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カンボジア医療、豪雨災害、新型コロナ。ひとりの看護師がジャパンハートのボランティア活動に参加して感じたこと

ジャパンハートは「医療の届かないところに医療を届ける」というミッションを掲げ、25年以上にわたり、ミャンマーやカンボジアなどのアジア、日本国内で医療活動を続けています。

看護師の梅津千枝さんは、ジャパンハートのカンボジアでの医療活動支援や九州の豪雨災害支援、沖縄の高齢者施設で起きた新型コロナウイルスによるクラスターの支援活動にボランティアとして精力的に参加しています。今回は、ボランティアに参加したきっかけや実際に参加して感じたことを梅津さんに詳しく聞きました。


執筆:峯あきら

看護師として「やり残したこと」だった

 ―カンボジアのボランティアに参加したきっかけについて教えてください。

私は当時、ある病院で看護師として6年ほど勤めていましたが、仕事がとてもハードだったこともあり、辞めようと思っていました。そのとき、看護師として最後に「何かやり残したこと」がないかと振り返ると、「海外ボランティアに参加したい」という気持ちが強く、ジャパンハートのカンボジアでの短期ボランティアに応募したんです。

―もともと海外ボランティアに参加したいと思っていたのですか?

 はい。以前、2001年の米国同時多発テロの後、「海外ボランティアの参加者が減った」という記事を読んだことがあり、私も人の役に立てないかなあ。海外ボランティアに行きたい。と思いました。

しかし当時の私は、看護師と別の職業をしていたこともあって、ボランティア対象の職業にどれも当てはまっていませんでした。そこで、看護師になれば海外ボランティアに行けると考えたんです。

 ―数ある海外ボランティアの募集の中からジャパンハートを選んだのはなぜでしょうか?

 私は英語が苦手でしたので、募集要項に「英語力が不問」と書いてあったことが一番の理由です。加えて、「経験不問」と医療者でなくても参加できると書いてあったことも決め手になりました。参加のハードルが低いのは、ありがたいですね。 

ボランティアを通じて得られた経験

―カンボジアでの7日間のボランティアに参加した感想を教えてください。

一番衝撃を受けたのが、カンボジアにいるジャパンハートの看護師が医療方法を自分で考えて医師に提案するなど、任されている範囲が広いということです。一般的に日本の看護師は、医師の指示がないと動けず、私自身も看護師はそういう存在だと思っていました。

 しかしカンボジアでは、例えば、医師が他の患者を診ていて不在であれば、看護師が外来診療で抜糸をしたり、来院時期の判断をしたりしていました。さらに、傷の手術で看護師が創部(手術でできた傷)を引っ張ったり、切ったりしていたほか、リハビリの提案もしており、日本との違いを感じました。

 カンボジアにいるジャパンハートの看護師は知識が豊富で、患者さんを支えるという意識が高く、「すごい!」と思いました。帰国後は看護師を辞めるのではなく、もっと幅広く勉強しなければいけないと思い、看護部門とリハビリ部門の関係性が近い病院に転職しました。

ボランティア参加者・現地スタッフと一緒に撮影


日本での医療活動支援にも参加した背景

―2020年7月の熊本県などで発生した豪雨災害支援活動に参加された理由は何でしょうか?

そのときは一旦、看護師を辞めていて、再び海外ボランティアに行こうと思っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大のため難しいという状況でした。

 そこで「何をしようかなあ」と考えていたところ、ジャパンハートの豪雨災害支援のボランティア募集を見つけて応募しました。避難所の看護師として働くことは初めてでしたので、最初は自分にできるか不安でした。

 ―豪雨災害支援活動で印象に残った出来事はありますか?

怪我が完治していないのに、無理して退院した被災者がいました。その方は、家を失ったという失意からか、誰ともコミュニケーションを取りたがりませんでした。

 本当は怪我が痛いはずなのに、その状態を看護師に伝えず、入院を勧めても聞く耳を持ちませんでした。あるとき、避難所でその方が痛みで苦しんでいるのを見て、説得して緊急入院させました。その後、無事に退院されて、その方から「あなたのお陰で命が救われた」と言われたときは嬉しかったですし、多くのものを失っても「生きたい」と思う力強さに私自身も励まされました。

 ―ジャパンハートのボランティアを通じて学んだことを教えてください。

一緒に働く仲間や患者、被災者を好きになり、その人たちのことを考えるのが最も大切だと気付かされました。

避難所のボランティアでは、被災者から「ここまで来てくれてありがとう」と感謝の言葉をもらうことが多かったのですが、その後、ジャパンハートの緊急救援セミナーで災害者心理を学んだところ、被災者の「ありがとう」という言葉は「助けて」という意味を含んでいるということでした。

 自分が被災者の心理を知らなかったことに気づかされ、次は、災害者心理を深く学んだうえで支援活動をしたいと思います。 

災害支援に参加した際に撮影


ボランティアを通じて感じたジャパンハートの魅力

―他にも高齢者施設のクラスター支援活動や2021年8月の豪雨災害支援活動にも参加しています。どのような思いでジャパンハートの活動に参加していますか?

私ひとりでは何もできないと思います。しかしジャパンハートには、自分のような普通の看護師ができる範囲で人の役に立てる仕組みがあります。ジャパンハートは有事のときに素早く動ける機動力があって、2021年8月の佐賀県の豪雨災害支援のときもボランティアを迅速に集めて派遣していました。

―今後のジャパンハートに期待することはありますか?

ジャパンハートの活動に参加したくても、病院の理解が得られず、参加できない医療関係者もいます。ジャパンハートの災害者支援スキームを病院に組み込めれば理想的ですね。 

また、病院の理解だけでなく、行きたい人が自ら手を上げることも必要だと考えています。ボランティアに行くことで、看護師としてのスキルアップにもつながります。そういう人たちを後押しするために、ジャパンハートの活動が自分のできる範囲で参加でき、得られる経験が多いことを伝えていきたいですね。

支援先の方と撮影

ジャパンハートはマンスリーサポーターを募集しています

世界にはまだまだ貧困に喘ぐ子どもたちがたくさんいます。現在私たちがアクセスできているのは、医療を届けたい患者数の5%にも及びません。今も同じ時間にこの地球で、病気や飢餓に苦しんでいる子どもがいるのです。

私たちの活動に共感し支援してくださる、さらなる仲間(マンスリーサポーター)を募集しています。1日100円からの支援で、医療の届かないところへ医療を届ける、仲間になりませんか?

詳細は、ジャパンハートのホームページからご覧ください。

ジャパンハートについて、こちらの動画をご覧ください。


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