ちょっと小話シリーズ1 「フリマアプリで着物生地や反物を売る人買う人のお話」

コロナウィルスの影響で、長々と更新できませんでした。

さて、コロナウィルスの影響もあり、着物業界の売り上げは爆下がりのようですね。

まあ、現代の着物というのは「娯楽」ですから、たしかにこういった影響は受けやすいと思います。

で、私はというと、現在は呉服屋さんのデッドストックなどを少しでもお金に変えたい!という依頼が多いので、特に「反物」を売りさばくことを中心に活動していました。

とはいえ、販売指導と監督みたいなことをしていただけですので、たいしたことはしていなかったのですが(どちらかというと、ついでに給付金などの申請指導などのほうが忙しかった)。

で、あらかた各呉服屋さんへの指導が終わったんで、こうしてなんか書こうかな、とまた更新することにしました。

そこで、反物を売りさばく際にいろいろ問題があったり、買う側の知識の違いでトラブルなどもあったんで、そういった部分を今回は書いていこうと思います。

これは今から反物などを手芸の材料に買いたい!なんて人にはとても重要な内容かもしれませんので、もしよかったら参考にしてみてください。

◆ 反物を売る側の心理と買う側の知識不足

 今回、反物の販売指導の中に各種フリマアプリでの販売も指導しました。

 その中で購入する側と売る側の認識の違いが問題となったんで書いておきます。

 まず、呉服屋が反物などを売る心理の中に「高く仕入れたものを捨て値で売る」という悲しい部分があります。

 これは着物などに精通していない人が反物の値段を見たら飛び上がると思いますが、そもそも、ピンキリはあるものの反物の仕入れ値というのは浴衣生地の安いので4000円前後、ブランドだと3万もするんですね。

 そして絹の反物になると1反だいたい安いやつ(呉服屋からしたらたいしたことない反物)が8000円前後、普通で15000円~30000円前後、良いものは30万~80万クラスのものまであるわけです。

 ですが、昨今の不景気もあり、そんな値段で仕入れたものも、売れず、そして仕立てる人もなかなかいない世の中なので、小さい呉服屋などは泣く泣く手放すしかなくなるわけです。

 そうやって、フリマアプリなどで出される反物のほとんどは破格で出品されます。

 商売は、日銭第一なところもありますので、できるだけ早くお金に変えたい!という呉服屋が多いんですね。

 そうなると、3万で仕入れた反物も5980円~3980円、よごれがあったら送料込みで2000~1500円で売るしかないわけです。

 はっきり言って「自殺」レベルではあるのですが、その仕入れ値自体はすでに支払った後ですので、なんとかなるわけです。

 しかし、このフリマアプリというのが曲者で、知識がある人から知識のない人、考える人から考えない人、文章を読む人から文章を読まない人まで多種多様にいます。

 そのうち、よく物事を理解していない方が5980円でも破格なのにさらに「安く」とコメントしてきます。

 そこまでは良いのですが、そうやって交渉した上で「検討します」というとても失礼な人もいますし、あきらかに安く買っても「苦情」が来る人までいるわけですね。

 ところが、呉服屋はこういった人に「二度と売らない」という態度を取ったりします。

 そういった心理のズレなどはどこから来るのでしょうか?

 ここからが本題です。

まず呉服屋の生地に対する概念というものを理解しましょう(かといってネットで詳しく説明してませんので、ここで書いていきます)。

呉服というのはまず「染めなおし」「仕立てなおし」「洗い張り」「湯のし」「シミ抜き」という概念があります(まあ、その他もありますが、大きくわけるとこの5つだと私は思います)。

これは簡単に言うと「生地や着物の再生」に近い作業なわけです。

ヨゴレがあっても、安くシミ抜きできるものは「使える商品」

洗い張りして湯のしまでした生地は「新品に近い生地になる」

シミヨゴレがわからないように染めなおしたものは「新しく着物を作れる」

シミヨゴレが生地の入れ替えで隠れるなら仕立てなおせば「着ることができる着物」

というわけです(もちろんそう考えない呉服屋さんもいますが、簡単に素人にわかりやすくいうとこういった概念になるという考え方です)。

かたや、素人の方の場合は小さいシミが目立たないだろうが、隠れる場所だろうが、使用する際に隠れる範囲であっても「粗悪品」扱いするわけです。

まずこの考え方のズレがトラブルを起こします。

呉服屋側は「そのぐらい常識」なわけで、それがわからない=新品の高い反物を買え!なわけです、乱暴に言うとですね。

かたや、素人や手芸はするけど着物の生地のことを理解していない人は、ヨゴレがある=粗悪品つかまされた!なわけです。

そりゃトラブルになりますよね。

さてさて、そうなってくると「売ってるほうが悪い」のか「知識がないほうが悪い」のかという話にまで行きそうなんで大変なんですね。

そこで、今回のお仕事で感じた呉服屋の考え方をまとめていきます。

基本的な概念に「着物の生地は高いんだぞ!」というものがあると考えながら見てください(笑)

