見出し画像

『花咲家の人々』シリーズ

みなさんご機嫌よう。もーやんです。
本日は読書感想文。

オシャレな表紙に惹かれて手に取った『花咲家の人々』(村山早紀 著)シリーズ(1~3巻)をご紹介します。

作者の村山さんは、本作でも舞台となる『風早街』の物語をなんと20年以上も書き続けている方。

毎シリーズ登場人物は異なりますが、舞台となるのは『古くから不思議な出来事や言い伝えが多く残る街、風早』なのです。

。。。20年かぁ。本当に、風早という町が日本のどこかにあるのでは、と思わせるスケールの大きさですよね。

○あらすじ

風早の街に古くから住む一族には、植物と話せる不思議な力を持つ人が多く生まれました。彼ら花咲家の人々は、現代でもごく普通に生活しています。
植物園で働くお父さんと、花屋と併設されたカフェで働くお祖父ちゃんと長女の茉莉亜(まりあ)。次女のりら子は高校生。末っ子で長男の桂(けい)は小学生。
不思議な力はお祖父ちゃんが一番強く、植物を治療する姿はまるで魔法使い。茉莉亜とりら子は幼い日々から植物達と仲良しで、力を借りるのも得意です。お父さんは力が弱く、『声』を微かに感じる程。そして桂は、家族の中で1人だけ植物達の声が聞こえません。
ときどき不思議な出来事が起こるけど、風早の街でごく普通に暮らす家族。そんな家族と街の人々・植物達が織りなす、切なくとも暖かい短編集です。

※ネタバレ込みの感想注意報※

○植物達の想いに号泣

まず、この本は全巻泣きます。もれなく号泣です。

捨てられても、切られても、枯れても、植物達は人々の幸せを見守り、ことほいでいます。

『邪魔だから』という理由だけで伐採予定の桜の木。前日の夜、これまでの20年の思い出を懐かしむように最後を歌っています。決して人間を恨むのではなく、『悲しいけれど、みんなの幸せを』願っているのです。

『おかえり、楽しかった?』
『みんな喜んでいて嬉しい。メリークリスマス!』
『大丈夫よ、わたしがいるわ』
『どうか、幸せに』
『私達が、見守るわ。ずっと、ずっと』

描かれる植物達の『声』は、まるで我が子を見守るように暖かく、純粋で真っ直ぐな愛は赤ん坊のよう。
人間に聞こえることはなくとも、日々語りかけ、寄り添い、共に喜び悲しんでくれています。

人々へのひたむきな祈りは、時として奇跡を起こすほど。

ああ、そうか。
どんな時も、1人じゃないんだ。

お部屋に飾ったお花。気まぐれにかけた声は、ちゃんと届いているんだ。

もっと大切にすれば良かった。
前もらった観葉植物、枯らせちゃったなぁ。。。
お家の中で、また何か育ててみたいな。今度こそ。

読みながら、キラキラとした喜びや、じわりと広がる後悔が行ったり来たりです。

○日常に紛れ込む不思議

花咲家の人々は、個性豊か。ストーリーは主役ごとにテイストが変わります。違う本を読んでいるみたいで楽しいです。そして、読み進めると家族や植物、街の人々が近く、息遣いをリアルに感じるようになります。

不思議なことがたくさん起こりますが、とても上手く日常に紛れ込んでいます。

宇宙人が出てこなかったのが不思議なくらい、ありとあらゆる不思議要素が登場します。でも、ファンタジーやSF小説ではありません。

なぜこんな書き方ができるのかといえば、そもそもが花咲家の人々も不思議な力を持っているから。彼らは、すんなりと不思議を受け流します。「いつか、科学の力で能力について解明できるはず」と豪語するりら子ですら、生意気なくせに可愛いほど素直です。

問題や悩みを抱える人々のリアルな日常。放置児や孤独や貧困といった社会問題も扱いながら、彼らにほんの一匙の希望を見せる植物達。

やり切れない世の中でも、花は咲く。純粋で、真っ直ぐで、切ないほどの愛を人間に向けて。

○猫の小雪ちゃんナイス

燃えるアパートから、桂に救出された子猫達。他の兄弟は別の人に引き取られ、小雪ちゃんは花咲家に迎えられました。桂を『あたしの王子様』と呼び、お家の中ではぴったり一緒に過ごす小雪ちゃん。植物達と違って桂とお話はできませんが、2人(匹)は仲良しです。

そんな小雪ちゃんが大活躍した短編をご紹介。

あの、まじで怖かった(◎_◎;)
あれは、花咲家の誰も、桂自身ですら知らない彼のピンチ。

古来より、猫は家族を闇から守るもの。寝食を享受する代わりに、猫は家と家族を守ってきました。
そう、猫がいる限り悪いモノは家の中に入ってこれないのです。

そんなある日。桂が「山の中で見つけた可哀想な人形」のせいで体調を崩してしまいます。深夜、うなされる桂の周りを楽し気にスキップし、

『クレヨ、クレヨクレヨクレヨ…』と歌う人形。。。こわっ!!!

こわっ(゜_゜)

あの、「家族が欲しい」とか「お兄ちゃん」とか「ちょうだい」とかではなく、もはや「クレヨ」という一言に禍々しさと狂気を感じるです。行き着いた感。言葉選び絶妙!

とうとう、掻きむしった首は人形と同じになりそう。謎の病気の真相を突き止めた小雪ちゃん。

平然と、スタスタと人形を庭へ放って壊してしまうのです。断末魔と共に消えた呪いで、無事に桂は回復。

素早いミッションコンプリート。さすがです。桂なら躊躇しそうだもの。
のんびり毛繕いする小雪ちゃんの活躍を、家族は誰も知らないのです。へへん。

○第3巻『花咲家の旅』

花咲家シリーズの第3作目は、本編から数年が経ったお話。りら子は高校を卒業し、桂は中学生になりました。家族それぞれの成長と旅立ち、みんなの明るい未来を予感させる短編集です。

どれも好きですが、特にワクワクしてお気に入りなのは『GOOD LUCK』。右手の指3本しか動かない車いすの『先生』と、空港の植物達と桂が活躍するお話。

1巻では泣き虫でか弱い男の子だった桂が、成長しています。今までの色々な出来事が、彼を育てたのです。これからも、どんどん勇敢で心優しいアーサー王のようになるんだろうな、イケメンなお父さんにも似て。。。と将来が非常に楽しみになりました。

何か、新しいことに挑戦したくなる。読後感が最高(*'▽')

○紹介しきれません

もう、素敵なお話がたくさん。書いていない大好きなお話がもっとあります。
読むと、今まで支えてくれた人々や想いへの感謝と後悔と切なさが嵐のように巻き起こります。優しい気持ちになります。もっと優しくなりたいと思います。
至らないわたしで、ごめんなさい。ありがとう。
大切な家族に、「大切だよ」と伝えること。綺麗なお花を素直に「きれいね」と言える人になりたいです(*'ω'*)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?