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着物知識その7 「着物を買う知識(USED着物編)」

今回は前回の 着物知識その6 「着物を売る知識(USED着物編)」 の真逆と言える「買う」ための知識を書いていきます。

といっても、ある程度は共通する部分もありますので、着物知識その6も読んでからこちらもお読みいただくといいかもれません。

基本の「小紋は~留袖は~」というものは、ネット上で検索すれば転がってくるし、そういった堅い内容はまたこれとは別で書いていく予定ですので、今回は何に注意するべきか~みたいな内容です。

■ 寸法

ご自分に合った寸法をよく知らない方が多いです。

しかも呉服屋や中古屋によっては「これぐらいあれば着られますよ」とギリギリいっぱいの物を進められて、いざ着付教室に行ってみると先生に「これはいくらなんでもギリギリすぎます」と言われるケースも。

そういうことで、買う際の最低限の要件を書いておきます。

寸法の測り方などについては、以前に書いていますのでそちらで確認してください。

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1 身丈(肩から)

 着物を買う際の身丈(着丈)は自分の身長よりも+3~5cmがベストです。それだけあれば、おはしょりもゆったり作れます。また、失礼ながら太ってる方は身長より更に+5~8cm欲しいところです。

 身丈は必ず肩から測ってあるものを購入してください。稀に首から寸法を取っているお店もありますが、首からだと衿を抜きますので、寸法が3~5cm変わります。

 なお、どうしても短めを買う場合は-3cmが限度と思ってください。-5cmまでは大丈夫という方もいますが、本当に余裕が無くなります。本当に-3cmがギリギリ限界と考えてください(短い場合は昔のように腰骨で腰ひもをしめておはしょりを作ります。本当はそっちのほうがお腹が苦しくならないのでお食事会とかには楽でいいのですが)。

※なお、USED着物の大半が身長145~158cmにぴったりの大きさです。162cm以上になってくるとなかなか見つからず、168cm以上になると滅多にUSEDでは買えないと思ってください。

2 袖丈は年齢や身長で考える。

 袖丈はだいたい平均は49cm程度だと思います。

 稀に長いものもありますが、着丈が160cmぐらいまでで袖丈が52~55cmのものは若い方向けのものです。

 あとは着丈160cmで袖丈が44cmとかになるとご年配の方か、アクティブに見えるようになるかの違いです。

 その場合は着物のがらや色で年齢がわかりますので、ご年配向きか単に袖丈を短く仕立てたかがわかります。

 また身長が170cmで袖丈が49cmだと、短く見えて、バランスがおかしくなります。

 これという基準はありませんが、まずは身長から袖丈は考えてください。

 なお、着物によっても短くてもおかしくないものもありますが、考え方としては

 a 身長が145cm以下で30歳を超えてる方は袖丈は47~48cmぐらいが良い

 b 身長が155~160cm前後ぐらいの方で30歳を超えている方は49cm程度の袖丈を目安にする。

 c 身長が165~175cmぐらいの人で年齢を30歳超えている方は袖丈は51~52cmは欲しい。

 d 25歳ぐらいまでで独身なら振袖でも大丈夫なので、長さは長めのものでも大丈夫。逆に短いほうが若々しさが失われるので、注意。

 e ご年配で現代なら70歳以上になってくると49cmより少し短めのほうが落ち着いて見える。

 f 紬のような普段着の着物は袖丈が短ければ粋に見えるので、少々短い分には気にしなくていいが、若い方で紬を着る場合はあまり短いと若々しくないので注意。

あんまり細かいことを考えたくない無い人は、袖丈48~49cmを買っておけばいいと考えてください。


3 裄の長さ

裄が短いと普段着っぽさが強くなります。

現代だと手首付近まで長さがあるほうが主流です。

ただ、紬などや、小紋を普段着風(友達などとちょっと散策する程度)に使う場合は少々短くても問題ありませんし、小料理屋などで料理を着物でされる方は問題ありません。

これに関しては、まず自分の裄を調べることが必要です。

ただし、USED着物を買う場合は、昔のものが多いので、身丈は大丈夫でも裄が短いということが多々あります。

そういう場合は呉服屋などで頼めば、裄を伸ばしてくれますが、だいたい安い所で3000円前後、高いところでは8000円ほどかかるので注意してください。

また、USED着物を買う場合、店舗での場合はたいがい試着すると思いますが、洋服の上からだと、裄がわかりずらいです。

また腕をピンと水平にして裄を見ようとしますが、試着して裄を見る場合は、腕を肩より少し下げて、いわばペンギンみたいな腕の広げ方をしてください。ピンと水平だと、着物の裄は短く感じます。さらに、長襦袢を着てないと、衿を抜いていないケースが多いので、それでもまた裄の長さが変わります。

