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着物知識その8 「買取業者の本音」

 着物の買取をお願いするケースというのは増えていると思います。

 ですが、買取をたのんで、その店に後日行ったら100円で買われた着物が5000円で売られていた!買取を大手に頼んだら、宝石ばかり言われた!などが多いと思います。

 そんな中、どこで売ればいいのか?などがあると思いますので、そういった問題を解消する目的で今回は「買取業者の本音」を書いていきたいと思います。

 また、匿名ですが、今回、買取業者の本音を書くにあたり、協力していただいた方々に感謝申し上げます。


1 大手の店頭買取

 まずは大手で店頭買取をしているお店についてです。洋服や貴金属などを買取しているところは、基本的には、現在は着物を積極的に買取していないところが多いです。稀に良い着物があったとしても、店舗に着物の専門家がいることは稀なので、品物に関係なく一山1000円とか3000円程度が一般的です。なぜそうなるかというと、基本的に着物は誰かがお客様にお勧めして売らないと、なかなか売れません。着合わせなどの問題が一つの要因と言えます。また、買うお客も掘り出し物はないかなぁ程度でしか見ませんので5000円以上のお値段を買う人が圧倒的に少ないです。なので、大手にもよりますがある程度集まったら別の業者に流したりしている場合もありますので、その手間賃などを考えたら安くしか買いません。それに買取の査定は売れる値段の10分の1と20年前は言っていましたが、今は1000分の1だったりが普通です。

2 地元で店頭&出張買取(洋服なども扱うお店)

 地元で買取している小さいお店で、洋服なども扱うところで着物も扱っているお店は、ある程度の知識があるか、もしくはもと呉服屋なので、着物のもとの値段はしっかりと理解している方が多いです。しかし、そういったなんでも混合しているお店は、まず着物を置いている単価が安く、また、いいものは奥にしまいこんでいるというパターンが多いです。なお、小さいお店は、地元なのでそこそこのお値段で買うところが多いですが、小さいお店の分、今度は買い取ったうちの1枚~2枚で全体の買取金額を取り戻さなくてはいけませんので、どうしても安くでしか買取できません。

※着物30枚持ち込んで5000円が買取とするなら、その中の一枚でもとを取れなければ、経営的に厳しいというのが本音です。

3 大手の出張買取

 着物専門などの触れ込みも見かけるが、大概は宝石か、それか着物が400枚など、確実にお金になる買取じゃないと来ないところが多い。また地元で買取店舗を準備している風にネットには書いてあるが、実は地元に支店は無く、大手の半分ぐらいは地元に出張所を構えてる程度で、大概は地元外から買取に来る。

 様々なパターンがあるので、個別に説明します。

・パターン1 地元には出張所のみで県外から買取担当が来る場合。

 まず、少ない枚数では買取に来ないし、宝石も要求されます。というのも、ほとんどのこの手の買取は着物がメインではありません。宝石かそれに類似する価値のものが目的です。

(なぜ着物買取を全面に押すかというと、着物を大量に持っている人は、お金持ちの場合が多く、宝石などを沢山持っている場合が多いからです)

 また、買取査定は査定に来られた方の出張費などを引いた額で計算します。なお、査定の1例を上げると、「 宝石5個+着物100枚 」で50万での買取だった場合、金額の内訳は「 宝石5個45万 着物100枚5万 」という査定金額が本音になります。このパターンだと普通の人のほとんどが着物のほうが45万ぐらいと思ってしまいます(もちろん宝石と着物の価値バランスにもよりますが、大概は買取値段の75%は宝石のほうだと考えてもらってもいいです)。

 ここまで書くと「これはひどい」と思う人がいるかもしれませんが、冷静に考えれば、出張して買取する人の人件費、出張滞在費、買取商品を送る送料、最初の電話などを受け付けるオペレーターなどを抱えている会社ならその人件費を考えます。

 ということで、そのぐらいの査定の仕方じゃないと「儲け」にならないというのが現状です。

 また、この手の買取の場合は買取担当者が買い取った商品が後から売れた額の半分が給料に上乗せされるような会社も結構ありますので、なおさら安く、そして会社側に利益の上がる買い方しかしません。

 ですが、リサイクル買取といえども結局「商売」ですから、これらは詐欺ではないのです。

 ・パターン2 大手で地元にも買取担当者を置いてる場合。

 最近、このパターンも見かけますが、このパターンのほうが少しは値段が高くなる場合があります。ですが、この記事を書くちょっと前に聞いたのは、最近はアルバイトが買取にきて、買取予定の着物を撮影し、本社に送って値段を本社が連絡するというパターンの買取。

