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梅シロップ作りから考える、「過程の見える商品」のニーズ

 一昨年から、我が家では6月ごろに梅シロップを作っています。だいたい1か月で完成して、炭酸水で割って飲むと夏にぴったりのスッキリジュースで、夫婦ともに大好きな自家製食品です。
 この梅シロップ作りを通して、過程の見える商品のニーズを考えました。

目次
・梅シロップは加工過程の見える具合が凄い
・ネットで何でも見える化し、見えた方が価値ありの時代
・人々が「見る」過程はどんどん広がっていく

○梅シロップは加工過程の見える具合が凄い
 まず、我が家での梅シロップ作りは大きなガラス瓶に、ヘタを取った梅と氷砂糖、お酢を入れて混ぜすずしい場所に置いておきます。1日1回程度、瓶を振って中身を混ぜますが、このときガラス瓶なので中身が丸見えです。だんだんと梅が茶色くなっていき、氷砂糖が溶けた液体が琥珀色になっていく過程を、毎日確認することができます。余計なものが入っていないことも、時間をかけて自然に出来上がっていることも全て確認していますから、何の心配もなく飲むことができます。
 これは、家庭菜園の野菜にも似たようなことが言えるでしょう。毎日成長具合を確認でき、虫よけの薬剤を使う場合も何の薬剤を使っているのか確認していますから、普通のスーパーで買う野菜よりも心配なく食べられます。
 このように、「その物がどのように成長・加工の過程を経ているのか」が確認できているものは、そうでない物よりも「安心」という点で価値が上乗せされていると考えることができます。

○ネットで何でも見える化し、見えた方が価値ありの時代
 昔は、商品がどのような過程を経て私たちの手元に届くのか、抽象的なイメージとして「原材料を作るところ→集めるところ→工場→お店→私たち」といったことしかわかりませんでした。
 しかし、ネットが普及したことであらゆる時点の情報を24時間収集して整理することができるようになり、「いつ・どこで・何をされたか」を把握することが可能になりました。簡単に言うと、ネットで何でも見える化したのが現代社会です。
 この何でも見える化した現代社会では、「見えることが価値あり」というよりも「見せないことは悪意あり」と感じる人々が多くなったと思います。なので、全く同じ過程を経て出来上がった商品でも、一方は過程が見えずもう一方は過程が全て見えている場合、「安心」という価値基準においては見える方が圧倒的に高いですから、そちらの方が支持されます。
 最近、ネットを通した産地直送の商品がコロナ禍を機会により利用されるようになりました。これは、自宅まで商品を配送してくれるという便利さもありますが、「どんな人が・どんな考えで・どんな方法で作ったのか」という過程が見えることが支持の大きな要因だと思います。

○人々が「見る」過程はどんどん広がっていく
 現時点における過程の見える化は、どちらかといえば「商品を使う自分にとって安心か否か」という観点で支持され、それに対応した商品が広がってきています。
 しかし、今後は「自分自身にとって安心か否か」に関わる過程の見える化が出尽くし、次に「その商品に関わっている人々はどうか」という、商品を最終的に使う自分自身以外の人々への影響を「見る」消費者が増えていくと思います。私たちは、自分自身も大切ですが周りの人々のことも大切に考えたい欲求を持っています(周りの人々を大切にする「良い自分」になりたい欲求かもしれません)。ですから、自分自身にとって安心な過程でも、劣悪な労働環境で働く人々の手を渡ってきた過程のある商品ならば、自分がその劣悪な環境を支持していることになるので商品を買わなくなるでしょう。逆に、働く人々も楽しく快適に過ごしているという過程が分かる商品ならば、その人々を支持したいと購入する可能性は格段に上がるはずです。
 このように、人々が「見る」過程はどんどん広がっていき、商品に対する価値の基準に「良い過程を経たものか」という経歴の概念が大きな要素を占めるようになると想像しています。

 みなさんはどう思いますか。

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