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アメリカの医療に関する体験談

オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革法の無効化が却下されるというニュースが出ていました。日本ではあまり馴染みのない話ですが、医療費がたかーいアメリカでの過去の体験談をシェアします。


私はアメリカの企業に勤めていてカリフォルニアに3年半家族で住んでいたのですが、その時にまず悩まされたのが保険のプラン選びでした。
国民皆保険性ではないアメリカですが、会社に雇用されていると社員は医療保険、生命保険、歯科保険、眼科保険、弁護士保険などの保険料を一部会社負担で加入する事ができます。
ただ、ややこしいのがそのプランで、ある程度の大きさの会社だと複数の保険会社が用意している複数のプランから選ばないといけません。日本でいうと生命保険やがん保険に色々な種類があって悩むのと同じイメージです。
当然ながら掛金が高いと保証も充実していますが、かなり高額な保険毎年自分の家族にどんなリスクがあるか考えて保険を選ぶのは至難の業です。

アメリカの保険制度で混乱するのはプランの種類だけではありません。日本だと医者にかかると単純に3割負担で計算されますが、アメリカの医療保険は医療費や保険の適用もとても複雑です。Premiums, Deductibles, Coinsurance, Copayという用語があり、それを理解しておかないといけません。

Premiumsは毎月の掛金で、自分と会社がそれぞれ負担します。私が加入したプランだと、家族4名で$95程度、会社が$580程度を負担していました。

Deductiblesは年間の累計自己負担金額で、この金額まで達しないと保険金が支払われない仕組みになっているのです。例えば個人で年間$2500(30万円)、家族で$5000(55万円程度)などがプランごとに決められています。

Coinsuranceは免責のようなもので、年間の医療費がDeductibleの金額に達してからもある程度(例えば医療費の20%)を自己負担する必要があります。

Copayは自己負担分で、毎回医者にかかる度に必ず支払う費用になります(例えば$20など)

https://www.aetna.com/health-guide/explaining-premiums-deductibles-coinsurance-and-copays.html

当然具合が悪くて医者に行く前に「あれ、Deductibleまでいったけ?」なんて細かい計算なんかはしていませんので、医者に行ったときはCopayを支払うだけなのですが、後から医院の方で計算されて後日請求書が届くことになります。これが面倒でいやーな気分になるもので、Deductibleに達していない場合は結構な金額を小切手やクレジットカードで支払う事になります。

私の場合はちょっと風邪気味でホームドクターに行ったところ、「風邪気味ですね」と言われて$200(2万2千円ぐらい)の請求書が後から来ました…

更にややこしいのが「ネットワーク」と呼ばれる、保険会社の保険が適用できる医院や病院の「系列」的なシステムの存在です。アメリカでは各保険会社が独自のネットワークを形成していて、その提携先の医院でないと高額の自己負担が発生してしまいます。

例えばアメリカで総合病院のネットワークを形成しているKaiserというグループだと、大きな病院で比較的手頃な費用でまとめて診療が受けられて便利な判明、近所の小さな医院などはOut of Network扱いになるので、そに行くのはあきらめる事になります。

日本だと自分の好みで「内科はA医院、整形外科はBクリニック、皮膚科はC医院…」など勝手に決めて通うことができるのですが、アメリカでは自分が加入している保険のネットワーク内にある医院のリストから選ばざるをえません。

また面白いのが歯科保険で、医療保険とは別でプランを選びます。こちらはDeductible方式ではなく年間合計で使える保険の上限が決まっているシステムです。だから、歯医者さんにいくと「XXさんは今年あと$500ぐらい残っているので、今年のうちにクラウンを新しくしましょうか~」などと提案されたりします。

そう、アメリカの保険は毎年更新なので、1月を境に保険会社を変えたりプランを変更する事ができますし、Deductibleもリセットされるので、医療を受けるタイミングによっても家計への影響が変わってきたりします。

ちなみにVision(眼科)の保険も別になっていて、コンタクトレンズなどは保険を使って格安で買うことができます。

まとめ

色々と書きましたが、アメリカは日本の様に皆保険で認可を受けた医療機関ならどこで治療を受けても一律3割負担などという公平で分かりやすいシステムではないんです。
なぜそういったシステムにしないかと言うと、人種や宗教、経済力、地域性などの振れ幅が大きく個人の考えを重視するアメリカという国の文化では、むしろ自分に合った選択肢が与えられない方が問題だという考えも強いからだと思います。
充分に健康で蓄えもある人は保険に入りたくないかも知れませんし、逆に手厚い保険を選んで備えたい人もいる訳です。

しかし、やはり生活に困窮している人々に最低限の医療を提供するのべきではないのかという考えで、オバマケアが登場した訳です。
ただ、これは国が保険を提供するのではなく、あくまで保険会社に加入希望者からの申請を拒否できなくする為の制度なので、医療保険の企業がリスク回避のために保険料を上げるという反作用を及ぼしてしまいます。例えば、所得が低くて環境のよくないところで生活している人が保険を使えるとなると、保険の支払いが増えてしまう訳です。

一方でヨーロッパの多くの国は日本に近くて、国が医療保険を提供していて税金が高い代わりにとても安い金額で医療が気軽に受けられるシステムになっています。この辺り、欧米と一口に言ってもかなり違うシステムになっているのが興味深いところです。



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