憶が新しいと思うし、コースツリーを見る限り3回生はかなり忙しそうなので、2回生でとるといいのではないかなと思います。
 前期の講義内容のほとんどを群論が占めていたのですが、そのパートにおける授業の進み方が、幸いにも、ちょうど私がこの春休みに自主ゼミに向けて読み込んでいた『物理や化学のためのやさしい群論入門(岩波)』という本とよく合っていたように思います。そのおかげで、かなり助かりました。分子の対称性を解析するための点群や指標表について「優しく」解説してくれています(「易しい」かどうかは、数弱の私にはわかりかねます)。シュライバー・アトキンス無機化学で点群が出てきたときは、化学徒向けに数学の説明がかなり省かれて逆にかなり混乱したのですが、この本は化学で使う範囲の数学をカバーしてくれていて納得ができました。おすすめです。


 成績は毎週のレポート課題と期末筆記試験で決まります。筆記試験は、まさかの全問群論でした。1問ぐらいフーリエ解析とか微分方程式とかが出ると思ったのに……

4)有機化学Ⅱ(水2と木1・理学部)

 4月の間は齋藤尚平先生(FLAP分子などで有名?)、5月以降は千葉先生が担当してくださった、3回生配当の講義です。千葉先生はシンガポールのNTUの教授で、非常勤としてリモートで授業をしてくださいました。オンラインならではです。
 齋藤先生の講義は、教科書にほぼ準拠していたし、4月末のレポート課題も講義そのままのような感じでした。それでも、有機合成分野などの最新の研究を紹介してくださるなど、やっぱり大学の先生から教わるのはいいなぁと思いました。
 千葉先生の講義はとても良かったです。基本的に、先生のオリジナルのスライド(NTUでの授業のレジュメをそのまま使っていたらしい)をベースにして行われました。シラバスで案内されている教科書であるBruice有機化学だけでなく、ウォーレン有機化学に書かれているような「どのような仕組みでそのような反応(あるいは選択性)が生じるのか」まで踏み込んでいました。また、海外の大学で研究・教育している視点から、日本と海外の大学院の違い、学生や研究者の立場、考え方、最先端の研究……といったお話を毎回してくださったのです。これこそ独学と大学講義との違いだと思います!!
 千葉先生のパートの中で、中間テストが1回、期末テストが1回ありました。前者はZoomを介して、不正防止のためにカメラオンの状態で、PandA上に配布された問題を制限時間内に解くというものでした。反応機構を書く問題が多めでした。私が勉強不足であるせいだとは思いますが、かなり打ちのめされました……。後者は対面で(千葉先生は日本に来れないので齋藤先生の監督のもとで)筆記試験が行われました。こちらは、中間に比べて反応生成物の一問一答問題が大部分を占め、中間に比べれば優しい問題だったかなと感じます(易しいかどうかは、成績が出るまでは言ってはならない気がしますが)。
 この講義は、週に2コマあります。そのうち一方は2回生配当の物理化学(量子論)と被っていたのですが、私はそれを来年取ることにして、今期は有機を優先しました。来年2回生でとるかどうか考えている人は、この辺りの兼ね合いが悩ましいかもしれません(物理化学に関する噂を聞いて、来年大丈夫かなと不安を募らせる私です……)。有機化学のほうをとる場合は、2回生配当の有機の範囲をしっかり理解した状態で臨むことをお勧めします。私の場合は、春休みに友人とこの部分を固める自主ゼミをしていました。

5)有機化学演習(木5・理学部)

 齋藤颯先生担当の、4回生配当の講義です。自分の学年+2の講義を取るのは無謀だと言われていますが、「ついていけなくなったら切ればいいや」ぐらいの気持ちで取りました。が、取り消し期間が過ぎた後から問題が難しくなり始めるという……
 院試験の対策のための講義といえるかもしれませんが、実際の院試験の問題だけでなく、国際化学オリンピックの本戦や準備問題からも採って来ているみたいです(ちなみに齋藤颯先生は2回メダルをとっているOBさんです)。解説を聞けば大体のことが納得できるのに、痛いところを突くような問題というか、しっかり理解していないと初見では解けない……などと、学部入試の勉強が思い出されます。
 問題は授業の数日前に公開されますが、答案の提出を求められることはありませんでした。授業当日、名簿順に人が当てられていって、対面なら板書、Zoomなら答案のPDFを画面共有しながら、学生または先生(主に後者)が解説するというスタイルでした。答えられなければ「パス」を使ってもよく、その場合はあとで別の問題の時に当てられます。毎回いくつか難問があって、その時は何人も連続でパスするという光景がありました。
 成績は、ほぼ平常点で決まるようです。最終回のとき(4回生は院試休みがあるので少し早めの時期に終わりました)、先生はZoomで「ここにいるひとたちには全員に『優』をつけるので、もし違ったら異議申し立てしてください」とおっしゃっていました。なので多分単位はきますが……授業内容を理解しているという自信がないので、悩ましいところがあります。
 なお、担当の先生は毎年変わるようです(隔年で代わりばんこという噂も)。先生によって大きくやり方が変わるらしいので、ご注意ください。

6)無機化学ⅡA(金1・理学部)

