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着物知識12 「着物の種類 紬編(ちょっとした裏話あり)」

第12回はやっと着物の種類のお話をします。

だいたいの方はご存じでしょうが、一応基礎知識ということで書いておきますが、そのかわりちょっとした裏話も混ぜておきます。

紬(つむぎ)とは

糸を先染めして、織りによって模様を表現している着物です。

代表的な紬としては大島紬、牛首紬、結城紬などがあります。

・大島紬

超有名で一時期は絶大な人気を誇った紬です。本当の本場物は鹿児島(ちなみに鹿児島のものと鹿児島の奄美のものでは、商標のマークなどが違います)の商標などがついています。また、龍郷町で作られたものはがらも豪華です。あともう一つは産地が東村山の村山大島紬というものがあります。こちらも有名です。がらは龍郷のがらをもう少し小柄にしたようなものが多いです。なお、手触りが違いますので、鹿児島のものか村山のものかは慣れてる人なら手触りでだいたいわかります。

※村山は、鹿児島以外の産地のものと手触りが類似する時がありますので、反物なら商標でだいたいわかります。しかし、仕立ててあるものになると、手触りでは判別が難しいので、村山のものかどうかは模様で判別できます。

ちなみに、他の産地も大島紬の織り方で大島を作っています。中には本場大島と書いてあるけど、実際は別の産地のものだったり、あとは韓国産などもあります。

※この場合の本場とはたとえば本場西陣の大島紬みたいな解釈になります。仮に十日町で作られたら本場十日町が作った大島という意味です。なぜそんなわけのわからないことをするかというと、呉服屋がお客に売りやすいようにです。お客から見たら本場って書いてあるとなんとなく良さそうな品に見えますよね?ただそれだけです。でも詐欺でもないし偽物でもないんですよ。そりゃ鹿児島大島と書いて北海道で作ったとかなら産地偽造になりますが、本場としか書いてありませんから、嘘言ってないんですよね。まあ、そんな時代もあったということだけ把握しておいてください。


・結城紬

こちらも超有名で人間国宝の方が織ったものなどは80~160万ぐらいで売られています。ですが、人間国宝の取り分を反物の製作時間に割り当てて時給に換算すると800円~900円程度のことが多い。

 結局、問屋や呉服屋のマージンが高いんです。そりゃ作り手が減りますよね。

 と当時販売してた亡者どもにいろいろ言いたいことはありますが、とりあえずさておいて・・・。

 もともとは農作業用の野良着です。

 なので本結城は結構ガサッとした手触りです。

 ですがこれが使い続けると良い感じになります。

 ちなみに、現在では糸が良くなったので柔らかいものが多いです。

 茨城県の結城市近辺で作られています。

 ですが、これにも他の産地の品物があります。

 もう当時の着物業界は、結城が売れるぞ!ってなったら量産できる所でガンガン量産してるんですよね。

 しかも反物に産地は別のところなのに「本場結城紬」とか書いて売ってるものもありました。

 なので、結城にもいろいろあります。

 もちろん人間国宝が織ったものは高いですし、製造過程でも値段が変わります。

 手触りですが、近年のものは別として、当時の本結城は本当に「麻か!」ってぐらいガサっとした手触りが多かったです。

 まあ、もともとは野良着ですから仕方がありません。

 でも風合いが良いんですよ。

 量産品はともかく、本結城は着物が好きなら1着は持っておきたい!と思う人が多いです。

・牛首紬

 別名「釘抜紬」大島に似てる手触りですが、その密度がハンパない。

 ギュッと打ち込んである感じがするのが特徴です。

 なお、釘抜とありますが、これは打ち付けてある釘に着物が引っかかっても、逆に釘のほうが抜けてしまう!ぐらい強い生地であるということからそういう別名があります。

※実際は破けます(^^;)まあ、それぐらいしっかり織ってあるという意味だと考えてください。

 なお、この牛首は紬ながら後染めです。

 たまにこういう例外的な紬はありますので、あくまで先染めが紬!というのは「基本的に」と解釈してください。

 石川県白山市あたりで作られています。

 これも紬が好きなら1着は欲しい紬です。


※三大紬と呼ばれるものがあり、それが大島、結城、牛首です。ですが、このうち牛首は人によって入れ替わります。牛首より十日町だろ!とか米沢じゃ?とかですね(--;)ここらへんはブレたりしますが、大島、結城は外れることはありません。