呉服屋の生地に対する考え方

・少々ヨゴレがあっても、もとが高いし、ほとんどが仕入れ値下回って売ってるので、文句言わないでほしい。(今の世の中なんで、仕方がないでしょうが、ネットは不特定多数に売る商売ですので我慢しなさい)。

・着物関連のお仕事してるので基本的に10000円ぐらいまでの値段は「安い」んです。(年収が下がり続ける世の中ですから、10000円は大事な人が多いです)。

・商売なので、お値下げとか言われてもコメント対応してる時点でその返信分の作業時間もコストと考える、となると対応した上に値段下げるなんて意味がわからない。(そう思うならそういった人には売らないようにすればよいだけでしょう)

とまあ、このあたりですかね、ほかにもあるんですが、この辺でやめとかないと長くなりますので。

続いて買う側の心理です(こちらは知識があまり無いし、あんまり考えて行動しない人の場合と考えてください)

・1反10000円とか高すぎる!でも着物生地を手芸に使うと売れるから安く仕入れたい!または安く仕立てたいから値段さげてください!(ただし、だいたいはそこらへんの手芸屋さんの安い生地を中心にした生地の値段の考え方で1反の着物の値段を考えてる人が多い、また着物を安く仕立てたいなら、自分の予算にあった生地を買いなさい。わざわざ予算より高い反物を値下げさせて買おうなんて・・・)

・お値下げ交渉して買う気見せれば商売なんだから安くするはず!私は値下げを視野に入れて値段釣りあげて出品してるから。(※商売において値下げをするのは基本客引きのためです。売るためではありません。あとはいらないものをとにかく売りさばきたい時でしょうか。なお自分がそうだから相手もと思うこと自体ズレてる気が・・・)

・1反1980円送料込みだけどヨゴレなどが気になるから写真で詳しく撮ってほしい!(1反送料込みで正絹の反物が1980円でも、実際は狂った値段です。不景気でそんな世の中になってしまっただけです。それに写真まで取り直せとはあまりに考えなしですね。写真の取り直しと対応で1~2時間は時間かかる場合もあります)。

といったところでしょうか?

まあ、どちらも問題はあるんですけどね。

こういった感覚のズレで呉服屋さんがブーブー言うので、世間の考え方とネット系販売の今の現状の説明などで疲れました^^;


・・・・まあなんだかなぁということですね。


そこでいろいろ考えてたんですが、私は呉服屋さんに指導するにあたり、自分ができない、したくないことは説明文に書かせました。

たとえば、

・値下げはしません

・写真の取り直しはしません

・神経質な方のご購入はお断りしています。

・~がご理解できない方はご購入をお控えください。

等のような内容をしっかり書きなさいと。

そして、そう書いていても読まずに値下げ交渉などを言ってくる物は地雷なので売るな、ブロックしろ!とですね。

少し乱暴ですが、商売において、仕事において、無駄を省くことが大事なんですね。

ですからそう指導しました。

つづいて買う側は、まず着物の反物が新品だとネットでもどのくらいの値段か調べましょう。

今はネット社会なので調べれば簡単にわかるはずです。

※ただし、詳しく調べてもわからないものはコメントで聞いてみましょう。

調べたら、着物が今のご時世でもどのくらいするのかの参考にはなります。

※これまた、ただしになりますが、呉服屋っぽくても実は買取屋がネット販売しているサイトは意味不明に安かったりします(安く買いたたいてますから)。とはいえ、そういった場合はそっちから反物を買ってください。わざわざコメントで値下げを言ってまで買う必要なないと思います)。

そしてコメントなどはそれだけ相手に「手間」をかけてると認識してください。そもそも値下げ交渉という考え方は面白いものですが、必要はないのです。まるで「お客様は神様」という暴走した考え方の一つに見えます。

コメントで手間かけて値下げさせて買う、ひどい人になるとそれで気に入らなかったら評価でいやがらせする・・・もう狂ってますよね?

予算が足りないなら買わない!

ちょっと面白いのは、値下げは当たり前!私はそれを視野に入れて値段上げてます!という人をちょくちょく見かけます。

それは良いのですよ、自分は手間というマイナスを取ってまで物を売る!と決めてるわけですから。

ただそれを「当たり前」とブログ等で書くことです。

いまからメルカリなどを考えている人がいたら「そうなんだ!」と思う人が多くなるでしょう笑・・・と。

まあ、雑誌も「メルカリは値下げできる!」みたいなことを煽りますからね~。

そうじゃないひともいるのですよ~ということなんですけど。

そういった部分を理解してうまく売りたい人は売って、買いたい人は買ってほしいですね。



着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。