スナイダーカットのオープニング10分で泣けるシーン
今回はややマニアックで変態な記事です。
▼そもそもオープニングクレジットの見所とは:
はっきり断言できる。
どんな映画でもオープニングクレジットは見所になる。
どのショットで、誰の名前を、どの順番で出すのか。
そして、そのとき音楽(台詞)はどうするのか。
オープニングクレジットに作り手の意図ははっきり刻まれている。
それを読み解くことができれば、
それだけで十分に胸に込み上げるものがあるのだ。
ここで言っている見所とは、オープニングが誰が見ても面白いかという点ではないことに注意されたい。あくまで刻まれた名前から意図を読み取る作業が興味深いという点を私は指摘している。なので、よく注目すべきポイントという意味で私は「見所」と呼んでいる。
スナイダーの作品にはオープニングクレジットが映画的に非常に優れた作品が複数ある(『ウォッチメン』『バットマンVSスーパーマン:ジャスティスの夜明け』『アーミー・オブ・ザ・デッド』などは誰が見ても面白いオープニングの典型である)ため、そちらが注目されがちであるが、本作『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』でも映像と音楽と名前からしっかりメッセージは伝わってくる。
以下では画面のスナップショットを引用しつつ詳細に解説する。
▼画面と名前と音楽の妙技:
本noteではオープニングクレジットの後半に着目する。
1)コスチューム:マイケル・ウィルキンソン!
アイスランドの氷河が何万年以上もかけて作りあげてきた自然のテクスチャが初めて映し出された瞬間にウィルキンソンの名前が出る。彼がデザインしたコスチュームの繊細で美しいテクスチャーを想起させる。彼は『300』以降のスナイダー作品を全て手がけてきた仲間だ。最近は『アラジン』や『ジュラシックワールド:ドミニオン』でもクレジットされている。
2)VFX:ジョン・DJ・デジャーディン!
同じく複雑で奥深い氷河のテクスチャーを背景に、ビジュアルエフェクトの要であるデジャーディンの名前が出る。彼もまた『ウォッチメン』以降のスナイダー作品を全て手がけてきた仲間だ。最近は『ゴジラVSコング』や『The Flash』でもクレジットされている。
3)VFX:タマラ・ワッツ・ケント!
ケ、ケントだって?!クラークの親戚なのか?!
これは後から調べたら分かったけど、違いました。笑。2019年にスナイダーからラフカット版を見せられて、そこから予算を立てて色々頑張ってくれた人のようです。ご本人がInstagramに投稿された長文が感動的です。
4)音楽:トム・ホルケンバーグ!
画面がそれまでの直下型の空撮からナナメ目線に変わって、これまた美しい氷河のまるで砂漠のように波打つ姿を見せた時。きました。今やスーパー売れっ子ムービー作曲家。ジャンキーXLことホルケンバーグ。彼の名前も大作映画でバシバシ出てくる(『マッドマックス怒りのデスロード』『アリータ:バトルエンジェル』『ターミネーター:ニューフェイト』『ゴジラVSコング』)ので大物感がハンパない。
しかも彼の名前が出るときに初めてホルンが主旋律として鳴るのだよ。それはまるで我が軍が誇る総隊長の登場を高らかに告げるファンファーレのように。ぜひ耳を澄ませてオープニングを見直していただきたい。
5)デザイン:パトリック・タトポロス!
画面切り替わってタトプロスきたー!
彼が映画界におけるレジェンドみたいな存在だが、2000年代の作品数がエグイことになっているからWikipediaで確認いただきたい。ただし英語で見てね。日本語版はかなり省略されているので。https://en.wikipedia.org/wiki/Patrick_Tatopoulos
私はスナイダーにとってのタトポロスは「庵野秀明にとっての山下いくと」のような存在だと認識している。
6)撮影監督:ファビアン・ワグナー!