 奥山先生担当の、無機化学の講義です。二本立てになっていて、前半は電気化学、後半は固体化学がテーマでした。前半は、シュライバー・アトキンス無機化学の酸化還元の章などに普通に載っている内容だったと思います。
 後半の内容は、手持ちの参考書にない範囲だったので少し苦労しました(私が無機と物理化学をあまり得意ではないというのもあると思いますが)。バンド理論の強束縛モデルと自由電子モデル、X線回折から結晶の構造を解析する際の原理(逆格子の利用)……など。
 成績は、前半最後(電気化学)と後半最後(固体化学)のレポートで決まります。問題数はかなり少なめでした。

7)計算機化学演習(金4・理学部)

 金先生担当の3回生配当です。計算機化学演習とは言いますが、実質「FORTRAN講座」です。プログラミングの経験があると有利かもしれません。とはいえ初歩から教えてくれるのでそこまで前提知識を必要とせず、私としては2回生からとるのをおすすめします。
 今年はオンデマンドでした。PandA経由で京大の仮想端末(VDI)に自分のPCを繋いで、コードを書いたり実行したりします(ただ、私はVDIが重くて予約も面倒で嫌いだったしemacsに慣れていなかったので、途中からローカルのターミナルでオフラインでvimを開いてやってました。それでも成績には影響しない……はずです。vimしか勝たん!)
 初めは、Linuxコマンドの使い方、FORTRANの基本的な文法、及びコンパイルと実行の仕方、Gnuplotの使い方、などなど基礎を叩き込まれます。後半からは、それを分子動力学に応用し、分子振動の動きとか、直線方向の運動とかを、FORTRANでシミュレーションしたのちGnuplotで描画するという課題が中心になります。前半は自分でプログラムを組み立てるのですが、後半はベースとなるプログラムが資料の中で提示されていて、それを問いに合わせてちょっとずつ改変して実行してみる感じでした。なので、ちゃんと原理を理解していたかどうかは少し自信がないですが……使うのはかなり慣れました。
 成績は、毎週の課題(担当のTAさんにメールで提出。どうやらTAさんによって返却のスピードが違うらしい……?)及び期末レポートで決まります。期末レポートは、自分で一からプログラムを組み立てる方式でした。今までの応用という感じで楽しかったです。

8)科学コミュニケーション-E3(木3・全学?理学部?)

 Jim先生が担当する、主に理学部の2回生を対象とした講義です。前期の木3・木4・後期の木3・木4、いずれも全く同じ内容を扱います。私は木5の有機化学演習が対面でこのE3講義がオンラインだということで、3限で登録しました。すると、なんと履修者が私含めてふたりという事態が発生(初めは3人いたのですが、途中から来なくなりました)。4限には10人ほどいて割と賑やかだったはずなのに、この違いは一体なんなのでしょう……? TAさんも長田先生も途中からいらっしゃらず、Zoomには合計3人だけが入っている状態でした。幸い、Jim先生はとてもノリの良い先生で、時々無茶振りや寸劇、ドッキリに巻き込まれた思い出もありますが、アットホームな雰囲気の中で英語での議論を楽しむことができました。人見知りな私は、大人数の中だと黙り込んでしまうので、この環境はとても良かったと思います。
 この講義を通してのテーマは「英語で科学を伝える」ということ。序盤は、与えられた記事を読んで「各人が重要だと思う部分をまとめる」という課題をしました。しかし、それはとても主観的――最も客観的な伝達方法、それは学術論文。そこで次に、何回分もの時間をかけ、「論文の構造・読み方」を学んでいきました。Thesis statementなど、1回生のライリスを彷彿とさせる言葉がたくさん出て来ました……。論文がひとつ丸々与えられ、先生の講義をもとにしながら、「この部分はMethod Sectionの中のEquipmentに該当する」とか「ここからここまではResultsだ」とかを、もうひとりの学生と議論します。論文に関する講義の最終回では、自分たちでAbstractを書きました。その後の何回かは、「口頭でひとに伝える」ことをテーマとした授業でした。Natureの記事のなかで興味深いものを選び、事前準備し、相手に説明する、ということをしました。期末は「自分で何かモデルを作って地学の現象を3~5分でプレゼンする」こと。モデル自体はかなり簡単なものでもいいのですが、「地学に関する術語を使うならば発表の中できちんと説明する」ことは重視されていたようです。
 成績は、毎週の課題と上述の期末プレゼンで決まります。これは初回に言われることなのですが、「Extra workをすると加点」というシステムがあります。つまり、例えば「3つ列挙せよ」という問題があれば5個列挙するなど。そうすることで初めて、満点がもらえるらしいです。このようなことをやっていると、時々、PandAの得点欄に平気で「11.00 (Max 10.00)」と出たりもしました(笑)。
 院試とかも考えれば定期的に英語に触れる機会は作っておいたほうがいいし、論文の読み方も教えてもらえるし、結構賑やかな雰囲気の中で英語を使える。かなりオススメの講義です。


もう一度。講義の感想はあくまで私の主観です。加えて、年度が変われば話もガラリと変わるかもしれません。そのため、この記事の内容をどこまで信用するかは自己責任でお願いいたします。

皆様の参考になれば幸いです。それでは。

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