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水車小屋のネネ

水車小屋のネネ、読み終わりました。
すーっと読める本だった。まるで自分のことか、もしくは知っている人生が描かれているような気分だった。こうやってどこかの誰かには見えない人生やドラマがあって、それをみんなが歩んでいるんだよなあ、と考えずにはいられない本だった。

私が一番好きだったセリフを。

「自分が元から持っているものはたぶん何もなくて、そうやって出会った人が分けてくれたいい部分で自分はたぶん生きてるって。だから誰かの役に立ちたいって思うことは、はじめから何でも持ってる人が持っている自由からしたら制約に見えたりするのかもしれない。けれどもそのことは自分に道みたいなものを示してくれたし、幸せなことだと思います。」

ー水車小屋のネネ P.648より、研司が律に向けた言葉

私はこれ以上同意することができないくらい、共感を抱いた。
人と関わることが好きなのは、そこに毎回想像を超えるような経験、価値があるから。

今までのどんな経験をとっても、出会った人が分けてくれたいい部分で私が成り立っている。お世話になった人、いつも気にかけてくれる人、そんな人たちを気にかけることが生活の主であること。これ以上に平凡で、それでいて最高の幸せは他にないと思う。

以前留学に行く前にそれを経験した先輩に言われたのは、
「留学に行く理由なんて、ただ行ってみたいでいいんだよ。それを説明したって分かってくれやしないんだから。でもそこに行って、あぁ私はこの人と出会うためにここに来たんだな。とか、この経験をするためにここに来たんだな、っていう後付けで十分なんだよ」と。

人はいつも後からしか振り返れない生き物だ。感謝の言葉に、実感というそのありがたみが伴ってくるのも、ずいぶん先のこと。ふとある地点で振り返った時に、恵まれていたんだな。と、その風景を懐かしむことができるのも、また幸せなことだと思う。永遠というものはない。だからこそそれを慈しみ、懐かしむということも人生の楽しみの一つなんだと思う。それが人生なのかもしれない。

人との別れを経験すると、どうしても寂しい気持ちにはなるけれど、人生という観点から見ると、ふとした時に想う相手がいるのも、いいものだと感じるようになる。

人生が味わい深いものになりますように。それは決して、一時的な感情や衝動に突き動かされた、すぐに消えて無くなってしまうものではなくて、大切なものを、これからもずっと心の中で味わいながら大切にできる、そんなものでありますように。

そんなことを考える、本でした。最高でした。


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