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ブイヤベース

熊、ぼくが卵を茹でているうちにぼくを盗んでゆく夜の熊

今、ぼくはきみの部屋へ来ている。ブイヤベースの起源は、紀元前600年頃に古代ギリシアのポカイア人が開いたマルセイユの街まで遡る。元来、ギリシアで「カカビア」と呼ばれていたシンプルな魚のシチューのことである。ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-92)によれば、ローマ神話には、ヴィーナスが夫のヴァルカンにこのスープを飲ませ眠らせておいて、恋人マルスとの逢瀬を楽しんだというエピソードが残されているという。本当ならば、なんと罪作りなスープであることか!と、ここまで一気に話し終わると、きみはもう煮えたかなとレンジにかけたダッチオーブンを開く。フランスなんだかドイツなんだかとぼくは笑ってきみを見ている。



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