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おすすめ本① 阪西紀子著『北欧中世史の研究』刀水書房

昨年(2021年)急逝された阪西紀子氏の著作がまとめられた1冊。

阪西氏は中世北欧(主にアイスランド)の社会史を研究されていました。CiNii で検索すると、興味深い論文が沢山ヒットします。
私も幾つかチェックしていて、国立国会図書館の複写サービスを利用するか、(関西在住なので)涼しくなったら関西館に行こうかな……と考えていました。

そんな中、歴史書で有名な刀水書房から業績をまとめた書籍が刊行。
早くに亡くなられたのは残念でなりませんが(阪西氏は1962年生まれ)、貴重な著作をまとめて読むことができるのは、北欧史好きとしてとても嬉しく、有難いことです。


内容は下記の通り(裏表紙より)。

アイスランドでは、10世紀末にノルウェー王オーラヴ・トリュグヴァソン(在位995-1000)が宣教師を派遣、キリスト教の導入を図った結果、1000年頃に全島一斉に改宗となりました。
ただ、なぜ平和裡に全島改宗を行なえたのか、教会の建立がどうであったのか等については詳しい資料がなく、よくわかっていません。
著者は入手し得る限りの文献、北欧の研究者による論文をあたり、独自の考察をされています。

また、アイスランド・サガの成立に関しては、口頭伝承説と創作文学説があり、それぞれを支持する研究者の間で長い論争の歴史があります。
これは研究者のみならず、サガ愛好家にとっても非常に興味深いところですが、アイスランドやデンマークの学会討論に加えて著者の自論を交え、一般の読者にもわかりやすく解説されています。

細かい部分では、注釈や索引も使いやすいので、気になったところを再読したい時に大変便利です。

北欧(とりわけアイスランドとノルウェー)の中世史、サガに興味のある方ならきっと楽しめる一冊だと思います。


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