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今年をふりかえって:ダンスクラスに通い続けた感想


去年の10月くらいから中級から上級者向けのコンテンポラリーダンスクラスに通っていたのですが、昨日は今年最後のクラスに行ってきました。

この1年をふりかえると、周りの人たちがじぶんよりもずっとダンスがうまいのにそれほど劣等感に悩まされずに続けられたことが何よりもうれしかった。あらゆるレベルの生徒さんをありのままの状態で受け入れ、自分の創作ダンスを教えてくれた先生のおかげでした。そこに集まってくる生徒さんはとても気さくでフレンドリー。クラスメートのほがらかな様子を見ていると、踊ることが好き、みんなと交流することが楽しいという感じが伝わってくる。こうした雰囲気の中のなかで自分のこころとからだに向き合う機会をもらえたことに大きな感謝の気持ちがわきおこります。

しかしそうは言っても、他の人が自分より素早くコツをつかんで踊っているのを見ていると「コンテンポラリ初級者の自分にはこのクラスはちょっと上級すぎるのかな〜もうやめたほうがいいかな」という疑念のなかへ自分を突き落としてしまうことは、この一年の間になん度もありました。

クラスでは同じ振り付けのダンスを5、6週間練習するのですが、最初の3週間くらいは、もうついていくのに必死。振り付けを覚えようとしても覚えられなくて頭が真っ白になってしまう・・・ターンをした後には頭がなぜか真っ白になり次の振り付けが分からなくなる。右半身を中心にダンスシークエンスをおどったあとで、左半身を中心に、同じシークエンスを踊る段階で、どんな風に踊ったらいいのかが分からなくなって自分を見失ってしまう。・・・・そんなことのくりかえしでした。

「自分は、このダンスクラスにいて楽しんでいるとは言えないかもしれない」と思ったときは、大学で学生のためのカウンセラーを務めていたドイツ人の心理学者、シュニヤム(近所の方)が教えてくれたことを思い出すようにしていました。

「チャレンジに満ちた課題を与えられ、もう自分にはこの課題をこなすことはむりだとおもうような時こそ、人の脳は一番たくさんのことを吸収して学んでいるものなんです。なので一番苦しい時に取り組んでいる課題をあきらめないようにすることがポイントなんです・・・私の仕事は、もうダメだという学生にそこであきらめさせないように励ますことだったんです」

それでなんとかクラスに出席することのみを目標にしてクラスに通い続けていました。同じダンスシークエンスを4週間にわたって教わっていると、5週目くらいから、苦手な箇所はわからないままでありながら、ダンスのシークエンスに一応ついていけるくらいにはなっている。やっぱりうれしい。わからないまま踊りつづけた自分を「えらいな」と言って褒めて「継続は力なりと」思っていました。

ところでクラスメートのことに話が変わりますが、このクラスには、ダンスの上手いアニタ(仮名)というブロンドの青い目の女性がいます。小学生の娘をスタジオのレセプションに待たせてクラスに参加しています。人なつっこい彼女は、他のクラスメートとは誰とでもすぐに仲良くなってうれしそうにみんなとハグしたり、話したりしています。しかし、わたしにはよそよそしい。ちょっとさみしくなりましたが、クラスの中で唯一のアジア人である自分のことを思うと「あ〜あ、それも無理はないか」と思って観念するようにしていました。オーストラリアに移住してから、人は、自分と人種や文化が違う人を見ると体が反射的に引いてしまうことがあるのは仕方がないということを認めざるをえない場面に何度もそうぐうしたからです。

しかし、この1年、私と彼女は、毎週のように同じクラスに出て同じダンスを踊っていたおかげで、言葉を交わしたわけではなくても、知らないうちにだんだんとお互いの存在に慣れていったようでした。彼女とはずっと目を合わせなかったのですが、3ヶ月ほど前のある日目があったときから、彼女は他のクラスメートに向けるようなあたたかい笑顔で私の方を見てくれるようになりました。

昨日のクラスではフロアに寝転びながら踊るダンスの時、いつもと反対方向に腕と足を回すときに、またもや頭が真っ白になってわからなくなって困っていました。先生がそんな私を見て、個人指導してくれるのですが、それでもわからない。すると私の斜め前の方で踊っていたアニタが、私の方を見て、混乱を解消する考え方を教えてくれました。その説明を聞いても、体が今すぐには反応するというわけではなかったのですが、最初はあんなに私を避けていたように見えたアニタが助け舟を出してくれたことがうれしかった。アニタ、ありがとう!

クラスの終わりに、先生のトゥルーラに感謝の言葉を言いました。

「クラスにわたしを受け入れてくれてありがとうございます。このクラスは中級から上級レベル向けのクラスで、初級者の私にはちょっとついていくのが大変だったのですが、下手でも踊るのが楽しかったので毎回出席していました。」

先生:"You are most welcome in my class"-あなたは毎回かならず出席してくれるのでわたしも助かりました。ありがとう。

今年最後のダンスクラスがいい感じで終了しました。

この1年で存分に自分のやり方でダンスを探究することを許してもらえたこと、最初は馴染めなかった異文化のクラスメートとダンスを通して少しずつあゆみよって行けることがうれしかった。

この1年でダンスが特に上手くなったとは思わないけれど、自分の脳が新しい動き方に一生懸命反応し、異文化の人との刺激的な交流にドキドキハラハラしているので、自分の魂がおもしろくてうなっているのがわかる。多民族、多文化の子供たちが通うプレスクールで教える教師の端くれとしてもこのダンス教室は、良い修行の場になってくれている気がします。






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