・黄八丈

八丈島で作られた紬。格子がらのものが特に有名です。

黄色の格子がらとかは、時代劇の町娘みたいな感じで可愛いです。

これも様々な産地があります。

本黄八丈といえば八丈島です。でもなかなか高く、USEDでは別産地のものは手に入りやすいですが、本黄八丈はなかなか出てきません。

なお、黄八丈とありますが、赤や黒、茶色もあります。


・十日町紬

多種多様の紬を生産しています。かなり数多く紬を生産していて、大島風や結城風など、それはもう様々です。仕立ててある状態では判別しづらいですが、基本的に少し生地が薄めです。しかし、こればっかりは長年の経験がないと言えません。まあ、USED着物に限って言えば、買い取る紬のうち、大島、結城を除いて、残りの4割は十日町紬かな?という感じです。

なお、当時で言うと30万円以下で購入した紬に多い感じがします。


・米沢紬

こちらも多種多様の紬を生産しています。感覚的には十日町に並ぶんじゃ?というぐらい多いです。特徴としては十日町紬より地厚です。

また、米琉こと、米沢琉球絣(米沢で作られた琉球絣)が特に有名ですね。

琉球絣の模様で、地厚な紬の場合はけっこう米琉なことが多いです。


・塩沢紬

古い歴史を持つ、塩沢紬。こちらも産地がいろいろあります。

でももともとは「越後上布」を作ってたんですね。それがある時期に絹織物(越後上布は麻だった)で作るようになりました。

それが塩沢紬です。

基本的には紬の中でもふんわりした手触りですが、本塩沢と言われるものになると独特のシボがあります。


今、USEDで特に見かけるのはこのあたりまでです。

他にレアなものがありますが、もう製造してなかったりします。

各紬の話は、深く掘り下げると深すぎるので基礎ではこのぐらい覚えとくといいよ~程度の内容だけ説明しています。

なお、他の紬としては

※ここから先はもっと詳しくなりたい人は覚えておくといいかも程度の内容です。

・ぜんまい紬(有名なのは天鷺ぜんまい織り)

 ぜんまいの綿を使用した紬です。とくにぜんまいを使う意味はありませんが、当時は様々な人が色々な工夫をして新しいブランド的なものを作ろうとしたので、そのうちの一つだと考えてください。

 数が少ないのでレアです。ただし、ぜんまい英ネル(ウールとぜんまい綿の併用)は価値が無いです。

・ひげ紬

 生地からピコピコ糸が出ている紬地です。なんちゃってひげ紬も多くありますが、風合いが良く、好まれる方が多いです。

・小地谷紬

麻織物の小地谷縮のほうが有名。縮についてもそのうち書くので、そちらで詳しく説明します。

・琉球紬

沖縄の紬、久米島紬が有名ですが、USEDでは意外と出てきませんので、名前を記憶しておくぐらいでいいと思います。

※でも、久米島紬は文化財指定品なので、詳しく調べておぼえておいて損はありません。


その他、飛騨や郡上など上げればキリがありません。

なので最低でも大島、結城、十日町、塩沢、米沢、牛首は覚えておいたほうがいいですね。

USED着物の場合、紬は上記の6つぐらいがよく見かけます。

ただし、大島だから高いというわけでもなく、本当の本場のものではないものがたくさんあります。

(これは、要は技術があれば織れるわけで、極端に言うと、技術が集中している西陣などはほぼ全国の着物生地を真似して織ることができます)。

これらを見分けるには、経験値が必要です。

ですが、今から経験値を得ようとしても、かなり無理があるでしょう。

※現に、メルカリで着物を大量に売ってる人の商品説明を見ていると、間違がってる人や理解できてない人(というかおそらくわかってないか勘違いしているだけ)を多々見かけます。

なので、今から覚えようとする人はかなり難儀すると思いますので、まずは代表的な紬の産地や織りなどを覚えてください。


補足

紬の着物は死んでもカジュアルまでです。

紬の訪問着とかもありますが、それでもせいぜいカジュアル寄りのセミフォーマルまでの使い方しかできません。

100万円の紬だろうが、100億円の紬だろうがカジュアルです。

例えると「ジーパン」です。

レアな100万円のジーパンでも、高級ホテルの会食とか、結婚式には出ないでしょう?それと同じだと考えてください。




着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。