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ワンダーウーマン1984にジョス・ウェドンが出演している?という話

タイトルとサムネでもう半分結論が見えていますが、この男はジョス・ウェドンではないかという説がSNSを賑やかしたことがありました。なぜこんな説が出回ることになったのか経緯を考察します。

▼WW84で痛い目に遭う男:

ワンダーウーマン1984』ではバーバラに2回にわたり乱暴しようとしてそれぞれダイアナとバーバラに返り討ちにされる男が出てくるのですが、この男の風貌がジョス・ウェドンに似ているという指摘がSNSでありました。

こちらは1回目。

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バーバラに絡んできた男をダイアナが撃退する

そして2回目。

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バーバラに絡んできた男をバーバラ自身が撃退する

確かに似ているような気がします。

Wikipediaよりジョス・ウェドンの近影

全体的な輪郭とか。髭とか。鼻の形とか。

しかしこれだけだと証拠としてはイマイチ弱いと言うか、もともとDCEUのファンにはウェドンのことをよく思わない層が一定数いるので、彼らが曲解してSNSで盛り上がっているだけという見方でもできます。たまたま俳優の顔が似ていただけ、という可能性も捨てきれません。というのもアメリカ人の一般的な白人男性の顔としてはよくあるタイプなんじゃないかと思われるので。

しかし、実はジョスティスリーグの撮影時にウェドンはガル・ガドットと問題を起こし、パティ・ジェンキンス監督まで巻き込んでの騒ぎになっていたようなのです。これはWW84の男性像は意図的にウェドンに似せて作られたものである可能性が一気に高まってきました。

▼事実の確認:

まず時系列を確認しておきます。

2014年05月:BvS撮影
2015年11月:ワンダーウーマン撮影(一作目)
2016年03月:BvS公開
2016年04月:ZSJL撮影
2017年05月:ジョスティスリーグ撮影(★)

2017年06月:ワンダーウーマン公開
2017年11月:ジョスティスリーグ公開
2018年06月:WW1984撮影
2020年12月:WW1984公開
2021年03月:ZSJL公開

やや入り乱れているのでわかりにくいですが、最低限押さえておくべきなのは、WW1984が撮影されたのはジョスティスリーグの後であり、そのジョスティスリーグが撮影(★)されたのはワンダーウーマン(一作目)の公開の後であるという点でしょう。

つまり「(一作目)→(ジョス★)→(1984)」という順番です。

問題は、このジョスティスリーグ撮影時(★)に起きた事案です。

2020年7月にレイ・フィッシャーはウェドンの問題行動をTwitterで告発しました。

「ジョス・ウェドンの撮影現場での映画『ジャスティスリーグ』のキャストとクルーへの扱いは、気持ち悪くて、虐待的で、プロ意識に欠けて、まったくもって受け入れられるものでは無かった。彼は当時の会社の経営層のおかげで監督として振る舞うことができただけた。アカウンタビリティはエンターテイメントより優先されるべきだ(A>E)」

レイ・フィッシャーのTwitter(2020年7月2日)より

これを受けてワーナー・ブラザースは第三者機関で構成された調査委員会を設立しました。調査は2020年内に実施され、そこで報告された内容が翌年4月に記事になっていたので一部引用します。

The biggest clash, sources say, came when Whedon pushed Gadot to record lines she didn’t like, threatened to harm Gadot’s career and disparaged Wonder Woman director Patty Jenkins. While Fisher declines to discuss any of what transpired with Gadot, a witness on the production who later spoke to investigators says that after one clash, “Joss was bragging that he’s had it out with Gal. He told her he’s the writer and she’s going to shut up and say the lines and he can make her look incredibly stupid in this movie.”

A knowledgeable source says Gadot and Jenkins went to battle, culminating in a meeting with then-Warners chairman Kevin Tsujihara. Asked for comment, Gadot says in a statement: “I had my issues with [Whedon] and Warner Bros. handled it in a timely manner.”

ウェドンとガドットの最大の衝突は、情報筋によると、ウェドンが追加したセリフの録音をガドットが拒否した時に起きた。ウェドンはガドットのキャリアを傷つけると脅迫し、さらにワンダーウーマンのパティ・ジェンキンス監督を誹謗したのだ。フィッシャーはガドットの件については明言を避けたが、撮影現場の別の目撃者は衝突があった後の様子についてこう証言している。「ジョスはガルとやり合ったことを自慢していました。彼は彼女に向かって言ったんです、彼こそが脚本家であること、彼女は口ごたえしないでさっさとセリフを言えば良いこと、そして、もしその気になれば彼はこの映画で彼女をトンデモないバカ女に見せることができるって。」

また別の情報提供者からはガドットとジェンキンスは抗議するために、当時ワーナー・ブラザースの会長だったケヴィン・ツジハラと会議を開いたとされている。コメントを求められて、ガドットは「その件に関しては当時のウェドン氏とワーナー・ブラザースと適切に処理しました」とだけ述べている。

The Hollywood Reporter (2021.04.06)

スナイダーカットを観ればフィッシャーを筆頭に有色人種のシーンがことごとくカットされていたことが瞭然ですし、ガドットをはじめ女性キャラクターの台詞の変更点などからも、ここで引用した証言はかなり信頼できると思います。

そしてこのような仕打ちを受けていたなら、ジェンキンス監督が「女性蔑視をした報いに女性にコテンパンにされる男」に「ウェドンに容姿が似ている俳優」を当てつけるようにアサインするというのは、なんとも真実味を帯びてきます。

▼WW84で痛い目に遭う男の結末:

実はWW84の男の物語にはまだ続きがあります。

チーターに変身しつつあるバーバラの暴力は止まらず、最初のダイアナとは異なり、彼を殺す勢いで暴力を振るい続けました。

しかし、そこにちょうどバーバラの友人が通りかかることで彼女は我を取り戻し、ウェドンもどきの男は命拾いします。その通りすがりの友人というのが、、、

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バーバラの暴走を止めたのは…

わかりますか。黒人なのです。

フィッシャーをはじめとした有色人種の俳優に差別的な態度をとった白人男性が命の危機に陥った時、彼の命を救ってくれたのは有色人種の男(しかもホームレスという低所得者層)なのでした。

これってめちゃ皮肉が効いてると思いませんか?
(正直、差別に疎い日本人から見るとやりすぎレベルに感じるかも)

いやージェンキンス監督は、なかなか強烈ですね。笑

WW84の特典映像のメイキングやプロモーションのためのインタビュー映像などを見た限りですが、彼女はなかなか気が強そうに見えます。相手にしたのが悪かったですね。笑

・・・

いかがでしょうか。もし面白いと思ったり気づいたことがあった人はコメントなどをくれるか、こちらの記事を拡散していただけると嬉しいです。この演出はもっと皆でいじった方が面白いと思うので。

実はウェドンも自身の作品の中である実在の人物を仮託したメタ演出を入れていたのですが、壮大なブーメランになっている事例があります。よろしければそちらもご覧ください。

了。

ウェドンの華麗すぎるブーメランの記事はこちら。笑 ↑

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