 理屈は合理的で良いのですが、写真で、しかも知識のないアルバイトが撮影したものは、シミなども結構見落としてるため、最低額査定でしか買取しません。

 それでも、県外から査定に来ているわけではないので、結果的に他のものより高めの買取になるかと思います。

 ・パターン3 少ない着物の枚数でも来てくれるが、宝石類を出さないと帰らない。

 これは相談がすごく多いです。

 ヤ〇ザ風の人がやってきて、着物を査定せずに宝石などをねだってくるタイプ。もうここまでいけば犯罪一歩手前です。すぐ警察に電話しましょう。

 この手は負けて宝石を出したら、着物を見もせず、宝石だけ安く買って帰るケースが圧倒的です。もう論外ですが、結構、この手の被害が多くて着物買取の相談を受けます。

 ほとんどが上記のパターンに該当すると思います。1と2の内容は商売と考えるといたしかたない部分もありますが、3のパターンに出くわした場合は、さっさと警察を呼んでください。ご自宅に入って、家の人間が帰ってくれと言っても帰らない場合はすでに犯罪です。


つづいて、すこし番外編というか、稀にある悪質なケースも紹介します。

■買取業者が解体業者や不動産屋などと結託している。

 着物は安くなったといっても、まだまだ市場はありますので、ちゃんとしたもので、寸法も大きいものは十分、買取対象です。

 しかしながら、今回、紹介するケースは、正直悪質なパターンです。

 このパターンで一番多いのは、お年寄りだが当時はかなり良い着物を買っているという人に多いです。

 そういった方は大きいタンスを3個とか持ってらっしゃいます。

 それが高齢になり、邪魔になるとなんとかならないかと解体業者や産廃業者に相談します。

 すると、それらの業者がやってきて、中の着物はどうしますか?と聞いてきます。

 その時に「いや、どうしていいかもわからないので、なにかいい方法はありますか」なんて答えたら、「私たちの知り合いにそういった業者がいますので」と言って、後日、その知り合いの業者が来ます。

 ですが、この時、ほとんどはスズメの涙程度の買取額、ひどい所は無料引き取りといって加賀友禅の作家物などをごっそり持っていきます。

 信じられませんが、こういうことが頻繁に起っています。

 なぜこうなるかというと、お金はすでにその解体業者や産廃業者なりに買取業者が手数料という形で支払う、もしくは1枚何円で計算して紹介者(解体業者)に支払うという形になっているからです。

 なので、もとの持ち主にお金なんて払う気は毛頭ありません。

 これはすごく悪質なケースです。

 相談を受けた方などは、今でも高額な芭蕉布を含めた着物を100枚ほど無料で引き取られ、挙句にタンス処分代まで請求されたという相談です。

 これは本人は後から他の方に言われて着物も売れると分かったらしく、相談を受けました。

 しかも、タンス解体した業者が紹介した業者は、その方にはお礼もなにもなくもくもくと着物を持っていき、最後に助かりました~で終わったそうです。

 こういうことが実は頻繁に起ってますので、気を付けてください。

※ですが、これも結果的に詐欺ではないのです。というのも、着物を持って行った業者は、紹介してくれた解体業者なりにすでにお金を支払っているので、どちらかというと、悪質なのはちゃんとした説明もしない、この間に入っている解体業者ということになります。


■地元業者で生粋の呉服屋の場合

 この場合はさすがに変なことをする業者は少ないです。

 一番安全な方ですが、地方だと着物ってそんなに高額では売れません。なので、結局、その店が売れる現実的な値段から逆算して買い取るしかありません。良心的な所で、売れる値段から4分の1、普通の考え方のところで10分の1です。

 あくまで売れる値段ですから、そこまで高額にはなりません。

 また、販売網が小さいので、羽織などのほとんど売れない商品については、基本的に一山いくら程度の買取にしかなりません。

 なお、色やデザイン、サイズで大きく値段が変わります。どんなに新品で、作家物であってもあきらかにすぐに売れないものになるとグッと値段が下がることを覚えておいてください。

■今回のまとめ

・着物は高く売れるという触れ込みが多いが、よほどの数を持っているか、もしくは相応の宝石などを持っているかで変わる。

・県外から出張買取はその出張代からなにから考えなくてはいけないので、そこまで高額で買い取ることができない場合が多い。

・地元であっても、その呉服屋なり中古屋なりが売れる値段からの逆算でしかないので、昭和から平成の10年までに買った値段から考えてもかなり安くでしか買い取ることができない。

・査定にこれという基準はなく、また基準を設けることは難しい。

・買取価格は今売れる値段から10分の1ぐらいでも良心的な買取査定額なほうであり、4分の1になるとかなり良心的なほうである。


ということです。

買取業者はあくまで「儲け」ありきであるということを忘れないでください。新品を仕入れて売るよりも、中古品を扱ったほうが「粗利」が出てるからこそ、続けられる商売です。

また、よく勘違いされている方が多いですが、基本、物に対してお金を出して「買う」側がお客様です。

物を売ってやってるんだからという方が時々いますが、買取業者としては、別に買わないなら買わなくてもいいのです。

※そして、出張で買取に出てきた場合は、しっかり儲かる買い方をしないと、会社から怒られるわけです。

物を売る側は「いらないから、処分に困ったから、お金が少しでもほしいから」売るわけです。そんな自分の都合の良い考え方で買取業者を呼ぶのですから、しっかりと考えて売る必要があります。

また、買取査定が自分で納得できない場合は売るのをあきらめることも必要です。





着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。