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群青色の着物

私は物心ついた時から生粋のへそ曲がりだ。

人と同じものがとにかく嫌。他人を見てなんでこの人たちは皆同じものを選ぼうとするのだろう、と常に疑問を抱いていた。
そんなものだから通信簿には、「協調性がない」だの「わがまま」「自己中心的」と書かれたい放題のいわゆる問題児。

他人とずれた感覚を持っているのかもしれないと最初に自覚したのは、数え歳で七つを迎えた年だ。
七五三の着物をあつらえるために呉服屋に連れて行かれ、どの着物が良いか選ばされた。
私が暫く考えて選んだのは、鮮やかな群青色の着物。裾から昇るように鈴蘭の花が生えた「カッコいい」柄だった。

母は私の選択に難色を示した。
なぜ他の子のように赤を選ばないのかと。

私は子供心に想った。
ならば何故選ばせようとしたのかと。

私は自分が「カッコいい」と思うものを着たいだけなのに。

結局私の「わがまま」が通って、七五三には群青色の着物を纏うことになった。このお気に入りの着物は、大きくなり着られなくなるまで毎年正月に祖母に着せてもらっていた。
その後は末妹に引き継がれ、その姿は今も写真に残っている。

思えば、群青色の着物はお値段が張ったのかもしれない。
大抵の女児向け着物は赤色で、どう考えても群青色など流通量が少ない。
そんな大人の事情を子供時分に知る由もなく、「わがまま」な私は容赦ない選択をした。どうしてもその色が着たかったから仕方ない。
普段から赤やピンク、フリルにレースの「可愛い」ものを押し付けてくる母に対する、ささやかな抵抗でもあった。

大人になってからも私はへそ曲がりのままだ。
その所為で他人と衝突したことは数知れないが、多分一生このままなのだろう。
サブカルチャーを好むのも、きっとこのへそ曲がりな性格由来。
本当になんて面倒な奴だコイツは。

東京事変の「群青日和」を懐かしく聴いていたら、何となく思い出した子供の時代の苦い記憶。





何やらサポートをすると私の体重が増える仕組みになっているようです