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色の力は大きな価値。今、なぜ「白」が注目されるのか。【後半】

サステナブル素材に求められる
ストーリー性と質感

浜辺 最近の傾向を表すもう一つのキーワードとしては、“サステナビリティ”が挙げられると思います。プラスチックを減らすという観点からも、樹脂にもたくさんのサステナブル素材が出ています。
 
大澤 これまでもリサイクル樹脂とか、バイオ系植物由来の樹脂などがありましたよね。
 
浜辺 はい、さらに最近は、その素材そのものにストーリー性のあるものが好まれているように思います。
例えば農業廃棄物由来のバイオ樹脂TEXa®は、米の籾殻など、本来は破棄される部分を再利用して樹脂に混ぜ込んだ素材です。そこには今、東南アジアの国で農業廃棄物の不法投棄が問題になっているという背景があり、その廃棄物を樹脂の原料として利用することで、不法投棄が減り、街がきれいになり、使用する石油の量も減らすことができる。さらにこれまでにない質感を持っている。そういうストーリー性と質感の新しさというところで選ばれるように思います。
 
大澤 単なるエコ素材やリサイクルというだけではない、次のフェーズに入ったということでしょう。
今回の『白の標本』Vol.1の中にも、NAGORI®というサステナブル素材が入っていますね。海水から抽出したミネラル成分から生まれた樹脂だと聞いています。
 
浜辺 はい。だからNAGORI®を使われるデザイナーさんの中には、例えば海からイメージしてデザインを考えられたり、有機的な要素を加えてみたりなど、素材の背景も踏まえて発想される方もいらっしゃいます。
 
大澤 手に持った感じもとてもいいですね。ほどよい重みと、ちょっと冷たさを感じるような触感があります。
 
浜辺 そうなんです。NAGORI®は熱伝導性を持っている素材なので、手に持ったときに陶器のような冷たさや温かさを感じます。
今回の『白の標本』vol.1には、その“海”という背景から、自然の美しさ、過去から未来へとつながる悠久の時などをイメージし、マーブル調に着色したサンプルを入れています。
大澤 たしかに、大理石って高級感もありますし、この素材の質感に有機的なムラ感がとても合っていますね。
 
浜辺 NAGORI®の持つ質感と色のムラ感を活かした製品例として、Panasonicのシェーバー「ラムダッシュ・パームイン」があります。
シェーバーって毎日使うモノなので、使っているうちに手あかなどの汚れがついたり、キズがついたりしてしまいます。そこをムラ感のある着色によって、汚れやキズもデザインの一部となって、長く楽しんでもらえる。さらに自分だけのものとして愛着がわくということも、コンセプトの一つなんです。
 
大澤 これまでものづくり側の人たちは、「いかに均一にするか」ということをめざして技術を発展させてきたのですが、今はむしろ色のムラ感など「均一ではない」ことが大きなトレンドになっているんですよね。そしてその製品をどのように使ってもらいたいか、さらに言うと、どんな未来をつくっていきたいかというところまで考えてデザインされているということだと思います。今の時代の視点を取り入れた素敵な商品ですね。

トレンドカラーはタブーを超える!

大澤 時代性というところでいうと、バブル期の80代初期に、冷蔵庫や洗濯機など家電製品に黒のラインナップが登場しました。
ちょうどヨウジヤマモトやコム・デ・ギャルソンの川久保玲などがパリコレに黒を基調とした新作を発表し、注目が集まったことが大きなきっかけです。

浜辺 そうなんですね。ファッションのトレンドが、インテリアや家電にも影響を与えるなんて、すごいですね。
 
大澤 当時は全身を黒でまとめたファッションが一世風靡して、“カラス族”なんて言われ方までしていました。家電も、例えば冷蔵庫や洗濯機などは“白物家電”と言われるように清潔感が大前提で、それ以外の色はタブーとされていたんです。そこに黒が登場したのは大きな変化でした。トレンドカラーはタブーを超えるんです。
 
浜辺 色の力って大きな価値になるということですね!
 
大澤 その通りです。逆に2000年代に入ると、それまでは黒いものが多かったデジカメや携帯電話などに、白のラインナップが加えられたんです。主に女性向けの、軽やかでかわいらしい色として登場しました。
今はジェンダーに関する意識も変わってきて、性別にとらわれない色の選び方が主流になってきていますね。
 
浜辺 はい。そう考えると、白って男性も女性も、さらには多様なジェンダーの人たちにとっても、手に取りやすい色だと思います。
“ニュートラル”という意味でも、今の時代に求められている色だと言えますよね。
 
大澤 時代とともに価値観も変化し、求められる色も変わっていきます。そんな中で白は、これから大きな役割を果たしていくと思います。
 
浜辺 『白の標本』にますます期待が高まってきます。本日はどうもありがとうございました。
 

「白に特化した、プラスチックの色見本帳」発売開始。
この度、JAFCAとOK-KASEIは、樹脂素材による白のリアルなCMF見本「白の標本」を発表します。
[ 内 容 ] vol.1  MATERIAL 基準となる白1色と12種類の樹脂で24の質感を展開します。
[ 価 格 ] 各vol 60,500円(税込み)+送料
[ サイズ ] パッケージ:約W366㎜× D250㎜× H63㎜
カプセル:W50㎜× D50㎜× H30㎜
以上を予約、限定販売いたします。第一弾は、4月予約締切、6月以降に順次お届けします。
お申込みは、https://jafca.org/onlinestore/shironohyohon-vol-1-material/

取材日時:2024年2月1日(木) 
取材場所:オーケー化成株式会社 本社ショールーム
取材・文: 岩村 彩 (株)ランデザイン
撮影:江口 海里 (株)江口海里スタジオ

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