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ピアノを習わせたい親、興味のない娘

私自身は幼少期から今に至るまでピアノを弾いている。
7歳~10歳まで音大の先生による週2のレッスン、週1のソルフェージュ(音楽理論を学ぶ学校)とかなり集中的に学んだ後は移住した先であまり先生もおらず、独学の期間が長い(独学というほどかっこいいものでもなく、ただ一人で好きな曲を弾き続けただけだが)。

数年前、意を決してショパンのバラード1番という割と有名でなかなかに難しい大曲に挑戦した。
・・が、自分のレベルに対して難しすぎる曲に挑戦したこともあり、弾いても弾いても、音は弾けても曲になっていかない。
ショパンらしく、カッコよく弾きたい願望はあっても、どう足掻いても太刀打ちできないレベルだった。
久しぶりに、誰かプロからのアドバイスが本気でほしいと思った。

ピアノ教室は一度始めると途中でやめ辛いが、思い切って地域のピアノ教室をいくつか探し、幸運なことによさげな教室を見つけ通い始めてそろそろ2年ほどになる。

〇〇ピアノ教室ではなく音楽サロンらしき名前が付いていることもあり、ピアノを絡めた企画が非常に豊富でソロの発表会はもちろんのこと、それ以外に毎年2回ほど、なんらかのソロではない会が催される。
私はそのたびに現在6歳の娘にも同行してもらってきた。

ピアノだけ、興味を示さない6歳の娘

娘が4歳、5歳と歳を重ねるにつれ、先生はもちろんのこと他の生徒さんからも「〇〇ちゃんは、いつからはじめるの?」と、割と本気で始める前提で質問をされてきた。
若干の言いにくさを感じつつも毎度「それがあまり興味がないみたいなんです・・」と事実を伝えてきた私だ。

先日も発表会後の懇親会で私の知らないところでも娘は先生に「〇〇ちゃんも、ママみたいにピアノやる?」と直接聞かれ「〇〇はやらない」とハッキリ答え、先生を動揺させていたそうだ・・
(傍で見ていたらしい私の母から聞いた)

大人になってまで自分がピアノを習っていると
・ママもやっているんだから娘もやりたがるだろう
・もしくはママが習わせるだろう
と思われがちだが、

私は自分がスパルタ練習がしんどかったのと、なにより興味のない娘を根気強く説得して練習させる気合をあいにく持ち合わせていない・・。
フルタイム共働きで、習い事にそれなりの労力を使うというのはなかなかしんどいものだ・・特に我が家のようなずぼらな夫婦には。
(まして、すでにサッカー、水泳、学習教材、やっている。本人がやりたいと言い出したものだけ。)

ピアノをやらせることに私はあまり興味はないが(パパはある)、娘は割とピアノや演奏が身近にある生活だ。
私が練習する様子はもちろんのこと、私の発表会のときに娘と同世代の子がドレスを着てステージに立つ様子を見る、コンサートに行く、それ以外にも私の実家では両親がそれぞれ楽器を弾くので生演奏も身近で見てきている。

サッカーやりたい、スイミング習いたい、お勉強したい、英語やりたい、と割と色々なジャンルに対して好奇心旺盛な娘だが、これまで一度も「ピアノをやりたい」とは言わなかった。
不思議なほどに。

単に興味がないだけなのか、母の練習を見て「これはなかなか大変そう」と思ったのか、理由は不明だ。
そんなこんなで娘にピアノを習ってほしいと願い続けているパパの期待をよそに、娘は私と違ってピアノとはあまり縁のない人生になるかも、と思っていた。
(パパ自身は幼少期エレクトーンをやらされたのが本当に嫌だったらしいが、一方で幼少期のピアノは脳にもいいからと娘にはやってほしいらしい)

きっかけは、おしり探偵風の謎解き

先日、あまりの猛暑に外に出る気になれず、家で娘と二人で過ごしていた。
朝から一人でドリルを引っ張りだしてきて楽しそうに問題を解いている娘を見て、そういえば音符で何かクイズをできないかと唐突に思い浮かんだ。

ドリル好きというのもなんだか不思議だが、娘は題材に限らずクイズを出して挑戦して答える、というチャレンジめいた過程がどうも好きらしい。

誕生日に祖母からリクエストして贈ってもらったイーゼルに早速五線譜を書いて、ドを3つ並べてクイズを作ってみた。
普通にやってはおもしろくないので、娘が好きなおしり探偵の声マネをしながら「〇〇さん、ここになんて書いてあるか、ナゾをといてもらえますか?」と尋ねてみた。
「誰も解けないナゾなので、〇〇さんには難しいかもしれませんが・・」と付け加えることで、娘に火が付いたようだ。