※時代によっては裄を短めに仕立てるのが流行った時代もあります。また昭和後期ぐらいまでは反物の巾が36cm程度しかありませんので、裄を仕立てなおしても66~67cmしか出ない場合も多いです。こればっかりは安く着物を買えるのだから仕方がないと考えてください。

※余談ですが、太ってると裄も自分の採寸のものより少し長めに必要です。バストが大きめの方は矯正下着を着用しないと同じく裄が少し長めに必要になるケースもあります。


4 前巾後巾(要は横幅)

前巾と後巾でだいたいの横幅、つまり胴まわりを見ることができます。

基本的に着物には 衽+前巾+後巾 が左右にあるので、衽×2+前巾×2+後巾×2が広げた時の横幅の寸法となり、そのうち、衽と前巾は着ると重なるので、胴回りの寸法(正確にはヒップサイズで考えてください)の計算基準は 衽+前巾+(後巾×2) となります。

つまり 衽15cm、前巾25cm、後巾30cmの場合、

15+25+(30×2)=100cmとなります。

ただ、少し体に巻き付けて着ないと、腰ひもで抑えててもズレやすいので、上記の合計から-5cm程度引いたぐらいがちょうどいいサイズと考えてください。

つまりは、95cm~100cmまでのヒップサイズの方は着られる着物であるとわかるわけです。

ただし、失礼ですが、太っててお腹がヒップよりも大きい人は、一番大きい場所で考えなくてはなりません。

■ 汚れ

着物の汚れ方によっては着られないものもありますが、逆にこの程度なら着られるというのもあります。

1 衿

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↑こういった汚れはもうシミ抜きとかでは取れないので、似た色で染めてわからなくしてもらうしかない。そのかわり、シミ抜きよりお値段が高くなる。 

汗による変色よごれや、カビの酸化によるヨゴレは、シミ抜きにだしても取れません。呉服屋ではこのぐらいは大丈夫というところもありますが、実際目立ちます。USED着物で練習用以外では衿のシミヨゴレのある着物は避けるべきです。

2 袖よごれ

 結構多い袖ヨゴレ、そして現物を見て買っても見落としやすいし、ネットで買っても売り手が見落としてることが多い場所の一つ。小さいヨゴレは肩や胸に近くない、袖の下のほうならあまり目立たないが、袖先は意外と目立つ。ネットで購入する時は仕方がないが、現物を見て買う時は、ちゃんとチェックしてください。

3 胸付近

 意外と多いのが口紅の汚れと醤油などの汚れ。こちらはあまり見落とさないので大丈夫とは思うが、念のため気を付けてほしい。

4 胴部分

 帯の色がうつったり、擦れて色が薄くなっているものがある。色うつり程度は帯をして隠れそうな範囲なら着られるが、擦れて色が薄くなってる場合は生地がもろくなっている恐れがあるので要注意。

5 裾まわり

 食べこぼしのシミや泥よごれなどがある。また、友禅の染めにカビが生えるケースも多いので、注意してチェックしてください。

7 畳んで放置したために折り目がヤケている。

 畳んで長期置いておくと、表に面している生地がヤケてうっすらと黄変していたり、肩山あたりなどの折り目がヤケて変色するケースが多い。意外と見落とす。

8 袘(ふき)

 着物の裾の末端あたり。ここが擦れて破れていたり、汚れていたり、あとは出したクリーニング屋が悪くて、その部分がペチャンコになってしまっているものも。ある程度ふっくらしているのが着物の良さなので、ペチャンコになってるものはできるだけ避けたほうがいい。

■ 胴裏類

胴裏は変色してても着られないことはないが、袖裏はちゃんと見てみよう。表から見える範囲があきらかに変色しているなら、見える可能性があるので避けたほうがいい。また、広衿の場合、衿をとめる金属ボタンが腐食していることが多々ある。腐食してると、着物の表地にも腐食が進行する場合があるので、もし腐食したものがあったらすぐ新しいボタンに取り換えたほうが良い。

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↑ボタンの腐食があると写真のように生地にも腐食が移る。またこれが表地に出てしまったら、シミ抜きに出しても取れないときもある。

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↑胴裏の汚れ。これよりもっとひどいものもある。できるだけ着用としては買わないほうがいい。

なお単衣は胴裏などが無いが、できれば絹の着物や夏用の着物は生地も弱く、ヒップラインが出やすいので、補強の意味もこめて居敷当てがあるものを買うほうが良い(ウールの着物は基本そこまで考えなくてもいい)。

■ 値段

値段に関してはに値段に関することを書いていますので、それを参考にしてください。


とまだ細かく言えばきりがありませんが、ここに書かれていることを覚えておくと、着物を買う際のトラブルもグッと減ります。

今はメルカリなどで買うケースも多いですから、せめて寸法の部分は覚えておきましょう。


着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。