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はんなりとぶぶ漬けと高畑充希

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テレビドラマ「いりびと 異邦人」(主演 高畑充希)

私の中で京都人に対するイメージは両極端である。

あれはいつのことだったか──また何故そこに居たのか、それすら憶えていないが、ともかく私はそのとき京都市内でバスに乗っていた。

そして、とあるバス停で降りようとした一人の若い女性とバスの運転手とのやり取りを聞くともなしに聞いていた。もちろん、会話の内容も憶えていないし、憶えていたところでそれをここで再現できるほどの文章力も持ち合わせていない。

だが、その女性のつつましく、それでいて華やかな京言葉が、ほう、これがいわゆる「はんなり」なのかと思ったことを憶えている。ただそれだけで私は彼女に恋をしてしまいそうになったのだった──。

一方、悪いイメージはよく聞く「ぶぶ漬け」噺である。京都に行って土地の人からもてなしを受け、

「そろそろ、ぶぶ漬けでもどうどす?」

と言われたら、いい加減に帰れ、というサインであるというあれだ。

あの噺が、京都人とはなんて勿体ぶった嫌味ったらしい人間なのだろう、ひいては裏のある人間だと私に思わせている。

しかしよく考えてみれば、単刀直入に「もう帰れ」と言われるよりはよっぽど良いに違いない。実際に京都人が「ぶぶ漬けでも……」と口にすることは滅多にないようだし、このドラマにもあったような「波風を立たせない」文化を象徴する例え噺として受け止めるべきなのだろう。

それは京都人にとって「先の戦争」と言ったときには太平洋戦争を指すのではなく、京都を二分して戦った応仁の乱を言うということと関係しているのかもしれない。あるいは、このドラマのもう一つのキーワード「縁を大事にする」生活の知恵のようなものとも通じているのではないか。

さて、ドラマではまず京都画壇の大家・志村照山を演じた松重豊の印象が強烈である。とりわけ最初の登場シーンが迫力で暫くの間、脳裏から離れなかった。

しかし、回を進めるうちに主人公である篁菜穂役を務めた高畑充希に魅了されていく。身重である主人公の細かい所作や目だけで主人公の感情を表現する演技力──。

ほんま、ええ女優さんどすなあ。

画像引用元 PHP研究所

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