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デンマークにおける性教育とカリキュラムの実践〜子どもに与えるイクオリティーと自己決定権に関する影響〜

文責 : 北欧研究所 
佐藤奈々葉

概要

 デンマークの性教育は、どのように実施され、児童や生徒にどのような学習効果をもたらしているのだろうか。デンマークでの事例を参考に、日本の性教育の在り方を再考する。本稿では、性教育を包括的性教育という広い視点でとらえることで、コミュニケーションやイクオリティー、自己決定権という着眼点から分析する。

はじめに


 本稿では、性教育の先進国であるデンマークにおいてどのように性教育が行われ、それがどのように子どもに影響しているのかを検証する。研究対象年代は、日本で性教育が盛んに議論され始めた2000年以降とする。特に、「コミュニケーションと人権」という切り口に主眼を置いて研究したい。それは、包括的性教育として他者との関わり方を教える現場でどのようにコミュニケーションが取られるのか、教育する場そのものが、直接、他者とどのようにコミュニケーションを取るべきかということを示すことに繋がると考えるからである。さらに、性教育の中で自己決定権の重要性を教えることで、女性のエンパワメントにもつながると考える。本研究により、日本の性教育のあるべき姿について考える土壌を作り、ひいては自己決定権やジェンダー平等意識の構築に貢献したい。

 本稿の執筆にあたり、インタビューを快く引き受けてくださったオールボー大学Christian Graugaard教授、セックスセラピストのLone Geneser様、トラディウムのLaura Holm先生に、この場を借りて心より感謝申し上げます。また、本論題に関する様々な新しい視点を与え、協力してくれたコペンハーゲン大学の学生にも心より感謝しています。

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