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直島のアートたち

直島には美術館が3つもあり、更に何十点もの屋外アート、更に古家をベースにした「家プロジェクト」の作品があり、どれもここにしかない魅力と個性で溢れています。

【ベネッセハウスミュージアム】

ベネッセの二代目経営者である福武總一郎さんが安藤忠雄さんとタッグを組んで取り組んだ最初の大きな美術館プロジェクト。ホテルと美術館、レストランが一体化していて、宿泊者は特別に夜11時まで美術品の鑑賞ができるようになっています。前衛的なアート作品が贅沢な空間に33点も展示されています。

私は夜に見学したせいか、人も殆どいなくてシーンと静まり返った空間を歩きながら、好きなだけ作品を眺めることができました。特に面白かったのは柳幸典さんの「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム1990」という作品で、壁一面に色付きの砂を使って万国旗が描かれているのですが、よく見るとその中に蟻(アリ)が巣を作るために縦横無尽に通路が出来ているのです!こういう発想はどこから生まれてくるんでしょうか…

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【地中美術館】

世界でも類を見ない直島を代表する美術館で、福武總一郎さんの出資で安藤忠雄さんが設計し、3人のアーティストの作品のみを展示しています。何と建物を殆ど全て地中に埋め込んでしまうという大胆な設計で、安藤建築の真骨頂という感じでしょうか。モネの睡蓮も圧巻ですが、ウォルター・デ・マリアの巨大な球体やジェームズ・タレルの光の視覚効果を利用した作品など、見飽きることがない充実ぶりです。

モネも睡蓮はもちろん素晴らしいのですが、私が衝撃を受けたのはウォルター・デ・マリアさんの「タイム/タイムレス/ノー・タイム」という作品で、巨大な花崗岩のピカピカの球体がひろーい階段状(祭壇状?)の真ん中に据えられています。この球体はなんとインドで採掘されたらしく、それをドイツまで運んで1ミリ以下の誤差で球体に磨いた後、この直島に到着したそうです。この球体を設置した後に美術館の屋根が作られたそうですが、製作工程ひとつとってもアーティストと建築家のスケールの大きさが伺えます。

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【リー・ユーファン(LEE UFAN)美術館】

福武總一郎さんに認められた芸術家で、安藤忠雄さんが建築を担当した美術館です。リーさんの作品のみを展示していますが、石と鉄を中心に使ったミニマルな表現は禅の精神を思わせるものがあります。

ここは屋外から展示がスタートしていて、柱の広場、照応の広場、出会いの間、小間、沈黙の間、影の間、瞑想の間と続いて行きます。個人的に気に入ったのは受付から展示室「出会いの間」をつなぐ三角形の中庭部分で、砂利の上に大きな石と鉄板がある空間が安藤さんのコンクリートの壁によって鋭利な三角形に切り取られていて、その壁の端にある扉が開いて建物に入るという演出がとても新鮮でした。(言葉では表現できないので、ぜひ実物をご覧ください)

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どの美術館も個性があってじっくり鑑賞するスタイルなので、もしできれば丸一日をこの3つの美術館巡りに充てたいところです。


屋外展示系

【宮浦港のエリア】

フェリーの発着場に3つの大きな作品があり、旅のスタートを彩ってくれます。まずは何といっても世界的アーティストである草間彌生さんが手掛けた「南瓜」という、あのドット柄の大きなかぼちゃです。実は黄色(ベネッセハウスの浜辺)と赤色(宮浦港)の2つがあるのですが、黄色い方は台風で飛ばされてしまったため今見ることができるのは赤色の方だけです。

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それ以外にも2点、直島パヴィリオンという白い網目のオブジェとBUNRAKU PUPPETという青色のオブジェが港にはあります。どちらも夜は光って幻想的な雰囲気を醸し出します。

こちらは「直島パヴィリオン」、夜は光って幻想的な雰囲気になります。

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【ベネッセアートハウスのエリア】

ベネッセハウスのある島の南側には沢山のアート作品が十数点も屋外展示されています。ベネッセハウスに宿泊する場合は朝の散歩などでゆっくり1-2時間ぐらいかけて見て回るイメージでしょうか。(大きく2箇所に分かれていて、徒歩で5分ほどの距離です)

