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着物知識その4 「着物は洗えるのかの本音」

第4回目です。

今日の題材は「着物は洗えるのか」です。

ただ単に材質で~とかだけではなく、絹の洗い方などをネットで公開している方とかいますが、実際の基本的な本音などを書いていきます。

まず、前提として絹は水に濡らして干すと「縮み」ます。

また、化繊(ポリエステルなどの人工素材とか化学繊維とかにあたる)の着物にも実は洗えないものもあります。

とまあ、いろいろありますが、とりあえず素材別に書いていくことにします。

1 絹

洗えないのではなく、洗うのが難しいというだけですが、絹についた汚れは基本的にはなかなか落ちません。程度や質にもよりますが、特に着ていて変色した衿は洗っても無駄です。汗による変色、長年の黄変などはまず洗っても意味がありません。白物であっても通常の漂白ではまず落ちません。

で、どうしても洗いたい!という方は以下をご覧ください。

・正絹着物の状態の場合

洗濯機でまわさず、きれいに畳んで桶かなにかに水をためて押し洗い。この時、インターネットなどではリンスを入れて~とかありますが、基本水だけで洗ってください。なお、物にもよりますが、胴裏に色物(赤とか紺)を使ってる場合などはそこから色落ちして着物に移りますので注意してください。(なのでできるだけ自分で洗わないほうがいいです)。

そして、軽く手押しで絞ったら水がヒタヒタ垂れるぐらいでしっかり広げて干してください。また干す時にできるだけシワを伸ばして干してください。(脱水かけたり、ねじって絞らないこと。絹のそういったシワはアイロンがけぐらいじゃ取れません)。

※縮緬はめちゃくちゃ縮みます。一越とかのような小さい縮緬はまだマシですが、鬼シボ等のシボが大きいものになると、どうしようもないぐらい縮みますので、洗わないでください(絞りもかなり縮みます)。

なお、これだけ注意してもシワは出ると思います。だいたいはアイロンの蒸気でなんとかなりますが、基本、シワはとれないと認識してください。

また、着物は仕立ての下準備の時に着物用の洗濯ノリを使用して、ハリを出します。なので、家庭で洗うとそのノリが無くなってしまうので、着物がクタクタになってしまいます。

・正絹生地の状態の場合

着物を解いたり、反物などの状態の場合も着物の時とほぼ同等です。上記にあるとおり、縮緬などはすごく縮みます。そのあとアイロンで伸ばそうとしても簡単には伸びないでしょう。

ただし、家庭で解き生地などを洗う場合はおそらくリメイク素材用して使用すると思います。なので最初に洗っておくと、生地が縮んだ状態になりますので、次からは洗濯機で洗ってもほどほどしかシワになりません(それでも脱水にかけると皺だらけになると思います)。

洗濯機で洗う場合は、ソフト洗い用のネット入れて洗ったら、手押しで絞って着物みたいにできるだけシワにならないように干すしかありません。


2 その他の生地(こちらは軽く説明していますが、基本的な洗い方や干し方は絹と同じような扱いです)


・ポリエステル

基本洗えます。洗える着物のほとんどはポリエステル製です。ですが、洗ったからといってもやっぱり強くついた汚れなどはなかなか落ちません(というのも、地紋の着物などは繊維の隙間に汚れが入りやすいので洋服ほどヨゴレが落ちません)。ただ、シワになりにくいし結構アイロンでシワが取れます。あまり高温になるアイロンだと溶けてしまうのでほどほどに。

・アセテート

洗えないこともないですが、少々縮みます。年代的には大正から昭和40年代ごろまでよく使われてました。基本的にこのアセテートが「人絹」と呼ばれてました(ただし、この頃はこういった合成繊維はアセテートが主だったのでアセテートがそう呼ばれていただけ。アセテート=人絹ではなく、あくまでポリエステルやキュプラなども結果的に「人絹」と呼ばれると思ってください)。