お待たせしました!ここで撮影監督ワグナーの登場だ。ずっとテレビ畑でやってきた彼の名を確固たるものしたのは『ゲーム・オブ・スローンズ』ということになるだろう。映画キャリアの早い段階で関わったのがこのジャスティスリーグになった。
ビジュアルストーリーテラーとも形容されるスナイダーにとって撮影監督はある意味で最も重要なポジションだと言って良いだろう。スナイダーの作品は『300』からずっと「映像のマジシャン」ことラリー・フォンが務めてきたが、ここで若手を採用して新しい風を吹き込んだのはもはや革命と呼んでも過言ではない。常に変化して進化し続けずにはいられない、それが真のクリエイターたるものだ。
ワグナーはどんな映像を見せてくれるのか。期待が膨らむ。
7)EXプロデューサー:ベン・アフレック!
ベンアフ!
クリス・テリオの名前もあるな。
8)この作品の人物はDCコミックスによるものです!
くるか?くるか?
9)スーパーマン by ジェリー・シーゲル and ジョー・シャスター!
スーパーマンきたーーー!!
しかも音楽もこの部分でMoSのメインテーマになる。
実は本作ではスーパーマンのみ原作者が表記される。バットマンはじめ他のキャラクタは先程の「DC」で一括り。これは本作がスーパーマンの物語であることを示すメッセージである。詳しくは別記事に記載したので、そちらを参照されたい。
10)プロデューサー:デボラ・スナイダー!
未開の荒野を拓きながら歩き続ける男の傍にはいつも妻の姿があった。
11)原案:クリス・テリオ&ザック・スナイダー&ウィル・ベール!
俺たちファンが見たかった物語は彼らが作った物語なんだ!
12)脚本:クリス・テリオ!
前回の2017年ではプロジェクトから離れた後にウェドンにズタズタに引き裂かれて改編されまくった完成品を関係者試写会で視聴して、自分の名前を消せないかとまでワーナー・ブラザースに正式に相談を入れていたテリオ。プリントが劇場公開に間に合わなくなるという理由でその申し入れは却下された。しかし遂にテリオが書き上げた本来の脚本に沿って作られた作品を私達は観られる時がきたのだ。
実はここにくるまでに表示されてきた数々のクレジットを見るたびに毎回感動し、私はすでに泣きそうな状態になっていたのだが、いよいよ涙が溢れそうになる。もう限界は近い。
13)監督:ザック・スナイダー!
ババーンッ。
そして満を持しての監督ザック・スナイダー。
ここまできてようやく安心できた。
一時は存在しないとまで揶揄されたスナイダーカットは実在したのだ。
THE SNYDER CUT IS REAL.
そしてスナイダーはこの場面でアフレックの背中を押している。これは本来ジャスティスリーグに続くはずだった作品『The Batman』の監督となる予定だったアフレックへのエールでもある。本来はこんな粋な演出で始まるはずだったなんて!
なおバットマンの単独作品はプロダクションの途中で予定変更され、アフレックはまずは監督のみ降板し、続けて主役からも降板した。今はロバート・パティンソン主演で進んでいるのは周知の通りである。
だめだ。この時点ですでに胸が一杯だ。
このあと画面はドンッと暗転してパート1が始まるのだが、それが無かったら切り替えができなかったくらいに胸が熱くなるオープニングクレジットだった。いやあ全くもってこの時点で情報量と感情起爆剤が多すぎる。笑。
・・・
▼まとめ:
以上、私がスナイダーカットを初見時にオープニングクレジットを観ながら感じていたことを思い出しながら書き綴ってみた。私の興奮が少しは伝わっただろうか。笑
スナイダーカットの場合は公開まで4年間いろいろあったので湧き起こる感情が大きかった面はあるが、どんな映画においてもオープニングクレジットの出し方には作者の意図が込められているのは共通して言えることである。ぜひ皆さんもお気に入りや思い入れのある作品のオープニングを書いてある人物やそれに合わせた音楽に気を配って見直してみは如何だろうか。
なお、余談だが最近はエンドロールの最初にイラストなどを使って作品のイメージと役者を合わせて紹介する作品は増えたね。ワンダーウーマンでもそうだったし、MCUはほとんどの作品で採用しているのではないだろうか。それもまた映画を読み解く「見所」であると言えるね。
了。
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