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琉球ガラスって、知ってる?

工芸好きの旅人はるかです😊 
お気に入りのコップはありますか?
かく言うわたしのマイブームは、お風呂上がりの冷たい一杯を「琉球ガラス」のグラスで飲むこと。気泡と爽やかな色合いが飲み物を引き立ててくれます♪

ぽってりとした厚さと特有の気泡が魅力の琉球ガラス。その背景には、戦後沖縄の、ガラス職人による努力があります。今回は、歴史に着目しつつ琉球ガラスの魅力をまとめてみました。


琉球ガラスの歴史に迫る。戦後沖縄のガラス職人と再生ガラス

ビールを入れるとグラデーションが美しい「沖縄の夕日」

1.第二次世界大戦を経て発展


琉球ガラスは、沖縄本島を中心に生産されているガラスの工芸品です。

明治時代中期ごろから始まったガラスの製造でしたが、第二次世界大戦中の1944年10月10日の空襲(10・10空襲)により那覇市街は焦土と化し、多くのガラス工房が無くなるとともにガラス資源も失うことになりました。

駐在兵や米軍関係者を中心にガラス製品の需要が高まったものの、物資不足の中でガラス製品の原料不足が続きます。そこで当時のガラス職人たちは駐留米軍によるジュースやお酒の廃瓶に目を付けました

現在見ることができる「再生ガラス」による、琉球ガラス製品の誕生です。

2.平成10年に沖縄県の伝統工芸品として認定

1960年代のベトナム戦争によりガラス製品の戦争特需が発生し、沖縄県内で数多くのガラス工房が建てられます。1972年5月15日に、ついに沖縄が米国から日本に返還されると、沖縄の返還を記念して1975年に開催された「沖縄海洋博覧会」を契機に、本土からの沖縄観光ブームが起こります。

観光ブームで沖縄に訪れた人々の土産物として、沖縄の伝統工芸品にも多くの注目が集まるようになりました。1998年(平成10年)、琉球ガラスは「伝統工芸品」として指定されました。

現在でも、多彩なガラス製作が行われています。2014年には、県内では303人の職人たちが、17か所のガラス工房で琉球ガラスを作り上げています。

2020年には宙吹き職人である末吉清一が、琉球ガラス職人として「現代の名工(厚生労働省による、卓越した技術を持つ技能者を表彰する制度)」に選ばれるなど、現在でも伝統工芸品として琉球ガラスは、高く評価されています。

琉球ガラスの魅力とは。再生ガラスならではの気泡と色合い

沖縄の海を彷彿とさせる気泡。

1.閉じ込められた魅力。ガラスの気泡

戦後の職人による努力の賜物である「再生ガラス」。廃材から再利用するという性質上、ラベル等の不純物が残りやすいので、気泡ができやすいです。通常のガラス製品では、気泡が入ったものは失敗とされていることもありますが、琉球ガラスではかえって唯一無二の魅力になっています。

さらに、ガラスの攪拌や巻きつけ、剣山の針などを用い、わざと気泡を含ませることもあるそうです。

2.廃材ありきの鮮やかな色彩。沖縄の自然にちなんだ意味合い

再生ガラスによるガラス製品づくりは、その原料となる瓶の色によって色味が異なり、さまざまな仕上がりになります。例えば、泡盛の一升瓶やビールを原材料とする場合はブラウン系のガラス製品、コーラなどはグリーン系、ジャムの瓶はクリア系などその色合いは多種多様です。

沖縄の自然にゆかりのある意味あいが込められた色も多くあります。
例えば、青は、沖縄を代表する「海」です。緑は豊かな「大地」、赤は「太陽」そして、オレンジ色は、「朝夕」を表しているといいます。

こちらの動画では、実際の使用シーンが見られます。文字だけだとイメージしづらいかと思うので、リンクを貼りました↓↓↓

廃材を有効活用している琉球ガラスには、材料の多様さゆえに他にも黄色や透明、水色など、さまざまな色合いがあります。その日の気分に合わせて、使う琉球ガラスを変えてみるのもたのしそうですね。

琉球ガラスの技法|「宙吹き法」と「型吹き法」


琉球ガラスには、「宙吹き法」と「型吹き法」の主に二つの製法があります


- 宙吹き法
約1300~1500℃の高温で溶けたガラスを、筒状の「吹き竿」と呼ばれる道具で巻き取ります。その吹き竿に息を吹き込み、ガラスをふくらませながら製品の形を創りだしていく技法です。

この技法では、ドロドロに溶けたガラスに働く重力とガラスが巻き付いた吹き竿を回す遠心力だけで整形します。高温のガラスが冷める前に成形をする必要があるため、異なる模様や形が加工の過程で偶然つくこともあります。

そのため、宙吹き法では、加工過程での数多くの偶然や吹き竿に吹き入れる職人の加減により、同じものが一つとして存在しない多種多様な製品をつくることが可能です。

- 型吹き法
宙吹き法と同じく、ガラスを約1300~1500℃で溶かします。その後、溶かしたガラスを吹き竿につけ、金属型、木型、石型に差し込みます。その状態のまま竿に息を吹き込むことで、型通りに成形することができます。

この技法では型通りの同じ形状の製品を沢山作ることができます。型で同じ形を成形しているとはいえ、工房や材料・職人によって一点一点異なる味魅力を楽しむことができます。

- 製造工程
どちらの工程においても、琉球ガラスの製造工程としては主に5つ段階があります。これらの工程の中で、ガラスを溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)、製品を仕上げる窯(整形窯)、製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)の三つの窯が使われるため、2~3人の職人が連携して一つの作品が作成されます。

1. 色を調合する
原料を色ごとに調合します。廃瓶を使用する場合は、調合の前に色別で分けて洗うことからスタートします。

2. 原料を溶かす
調合済みのガラス原料を約1300~1500℃で溶かしておく窯(坩堝、るつぼ)に入れ、一晩溶かします。

3. 形を作る
ここで、「宙吹き法」・「型吹き法」のどちらかの製法を用いて成形していきます。最終的には、製品を仕上げる窯(整形窯)を用いながら形をしっかりと整えていきます。

4. 冷やす
約600℃で常温になるまで、ゆっくりと製品を冷ます窯(徐冷窯:じょれいがま)に一晩入れておきます。そうすることで、急速な温度変化によるガラスの損傷を防ぎ、成形した琉球ガラスを製品へと仕上げます。

5. 検品する
徐冷窯より取り出された製品を水洗いしてヒビや割れがないか、期待した形に成形されているかを検品し、皆さんのもとに届く琉球ガラスが完成します。

こうした、職人や工房の丁寧なひとつひとつの手作業によって、一つとして同じものがない琉球ガラスが生まれています。

愛らしさの背景には、戦後沖縄の職人たちの努力と情熱があります


琉球ガラスには、戦後沖縄の職人たちの努力と情熱が込められていることが少しでも伝わっていたらうれしいです。そのぽってりとした厚みや特有の気泡から、歴史の重みを感じ、その涼やかさに勇気をもらえます。
お風呂上がりの冷たい一杯を、ぜひ琉球ガラスで🥂

最後に、参考記事を置いておきます。今回紹介した内容がより詳しく書いてあります琉球ガラスの詳しい歴史が紹介されています。さらに知りたい方はぜひご覧ください。

日本工芸スタッフ。日本の伝統工芸に魅了され、その美しさや技術に感動する日々。旅行が大好きで、新たな文化や素敵なものに触れることが大好きです。
このnoteでは、日本の工芸文化や旅先での出会いを通じて感じたことや、見つけた情報をシェアしていきます。一緒に工芸品の魅力に迫りましょう!

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