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最新の3-5-2⑦ (全10回)

その主な理由は守備時のデメリットの方にありますが、そちらの整理をする前に念のため「こんなチームは3-5-2で戦っても相手の脅威にならない」という細かいところも伝えておきましょう。

先ほどの守備側の「場所を守ってパスが出てから(パスの行先が分かってから)人に寄せる」の原則で言うと、守備の優先順位が低いのはアイソレートされたWBになりますが、このWBからの中長距離のボールの配給の精度が低く、かといって縦に突破する力も持っていないとなると、相手からしたら「そこはフリーにしておいても後からで対処できる」「中だけ締めておけば大丈夫」な状態になってしまいます。

そしてこのような“持ってからの(パスを受けてからの)”プレーの質(パスやドリブルの質)だけでなく、このWBには攻守の切り替えの早さや攻撃時の守備リスクの管理、また守から攻への切り替えのためのバランスのいいポジショニング能力、及び攻撃時に相手(主にWM)がスクリーンできない、かといって相手に脅威を与えられないわけでもない、ギリギリの深いところを取るような視野の駆け引きを試みるポジショニングを、数センチ単位で繰り返す能力の高さも求められます。

つまりWBの能力がそれほど高くないチームならこの3-5-2フォーメーションとシステムはあまり効力を持たないということです。

これが、3-5-2がまだまだ少数派である理由の一つであり、言い換えれば優秀なWBがいないとゲームが成立しづらいというのが3-5-2のデメリットの一つとも言えますが、局所的なポジションの選手の優劣だけでなく全体を包括したデメリットを挙げれば、その大きなものに自分たちの守備時の相手フォーメーションとのミスマッチがあります。

先ほどの“戦術を構築する意義”に照らし合わせれば「自分たちは分かっている」「対処できる」があるべき姿ですが、実際には各々のフォーメーションに特化した不都合は存在し、その中でも3-5-2は特にそれが際立ちやすく、これが先ほど申した守備時のデメリットになります。

3-5-2が相手チームの守備に混乱を起こしやすいのはこれまで述べてきたとおり、そもそものフォーメーションが相手とマッチアップしていないのと、攻撃時の流動性が高いというのが主な理由になりますが、こういったフォーメーションとシステムを用いるということは攻から守に転じたときに誰がどこを守ればいいのか、誰を見ればいいのか、当然自分たちも分かりづらくなるという難点があります。

相手にミスマッチを強いようと試みるなら自分たちもそうなりやすいということです。

例えば4-4-2のチームが4-4-2ディフェンスの相手チームにボールを奪われたとき、まずはプレッシング、体が入れ替わってしまっているのならチェイシングが基本になるかと思いますが、そのPrimaryを軸にSecondaryたち(こちらを参照)がどのように守備の連動をすればいいのかの判断がさほど難しくありません。(図45)

※ここからはカラーでご閲覧ください。


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