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機器探訪#001 PIEGA COAX 711

スイスのスピーカーブランドPIEGAのミドルラインCOAXシリーズのフロア型スピーカーCOAX 711を紹介します。

機器の特徴

COAX- THE SERIAL PRIZE WINNER

中高音域ユニット

このスピーカーの1番の特徴はCOAXというシリーズ名の由来にもなっている同軸2ウェイリボンユニットで、なんと手作業で組み上げられます。

NOTHING BUT TOP CLASS – THE HISTORY OF OUR RIBBON PRODUCTION

この同軸リボンユニットは、Hiリボンの周りをMidリボンが取り囲む構造をしており、単一のユニットでプレゼンス帯域を十二分にカバーする500Hz〜50kHzという超広帯域を担っています。
そのためか音の繋がりは自然で、オーディオ再生で感じることの多い生演奏との差異という違和感をあまり感じません。
またリボン振動膜の軽さ故かその出音はしなやか且つ繊細でレスポンスも早く、どこまでも伸びていくような感覚を与える中高音は、ある種神懸かって感じます。

低音域ユニット

低音域はアクティブユニット2基とパッシブラジエーター2基という合計4基の22cmウーファーにより構成されています。
他社のバスレフ型スピーカーの試聴時に気になった風切り音も無く、リボンユニットから遅れることもない適度なスピード感を持った深みのあるタイトな低音が、奏者の実在感を浮き上がらせてくれます。

グリルカバー

グリルカバーは開口率が50%程度のパンチングメタルの表面にサランネットを張ったものとなっており、その構造に依るものなのか、装着時は高音域側が僅かに吸収されて聴こえます。

このグリルカバーは、非常に強力な磁力をもつネオジム磁石が金属を引き寄せ、剥き出しになったリボン振動膜に刺さるという、所謂PIEGAの悲劇を予防するための仕組みでもあります。
そのため普段はグリルを装着した状態で落ち着いた楽器の響きに満たされた部屋で家族団欒の時を過ごし、休日の夜など1人音楽と対峙したい時はグリルを外して、高音部の煌びやかさに身を委ねる。そんな使い分けをして愉しんでいます。

エンクロージャー

そして流石のSwiss Made、押出し成形によるアルミエンクロージャーの継ぎ目一つ無い流麗なC型形状とヘアライン仕上によるマットな質感は気品に溢れ、シンプルで洗練された佇まいは正に精悍という言葉が似合い、所有欲をも満たしてくれます。

音響的な特徴

音色

全体的な音色の傾向としては、アルミという素材からイメージしてしまう冷たく硬質的な音色ではなく、どちらかというと木管楽器のイメージに近いような耳に刺さることなく聴き疲れのしない音色です。
それでいて分解能は充分に高く、剛性の高さに依るであろう凛とした端正な低音が立体感を感じさせるという、音を聞くのでは無く音楽に浸るためのスピーカー
特にラズモフスキー第3番でのメルランによるピッツィカートのタッチニュアンスや、フォリアを奏するオノフリによる粘りあるボーイングなど、本当にこのスピーカーから奏でられているのかと思わず耳を疑った程です。

これはもしかすると、スパイク受けとして採用したKaNaDe02suによって余分な付帯音が削ぎ落とされたことにより、余韻や質感が浮き立てられているお陰なのかもしれません。

パンフォーカス

これはお店での試聴時に気づいたのですが、この同軸リボンユニットは指向性が少ないのかリスニングポイントによるフォーカスの差異があまり無く、音の結像の仕方がパンフォーカス調です。
結果として視聴位置に依らず“それなりに”心地よく、カジュアルに音楽を愉しむ事が出来ます。
そのため、我が家のように音を聞くのではなく日常に音楽という彩を添えるための、専用の音楽室ではない所謂リビングオーディオという環境にはうってつけであり、そんな特性も最終的には購入を決心する際の最後の一押しとなりました。

あとがき

なお納品に際しては、PIEGAの輸入代理店であるフューレンコーディネートの北村さん自ら拙宅までお越しいただき、スピーカーをひっくり返してのボトムプレートの組み付けから設置までを実施いただきました。

北村さん曰く「リボンはエージングで音が変わっていき、10年ものになると音がトロけますよ。」と。
今でも充分心地良い音楽を奏でてくれていますが、果たして10年後、20年後はどんな音色を奏でてくれているのでしょう?

日常生活に音楽という彩りを添えてくれるスピーカー。これから少しずつ育てていきたいと思います。

※購入したオーディオスクェア相模原店のブログで配送リポートを掲載いただきました。

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