これも汚れはなかなか落ちません。

・キュプラ

コットンリンターという綿花の短い繊維の部分を使ったもので銅アンモニウムレーヨンという。ちなみに旭化成のベンベルグもこれにあたる。

こちらも洗うと縮むし、シワになります。また柔らかい分、絹より干しにくいです。ヨゴレも落ちにくいです。また摩擦に弱く、擦り洗いなどするとボロボロになり、また温度にも弱いためアイロンも気を付けないといけません。

(というかアイロンもかけにくい)

・綿(コットン)

主に浴衣に使われる。綿の着物などもある。

家庭で洗えるし、市販の洗濯ノリを使えばきれいに仕上がる。ですが縮みます。家で浴衣を洗うつもりなら浴衣は少し大きめのものを買いましょう。

※最近のものはそこまで縮みませんがその浴衣の生地の質しだいなので、やっぱり少し大きめがいいかもしれません(なお縮みや絞りはやっぱりかなり縮みますので注意)。

ただし、浴衣向けのものはやっぱりシワになりやすい。でもキーピングなどをうまく使うとだいたいシワが取れる。

なお古い浴衣などは洗うと色が落ちてくるので注意(更に言うと、古い浴衣などは、その時は大丈夫でもいざ着て歩くと汗でぬれた際にビリッと破けるときが多いです。

・麻

苧麻や亜麻を原料とした生地です。苧麻は単体で、亜麻は綿と組み合わせてよく使われます。

こちらも縮み系になると縮みますし、薄い麻のものはシワになりやすいです。

ゴワゴワとした麻の着物は洗えば洗うほど柔らかくなり着心地もよくなりますが、自宅で洗うとハリがなくなります。

・ウール

縮みにくいし色落ちしにくい。また、着物の場合は裏地を使わない単衣で仕立てるので、洗いやすいです。

ただ、シルクウールなどの交織のウールは注意が必要です。

洗うと絹の糸だけが縮んだりしてなんか着物の着心地が悪くなったりします。

ただ、洗うとやっぱりハリがなくなります。

・アクリル

たまに見かけるアクリル素材の着物。だいたいは他の繊維と交織が多く、単品で使用は少ない。

洗えるが、型崩れしやすい。


とこんな感じです。

■今回のまとめ

・着物はどんな素材であってもきれいに畳んで手押し洗い。そして干すときは水が滴るぐらいで干して、できるだけシワなどをその時に伸ばして干す。

・洗うとほとんどの着物はハリがなくなるし、ポリエステル以外の素材はほとんど縮みなどがある。また天然素材のものは色落ちがある。

・ほとんどの素材が洗っても汚れは取れない。ポリエステルであっても汚れの付き方しだいでは落ちない。

・自分でリメイク用で使う場合は一度洗って縮ませるのと色落ちがある程度なくなってくるまで下処理を行ってから素材として使うとシワも少ないし、ほどほど洗える。

・ポリエステル以外のものはアイロン程度じゃしっかりとシワが伸びない。


といったところです。

余談ですが、着物のシミ抜きとかは、単にシミを抜くというわけではなく、場合によってはその部分を一度脱色して染め直したり、わからないように上から色を塗りなおしたりする場合も多々あります。

洗ったからといってシミなどは取れません。カビの匂いとかは大丈夫ですが、基本的にリメイク目的以外で自分で洗うのはやめたほうがいいです。

ネット上ではこうやって~とか書いてありますが、もう何枚も洗ってみたからわかります。色物洗剤でも落ちませんし、知識がないと着物がクタクタになり、後悔することが多いでしょう。

ただ、どうしても洗いたい人は、まず安い着物でいいので何枚か買ってきてどういうふうになるか自分で確かめてください。

そうすると「ああ、こうなるのか、ならこうすればいいな」というのがわかりますし、どのヨゴレのレベルはあきらめて専門に出すしかないなとかわかります。

ネット上で簡単に「絹の着物も洗えます」とか書いて、素人がマネして大切な着物がダメになったなどの相談もけっこう受けますので、今回基礎知識として書いておきました。

着物の基礎知識を裏の話も含めて記事にしています。初歩の初歩から裏話まで。飾り内容無しの本音で書いています。よろしくお願いします。