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微化石の研究は,私のイメージですが,過去のこと(環境や気候など)しか解明していないのですか?例えば未来につながるような研究を行っているのでしょうか。

あかつきさん(高校3年生)からの質問
(回答:海洋研究開発機構 地球環境部門 木元)

ご質問ありがとうございます。あかつきさんは微化石に興味をお持ちなのですね。
微化石とは、顕微鏡で見ないと形がよくわからない、小さな生物の化石や痕跡などを示すことばです。微化石には、有孔虫や放散虫といった動物や、珪藻や石灰質ナノプランクトンなどの植物が含まれ、炭酸カルシウムや珪酸質などの硬くて頑丈な殻を持っていることが特徴です。微化石は海底にたまっている泥(堆積物)の中にたくさん含まれるため、それを調べることで過去の地球環境や、泥がたまった年代を調べるのに大変役に立っています。微化石の中にはすでに絶滅してしまったものも多いですが、現在の海にもたくさんの種類が生きています。

現在の海で生きている微化石となる生物(ここでは「微化石生物」と呼ぶことにしましょう)の研究も積極的に行われています。
 たとえば、プランクトンネットという道具を使って、海中のいろんな水深のプランクトンを季節ごとに採集して、そこに生きている「微化石生物」と海洋環境(光、水温、水質、栄養など)がどのように対応しているのかを調べたりしています。また、いろいろな海洋環境を実験水槽内で作り、その中で「微化石生物」を飼育したりする実験も行われています。さまざまな環境の下で「微化石生物」がどのようにふるまうのかがわかると、今後予想される環境の変化の中でその生物がどのように対応するかについて予測することにつながります。

今、海洋研究の中でおおきな環境問題が議論されています。それは「海洋酸性化」という現象です。石炭や石油などを使うことで、人類はたくさんの二酸化酸素を出してきました。この二酸化炭素が海水に溶けることで海水の化学変化が起こり、炭酸カルシウムでできた殻をもつ生物の殻が溶けやすい状態になってきていることがわかってきました。この状態は今後も続くと考えられており、これらの生物が生きていくことが難しくなり、海の生態系が変わるかもしれないといわれています。今わたしたちは貝やサンゴ、「微化石生物」について、飼育実験などを基に調べているところです。いまのところ、「微化石生物」をはじめ、炭酸カルシウムの殻をもつ生物にとってそれほど深刻な影響は出ていないようですが、海洋酸性化がさらに進めば、どうなるかはまだ不明な点が多く残されています。
あかつきさんもぜひ、研究者になってわたしたちと一緒にこの問題に取り組んでみませんか?

以下も参考にしてください。

① 海と地球の情報誌Blue Earth  vol.126p2-17
(下記PDFはclickするとDLが始まります。ご注意下さい)

② Jamsteeec海と地球をカガクしなイカ?  #30「地球を語る有孔虫」

いか研究所 (2)


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