雄大な北アルプスのふもと。一人ひとりの情熱と探究心が甘い夏いちごをつくる 〜前編〜
お客様に最適な農園をマッチングし、高品質なフルーツの提供を行うJapan Fruits(株式会社ジャパンフルーツ)。この連載では、Japan Fruitsが提携している、全国各地のJF認定農園(※)をご紹介。安心・安全なおいしさが、お客様のもとに届くまでのこだわりに迫る!
人気の観光地・長野県松本市のお隣、標高550mに位置する安曇野市穂高町(ほたかまち)が今回の目的地。一面に広がる田園と、雄大な北アルプスの景色を堪能できるこの町には、日本全国から注文が集まるいちご農園がある。
歴史ある農園から気鋭まで、いちごを愛するプロたちがチームを組んだその名も「穂高会」。いくつかの農園が協力し、生産が難しいと言われている高品質な“夏いちご”を栽培・出荷している。
いちごづくりの背景も知りたい!ということで、今回は「穂高会」のメンバーに話を聞きに、現地へ行ってみた。ここでは、Japan Fruits(株式会社ジャパンフルーツ)と深い関わりのある農園の代表6人が登場し、栽培の背景と“夏いちご”に対するそれぞれの想いを語る。
ー SPECIAL INTERVIEW ー
Japan Fruits(以下:J)の代表と「穂高会」が出会ったのは今から3年ほど前。そのきっかけを作ってくれたのが、夏いちごシーンのパイオニア的存在 徳田さんだ。
前職では猟師をしていた徳田さん。動物の生き死にに近い環境に身を置く中で、農作物に被害を与え殺処分されていく動物たちを目の当たりにし、“野生動物と人間の共生”について考える様になった。
数年前、家庭の事情により、猟師を辞めてここ穂高町へ。周りにいちご農園が多かったこと、また農家の人々に野生動物との正しい向き合い方を知ってもらいたいという想いから、いちご農園をスタートした。
徳:最初は穂高で一番小さい農園でした。右も左も分からない中で、 “みんなが気持ち良く仕事ができたら”と動き始めたのが、今の「穂高会」が生まれたきっかけです。
徳:当時は皆んな、自分たちのいちごがどこでどう使われて、いくらくらいが妥当な値段なのか、全く知らない状態だったんです。
当時はまとめ役のような存在はいても、農家と仲卸の間に入るのが精一杯。今後どのような地域で、自分たちのいちごの需要が伸びるのかを知ることもできず、発展性が感じられなかったという。そんな状況を勿体無いと感じ、穂高の“夏いちご”を世の中へ発信する活動を本格的にスタートした。
徳:まずはお客さんに適正な価格で買ってもらうため、自分たちが納得できる価格を考えて、どこを圧縮できるかを探るところから始めました。
J:徳田さんがチームのリーダー的存在だからこそ「穂高会」はここまで成長できたんですね。
徳:いや、リーダーではないですよ。みんなが主役。今でもお客さんにどうしたら喜んでもらえるかをみんなで一緒に考えてます。
野生動物と人間の共生。今でもその根底にある想いは変わっておらず、いちごを栽培する上で、環境への負荷をなるべく減らせる様にと、納豆を肥料にした栽培にも挑戦している。
徳:人間の体に良いものは、果物にも環境にも良いはず。難しい挑戦ですが、大倉さんをはじめとするパートさんや穂高会のメンバーなど、支えてくれる人が沢山いるので、新しいことにも安心してチャレンジできています。
最近では、町内にある使われなくなったビニールハウスの再生にも取り組んでいる。
徳:町の人もきっと、草ぼうぼうで放置されているビニールハウスがあるのは嫌ですよね。農業へのイメージも悪くなってしまうし、黙って見てはいられない。再生したビニールハウスを使って、新たな夏いちごの栽培に挑戦したいと思っています。
J:挑戦が尽きないですね!
徳:前までは夏いちごの栽培は難しいと言われていましたが、今ではそれが実現できています。できないことなんてないと思っているので、より上を目指して、これからも甘い夏いちごを安定的に届けられるようにチャレンジしていきます。
今では、日本を代表する夏いちごの農園へと発展した「穂高会」。徳田さんの努力なくして、今の隆盛はなかったに違いない。いちごに対して誰よりも情熱を注ぐ徳田さんは「穂高会」になくてはならない存在なのだ。
続いて、そんな徳田さんが信頼し、穂高で一番綺麗ないちごを育てる山崎さんのもとへ。
私たちがお邪魔した10月は、ちょうど苗差しの時期。案内してくれたビニールハウスの中ではランナー(来年の苗)が育てられていた。
山:ランナーはこの後、ポットに植え替えて育苗ハウスに移します。まとまった雪が降るクリスマス近くになると、ハウスの屋根を外して雪を被せ、半休眠状態にするんです。雪の下は0℃近辺で保たれるから、乾燥や加湿に脅かされることなく安定した環境で育てられるんですよ。
りんご農家で育った山崎さん。ここ穂高で就農して11年。いちご一筋でやってきたからこそ分かる知識や鋭い感覚で、丁寧な仕事を続けている。
J:山崎さんのいちごは形が綺麗って言われていますよね。
山:え!そんなことないですよ。笑
と、とても謙虚な山崎さんだか、形の整ったいちごが好評だ。某大手洋菓子店に10年近く出荷をしていた経験がその理由のひとつ。日頃から手をかけ過ぎない、ストレスを減らした育て方が、美味しさだけでなく見た目の美しさまで叶えている。
J:今後、品種を絞って栽培をすると聞いたのですが。
山:情報が早いですね!笑 人手も限られているので、きちんと向き合って栽培するために「すずあかね」(夏いちごの一種)に絞ろうかと思ってます。
選別、収穫、管理まで全ての工程に対して、決して手を抜くことはない。培ってきた経験と実績が、味も形も上質ないちごづくりに繋がっている。
続いて、そんな山崎さんが誰よりも安定的にいちごを育てると語る、中村さんの農園へ。
中村農園のビニールハウスに入ってまず驚いたのは、いちごの苗が小さいこと。苗のサイズは小さいが、そこには元気な花や実が付いていた。
J:苗が小さいのには何か理由があるんですか?
中:大きく育てると、収穫のピーク時にはドカンと採れるのですが、その後ストンと止まってしまうんです。小さく育てていると割と順繰り、断続的に花が付いてくれるんですよ。
J:安定して収穫できるのには、苗の大きさも関係していたんですね。今年のように暑さが厳しい年でも、中村さんのいちごが元気な理由が分かりました。
夏いちごの新品種「サマーリリカル」のハウスに移動すると、苗には山崎さんのいちごと同じくランナーが垂れていた。
中:このランナーは苗を獲るためではなく、実を獲るために垂らしているんです。
J:えっ、そうなんですか!?ランナーを垂らしていると、垂らしている方に栄養がいってしまいそうですが・・
中:沢山垂らしている場合は別ですが、一本くらいであれば問題ないですよ。
丁寧に教えてくれた中村さん。洋菓子店に直販していた経験をもとに、収穫の大きなピークを作るよりも、安定していちごを届けることを優先し続けている。
お客様のニーズを第一に考え、独自の栽培方法で“安定”を追求する姿には、中村さんの優しい人柄があらわれていた。
「後編」へつづく
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