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ヴァイキングの結婚指輪

海外ドラマの人気シリーズ『VIKINGS』や『ラスト・キングダム』の影響もあってか、北欧諸国をはじめ欧州ではヴァイキング時代のマーケット等を再現したフェスティバルの開催や、出土品のレプリカジュエリーや日用品などを販売するショップが以前より増えています。
ジュエリーの幾つかはカップルで楽しめるようなペアアイテムも多く、ルーン文字を刻印した結婚指輪もあるようです。

先日、SNSでも話題になっていたのですが、そもそもヴァイキング時代に結婚指輪はあったのでしょうか。
一概に否定はできませんが、一般的な慣習としては無かったと考えます。

ヨーロッパのキリスト教徒の結婚式で結婚指輪が使われるようになったのは9世紀になってからで、ローマ教皇ニコラウス1世が妻に指輪を贈ったのを機に、貴族の間で結婚指輪を贈ることが流行したそうです。
新郎新婦の指環交換となると、11世紀の書物に初めて記録があります。

「そこで、花婿は花嫁に金のリングを、花嫁は花婿に鉄のリングを交換している」
(ミュール、『ローマのマリッジリングの起源』1027年)


北欧諸国がキリスト教化されたのは、ヴァイキング時代後期から末期(10~11世紀)のこと。
キリスト教が普及する前の北欧では、いわゆる北欧神話の神々――オーディンやトールなどを信仰する人々が多かったのです。

異教時代にも、結婚の際に新郎から新婦へ贈り物をする慣習はあったようですが、指環に限ったものではありません。
とはいえ、ヴァイキング時代の墓所などの遺跡から指環は普通に出土しているので、装飾品としての指環はありました。男性はおそらく富や権力の象徴として(銀製なら貨幣の代用品にも使ったかも)、女性は主に身近な男性(父とか夫)からの贈り物として身に着けていたようです。

スカルド詩人のコルマクやハルフレズは恋愛詩も残しているので、ちょっと調べてみたところ、コルマクが想い人のステインゲルズに金の指環を与えようとして拒絶される場面が『コルマクのサガ』にありました。結婚指環ではないけれど、愛の証として指環を贈ることはあったのかもしれないですね。

また何か判れば、追記します。


画像のソース
https://vikingar.historiska.se/object_details.php?object=854442_HST&e=no&l=sv

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