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いつかの画家の人生をなぞる



今、『楽園のカンヴァス』という本を、ゆっくりと読んでいる。
作者は原田マハさん。
簡単な内容説明としては、画家のアンリルソーにまつわる謎を解く、そんな小説である。なんとなく前から気になっていて、ようやく手に取った次第だった。



今思えば、特に親が芸術家というわけでは無いものの、世の中の家庭に比べて、我が家はやや芸術的な環境であった。
例えば、両親共に芸術が好きで、クラシックや絵画など、深くは無いのかもしれないけれど、生活の中に芸術は溶け込んでいて、会話の中によく出てくる、そんな家だ。
そんな家庭で育った私は、特に親ほどそれら芸術に詳しくなることもなく、今時の人間に成長したと思う。
けれど、会話の節々に入ってくるその芸術が心の隅にでも残っていて、この本を手に取ったような気もしている。



聞いたことはある。あの画家か。
文章内に、ポツポツと現れる絵画に関する内容に対して、そんなレベルの反応をしながら、時にはスマートフォンを手に取って検索しながら読み進める。

話のメインの一つに、毎日この文章を読め!という指示があり、その文章はアンリルソーの人生の一部を切り取ったような記述がされていて、それを読者である私も読めるのだけど、アンリルソーという画家がどのような暮らしをしていたのかが書かれていることがとても面白く感じる。

私は、人間が好きとは言えない性格だし、人付き合いも下手くそだと心底思っている。
けれど、ある人間の暮らしや人生に興味があるのか、小説ももちろん好きだが、エッセイの方に特に惹かれることが多い。
民俗学や、人文地理学も興味があって、放送大学に入ったのちには受けてみたいと思っている程度には、人間に興味があったらしい。

今回も、名前を知っているくらいのその画家が描いた絵はよくわからないけれど、その人生において、その時どんな思いで描いたのか、どんな心境の変化があって、その絵になったのか。
そんな前提条件というか、絵だけでは見えてこないものを知りたい、そんな気持ちが湧いてきた。

今までも展覧会で、壁に印刷された画家の当時の状況などから同じ考えに辿り着ける可能性はあったはずだけど、私にちょうど良かったのは、この小説を自分のペースで読んで、そして感じて思うこのタイミングだったらしい。



なんだか、その絵を描いた画家の人間性や人生が見えたら、前よりも展覧会が楽しめる気がしている。
急に、世界が広かったような感覚がした。少しオーバーだけど、そんな気がした。

調子が良く、変なところで行動力のある私は、近い未来に誰か有名な画家の半生、人生を書いた本を手に取ると思う。
そして、展覧会へ足を向ける未来も見える。
一つまたやってみたいことが増えた。忙しくなってきた。

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