こちらはベネッセハウスの「パーク」「ビーチ」のエリアの芝生広場にある作品群で、カラフルです。

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このモニュメントはベネッセハウスの「パーク」「ビーチ」棟からベネッセハウスミュージアムに向かう坂道の途中にあります。このモニュメント以外にも坂から浜辺に降りていくと更に4-5点あったと思います(地中美術館にあるウォルター・デ・マリアさんの作品もあるのですが、時間が足りず見れていません…)

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家プロジェクト

1997年に始まった古家の再生とアートを両立させる野心的なプロジェクトで、「本村(ほんむら)」という集落に現在6-7点の建物が存在しています。ざっと見るだけなら2時間ほどあれば徒歩で回れます。自分が特に気に入った3軒を紹介します。

【角屋】

家プロジェクトの一番最初の作品だそうで、島民から築200年の古家を買わないかと持ちかけられたのがきっかけだそうです。宮島達男さんというアーティストが手掛けたのですが、真っ暗な家の中心部に黒いプールをつくり、そこに島民達が自分の好きなスピードで設定した0から9まで表示するカウンターが沢山あり、幻想的な光景を作っています。窓にもデジタル時計が設置されて、そこから外が透けて見える仕組みなどがあり、楽しいアイディアが盛り込まれています。

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【南寺】

ここは一番驚いたプロジェクトです。飾り気のない真っ黒な建物の中は漆黒の闇の広い空間になっていて、来場者は壁伝いに中に入っていきます。その完全な暗闇に15分ほどじっと座っていると、不思議な事に目が慣れてきて展示物が見えるという仕掛けになっています。安藤忠雄さんの建築と光の芸術家ジェームス・タレル(地中美術館にも展示あり)がコラボして生み出した見事な作品です。

ちなみにここは古家の再生ではなく、元々「南寺」と呼ばれるお寺があった場所に新しく家を建てたそうです。その建物の外壁には直島で一般的な焼き杉(実物はもっと真っ黒に見える)が使われていて、安藤建築としては珍しいコンクリートではない外壁です。

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【御王神社】

ここもかなり印象的だったのですが、「神社」を再生するという難しいプロジェクトで、杉本博司というアーティストが手掛けています。御神体として何と24トンもある巨石を岡山から運んで来て、その中を手動で掘り進めて「石室」を作ったというから驚きです。また、その石室から地上にある社を神が通るガラスの階段でつなぐという設計になっており、その造形の美しさも際立っています。(写真は地上部分)

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番外編?

I♥湯

宮浦港から歩いてすぐの場所に、何とも不思議な外観の銭湯が建っています。家プロジェクトの「はいしゃ」も手掛けた大竹伸朗さんの作品ですが、実際に入浴できる芸術作品というのが面白いコンセプトです。

外観も面白いですが、中は昭和レトロでありつつも「エロス」を題材にした官能的な図柄が散りばめられており、そこには島のご老人達が元気になるようなデザインにしたいという製作者の思いが込められているそうです。

入湯料は660円ですが、タオルを持参しないと追加で320円支払う羽目になるので、タオルを持っていくのを忘れずに!(売っているタオルはオリジナルのデザインなので、記念品にはなりますが)

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番外編その2

もうひとつの再生(巨大なゴミ箱)

なぜか「なおしまエリアマップ」にも小さな字でしか書かれていないので見落としがちなのですが、本村地区から地中美術館に向かう最短コースの山道、直島ダム近くに巨大なゴミ箱がポツンと置かれています。「もうひとつの再生」という三島喜美代さんの作品だそうです。

私の写真の撮り方が下手なのでサイズ感が全く出ていませんが、高さは4-5mあるのではないでしょうか。もう少し詳しい情報が直島695さんのブログに掲載されているので、みてみてください。

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ガイドブック

新潮社から出ている「直島 瀬戸内アートの楽園(1600円)」という本を地中美術館のショップで買ったのですが、この本には直島、豊島、犬島のアートの詳細説明とアーティストのコメントが掲載されているので、とても役立ちました。

現代アートは製作者の思いや背景が分からないと理解しきれない部分も多いので、これを読んでから現地で作品を見ると一気に理解が深まり、より興味を持って鑑賞することができました。オススメです。

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