音符の読み方を教えていないので、娘は当然チンプンカンプンだ。
子供向けの教本はあるので、それを自分で見に行って推理していたが、もちろん外れまくる。
あまりに外れると嫌になってしまいそうなので、娘の好きなお人形になりきって「〇〇ちゃん、いっしょにナゾを解こう~」と切り替えてみた。
おしり探偵に加えて一人二役だ。

何度も外しながら、ついにドドド?じゃない?と答えに辿り着いてくれた。
そこから「もっとしたい!もっと難しいの出して!」とやる気になったので、そこで初めて音符がどう並ぶかを少しだけ教えた。
ルールが少し分かれば解像度はぐっと上がる。

音符をド以外に置いてみても、少しずつだが読めるようになってきた。
そうなると娘のお決まりのパターンだが「〇〇もクイズ出したい!」と自分が発問したいと言い出した。
ピアノを弾く母が当然有利なので娘なりに難しい問題を出してやろうと思ったのか、自分でイーゼルに五線譜を書いて、子供向けの教本をもってきて楽譜をそのまま書き写していた。
(五線譜は上下合わせて10本になるはずなのだが、途中からなぜか増えて13線譜になっていた。面倒で適当に線を増やしたらしい)

娘が一生懸命に書き写した労力に見合うリアクションを取らないといけないので、「う~ん、う~ん、なかなか難しいですねぇ~」とおしり探偵のマネを続けながら悩み、娘の問題を解いていった。
もちろん正解するのだが、娘は「ママが悩むような問題を出せた!」ことが嬉しかったようだ。

そこから2時間ほどだろうか、音符にまつわるクイズをあれこれと試しているうちに、娘が唐突に言ってきた。

「ママ、〇〇もこんどの発表会でたい!」

今月、発表会を控えているのだがそこに自分も出たいと言ってきた。
もちろん出れないので「発表会はピアノを練習してきた人だけが出れるんだよ」と伝えると、「〇〇もピアノやりたい!こんど自分で先生にやるって言う!」と言い出した。

「・・えっっっ?!??ピアノやるの???」
割と本気で驚いた。

発表会のたびに帰宅すると「発表会ごっこ」だけは熱心にする娘。
「ごっこ」は楽しくても、ピアノを弾くには練習がいる。
「ピアノってね、練習がいるんだよ。今〇〇はスイミングで頑張って練習してるでしょ。練習したからいろんなことができるようになったよね。ピアノもおんなじで練習しないとできるようにならないものなんだよ。」

「それならいいや」となるかもなぁ・・と思いながらも伝えると、「じゃあ〇〇、練習する!」と言い出し、その場で楽譜を片手に自分でピアノの前に座り弾き始めた。

必要なのはちょっとした工夫だったのかも

これまでは何だったんだろう、と思うほど分かりやすく興味を持った娘。
娘が3歳のころに何度かピアノを一緒にやってみたことはあったが、幼児にどうやって教えるんだ?と思うほど難しかったのをよく覚えている。

・どの音が、どの鍵盤のことなのか分からない
・親指で弾くのか、中指で弾くのか、どの指で弾くのか分からない
・そもそも5本の指でバラバラに弾くのが難しい
・楽譜でどの記号がどの音なのか分からない
・音の長さがわからない

もちろん最初はいきなり弾かずに歌から入り、まずは歌えるようになってから始めるのだが(教本にそう書いてあった)歌えるからといって弾けるかは当然別物だ。
歌うのを覚えて、今度は指の動きを見て、真似る。そんな繰り返しだ。
その工程が当時の娘にはあまりに果てしなく、旨みのないものだったのかもしれない。
教えてみた私からしてもこりゃ果てしないな・・と思ったものだ。

だからこそ「楽譜を読む」なんて一番旨みが無さそうに思っていたので、これまで特に伝えてきたことはなかった。
まずは楽譜を読むなんて置いておいて、弾いてみる方が楽しいだろうと思っていた。

まさかの思いがけないクイズから、娘が関心を持ってくれることになるとは。

そういえば前にパパが娘のサッカーの練習を見て、
「〇〇(娘)は理屈を理解してから動くタイプなのかなった思ったんだよね。コーチが新しい練習を説明したとき、まずは身体を動かしてやってみた子もいたけど〇〇は何度も質問して意味が分からないと動けない感じだった。理解して意味が分かってからは動けてた。」と言っていたのをふと思い出した。

ピアノも同じで、理屈がわかったからこそ意味が分かり、面白さを感じてくれたのかもしれない。

興味のないものは別にやらなくていい。
これだけピアノや音楽が身近にあって興味がないのだから、娘は興味がないタイプなんだろう。
そう思っていたが、自分の好きなものにいざ娘が興味を示すとやはり嬉しいものだ。

興味が持続するか、持続させられるか、は分からないがいつか娘と連弾をしたりする日が来るかもしれないとほっこりした良い休日だった。

おしり探偵にも感謝を伝えたい。


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