役者を辞めて、数年越しに自分の出演作品を見た話

「新人紹介用の動画を作るから、
 役者の時の映像とか写真を送ってもらえる?」
「分かりました」

何の抵抗もなく、そう答えた。
役者をやっていたことが
恥ずかしいとも思ったことはなかったし、
あの時期がなかったら私はいま
どんな人間になっていたのだろうか。
(あまり想像がつかなくて、少し気になる)

昔の記憶をなんなくたどりながら
この辺りで出てくるんじゃなかったかなと
早送りボタンを押す。
「あっ」
昔の私が早送りで通り過ぎていく。
少し前に戻って再生。
そうだった、こんなシーンでこんな台詞だった。
いやあ、むちむちしている。むちむちだ。
事務所の人にも痩せた方がいいって言われてたもんなあ。
衣装も着させられてる感あるなあ。
ここの台詞、ここゆう音の方が良かったんじゃないかなあ。
この表情はどんな感情なんだろう。

正直、当時は自分の芝居を
客観的に見られてなくて
役者を辞めて数年が経ってから
ようやく客観的に見ることができた。

久しぶりに芝居のことを考えた時間。
現場へ行くことにわくわくしていた
当時の気持ちを思い出す。

衣装もメイクも背伸びしたように
見えてしまっていた私だけれど、
現場に行くその日だけは
「私、ちょっと輝いてるかも」とか思っていた。

自信過剰にはならない程に少しだけ
今はその感覚を取り戻したいなと思う。
もしかしたら不要なものかもしれないけれど、
自分を愛せる瞬間が少しでもないと
生活に追われるだけの日々を
ぼんやりと過ごしてしまう気がして
なんだかもったいない気がする。
そしてもう少し貪欲に行かなければ。


今年も残すところ、あと少し。
文章を書くことをしばらく辞めていたけれど
来年はこんな感じでたまーに更新しようかなあ。

良いお年をお迎えください。
それではまた!

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