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ささやかな生きがい

つい先日、東京都美術館に行って、初めて知ったのだが、フェルメールの「窓辺で手紙を書く女」が修復されていたらしい。

2022年には修復されたものを、東京都美術館で観られる。なんと、背景の壁には元々キューピットが描かれていたらしく、フェルメールの死後、何者かによって上塗りされていたものを、今回の修復で蘇らせたようだ。

フェルメールの作品と確認されているものは全部で35点ほど。大学生の頃、そのうち7、8点を、一部屋で観られるという夢のような企画展があった。当時の私は印象派一択だったので、その価値をよく理解していなかったけれど、友人に誘われるまま観に行き、印象派の画家たちが描く「光」とは違った光陰にすっかりハマってしまった。

あの展覧会から、フェルメールは私のお気に入りだ。一番好きな作品は「真珠の耳飾りの少女」。王道だけど、あのラピスラズリの青色と、少女の唇に目を奪われた。魅惑的。それでいて親しみというか懐かしさを感じたのは、モデルが女性ではなく少女だからだろうか。 次に好きなのは、「リュートを調弦する女」。全体的に暗い印象の絵なんだけど、女性の顔に差し込む太陽の光りとのコントラストが素晴らしいのだ。女性は上目遣いで窓の外を眺めており、解説によると遠く離れた愛しい人を想っている様子を描いているらしいが、その表情に寂しさや憂いはなく、愛しさを抱えて待ち焦がれているような視線を投げかけていて、なんとも愛らしい。ただ、どうやらここまでの明暗のコントラストは、退色による影響らしい。女性の眉や髪が薄いのもそのせいだ。

当初はもっと鮮やかでハッキリとした色合いだったのだろう。カーテンや地図、女性が身に付けている装飾品やドレス等々。そこに描かれていたであろう、色合いや筆触を想像すると、「この時代に生きていたらな〜」なんて思ってしまう。でももしそうなら、印象派は生まれていないんだよな?ルノワールやモネを観れない人生なんて、考えられない。そんなの絶対あり得ない!
こんな妄想が頭の中を駆け巡った。そうしたら、色々な作品を気軽に観に行ける現代に、感謝の意を表したくなった。絵画の修復技術や研究も然り。
文明の進化と技術発展、万歳!

この時代に生きているから、見られるモノがある。それらを想うと、じわーっと湧き上がってくるなにかがあって、温かい気持ちになる。こういうの、幸せっていうのかもしれない。兎にも角にも、来年が楽しみだ。

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