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痛みの種類とアプローチ法

1)骨折に伴う痛み(疼痛)の分類

①受傷/手術による痛み

特徴:受傷/手術部位に発生する炎症性の痛みであり、ベッド上での運動療法   (ROM運動・筋力増強運動)や起居動作などの体動により痛みが増強する。痛みの発生に伴い、全身に力が入ってしまい、無意識のうちに全身の緊張を高めてしまう。

アプローチ方法:筋緊張が高いまま次の運動や動作練習を行うと、筋収縮が続くため、筋疲労しやすくなり運動が行いにくくなる。これらを回避するために、筋緊張が高い状態をいったんリセットすることが必要である。一つの運動が終わったら、深呼吸してもらう力が入っている筋(部位)を意識してもらう。軽く動かしてもらうなどのリラクゼーション(脱力)を促すと筋緊張のリセットに繋がる。

②手術による固定や運動制限に伴う痛み

特徴:ギプス固定や安静に伴い筋萎縮関節の不動により痛みが発生する。

アプローチ方法:固定された関節周囲の筋の血液循環を回復すること。正常可動域の確保を目指す。患者は受傷部に関連する筋や関節を動かされることに抵抗があることが多いため、1つ1つの運動について十分に説明し、理解してもらってから運動を開始する。最初の扱い方で印象が決まるため、柔らかくゆっくり触ることを心掛ける。

③理学療法士により作られた痛み

特徴:痛みを我慢することの繰り返しや、難しい課題を行うことによる精神的な筋緊張が高まり、末梢の血液障害が発生し、皮膚温(熱感/冷感)や皮膚色(紅潮/蒼白)の変化がみられる。また、患部周辺に不自然な発毛がみられることがある。この場合CRPS(complex regional syndrome)の予備群と捉え「痛みの悪循環」に陥る可能性があると判断する。これらの徴候がみられる場合、痛みにより筋の収縮と弛緩のコントロール不全に陥っていることが多い。回復期病院の場合、この状態から担当することが予測される。

アプローチ方法:基本方針は筋の循環改善を図り、随意的な筋の収縮・弛緩ができる状態を取り戻すことである。熱感がある場合、患部に負担をかかり過ぎていることを疑い、まず2~3日負荷を減らすように努める。熱感のある部位への刺激を極力抑えながら他の関節の運動を実施する。熱感が治まってきたら徐々に患部の運動を再開する。患部周辺の運動は痛みのない方向を探りながら、「できそうな方向」に小さい振幅で他動運動を繰り返し行う。徐々に筋緊張の緩和がみられ、可動域の拡大と痛みの軽減につながる。一般的に循環改善には自動運動が有効とされているが、他動運動でも十分に効果は得られる。




参考文献:極める大腿骨骨折の理学療法 p243~244


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