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【物語5】天気はどう?

僕たち4人は机を引っ付けて作戦会議を始めた。
初めてのチームミッションが「チーム名を考える」という
難題となったので僕たちはかなり戸惑った。
ダイが口火を切ってこう言った。

「暗号としても使うってどういう意味だよ? アミ分かる?」
「多分、私たちのチームを秘密裏に動かしたい時にそのチーム名
 が暗号として機能するんだろうね」
「僕たちのチームだという事を隠して指示を出す時?」
「そんな極秘ミッションもあるんだ~。なんか緊張してきた」

皆が思い思いに言葉を発し、この謎を何とか理論づけようとした。
日常会話で良く使う何気ない単語がいい、とか
数字も組み合わせて作ってはどうか、とか
全く意味を成さない造語の方がいい、とか
それぞれ色んなアイデアを出して皆で話し合った。
あっという間に1時間が過ぎていた。

結局、全員一致した意見が「普段良く使う言葉」にしようということだ。
その方が会話にも入れやすいし、怪しまれずにいいんじゃないか?
ということで僕たちのチーム名はな・ん・と!
「天気はどう?」になった。
慣れるまではこれがチーム名?と少し戸惑うかもしれない。
でもどんな場面でも怪しまれず、自然に会話に組み込めるワード。
それが「天気はどう?」だ。


さらに僕たちは一人一人をそれぞれ天気に割り当てた。
 ダイが「晴れ」
 アミが「雨」
 ミラが「曇り」
 僕が「風」
これなら個別の指定もできるし、
ふたつを組み合わせて、例えば「雨のち曇り」とか、「晴れて風あり」
とかにすれば、メンバー2人を固定指定する暗号にもなる。
これは素敵な暗号になるんじゃないだろうか?
僕たちはハイタッチして初仕事を終えた喜びに浸った。

ダイがステラ教官にチーム名を報告しに行ってる間、僕たち3人の話題は
ランチタイムをどうするかという話になっていた。
12時のチャイムとともに、僕のお腹はグゥグゥ~鳴った。
確か1階に大きなカフェがあったと記憶していたので、
今日はみんなでカフェランチに行こうと僕が提案した。
そこへダイが笑顔で戻ってきた。

「教官、何て言ったと思う?」
ダイがウインクしながら嬉しそうに言った。
ダイがご機嫌だということは、きっといい反応だったんだろう。
きっと初のチームミッションは成功したに違いない。

「僕たちのチーム名を見た瞬間、ステラ教官はこう言ったんだ」

ダイはひげを触りながら話すステラ教官の癖を真似しながら…
「ほほう~。暗号にも利用するという私の言葉の意味を理解したようだな。
 チーム名としてはやや突拍子もない気もするが、暗号としては優秀だ。
 よく思いついたな。アレンジまで考えてきたチームは過去いなかった。
 よし!合格だ。これで行こう」

「やったね!」
「よかったぁ~」
「最高!」

そして僕たち「天気はどう?」は揃って1階のカフェに向かった。
ステラ教官もきっと僕たちに今後期待をしてくれるだろう。
すべてが順調に行きそうな、いい予感がする。
スタートとしては上々だ。
                              (続く)



 





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