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全てのビジネスは「再現性と個別性のはざま」にある

今日はビジネス系の思考整理メモです。

ビジネスはよく「再現性」が大事と言われます。つまり個別のニーズにカスタマイズしすぎずに、なるべく「型」にすることで多くの市場にリーチできるということです。その反対の方向を目指すことを「個別性」と呼ぶことができるでしょう。

私がいるようなコンサルティング業界に限らず、メーカーでも量産品と特注品がありますし、小売業などでも大規模チェーン店と地域密着の三河屋さんのようなお店はこの対比で説明が出来ます。つまり多くのビジネスはこの2軸でなんらか説明することができるのではないかと思います。

再現性と個別性はどちらが良いのか

「再現性の高いビジネスモデル」では、サービスとオペレーションをできる限り「型化」し、カスタマイズを封じます。それによりサービス品質が安定しやすくなる。また、量を追うことでより広いマーケットにリーチできるために、組織も規模化しやすい。投資魅力も高くなり資金調達もしやすくなります。

反対に、全てのニーズを拾えなくなるので、時に「融通が利かない」という顧客からの不満と隣り合わせです。そして市場の最大公約数であるスイートスポットを見つけるまではキャッシュを減らし続けるので軌道に乗るのに時間がかかります。また、職人的な仕事をしたい人にとっては、再現性を重視する仕事は「型に当てはめる仕事」と感じられることがあります。その結果、そうした人材が会社を去っていくということもあります。

反対に「個別性の高いビジネス」は個々のニーズに寄り添うので、目の前の顧客から満足を得られて自己効力感を得やすく、また、早期にビジネスが立ち上がる。仕組みやシステムへの投資もいらないため、キャッシュを回し続けることはスケールビジネスに比べて難しくないでしょう。

一方で、個々のニーズを満たす旅は永遠に終わらないので「自転車操業」が続いたり、経営トップ含むエース社員が疲弊するモデルになりやすいという弱点があります。このモデルが規模化することは簡単ではなく、投資がつくことも稀だと思います。再現性を持たせようともしますが、経営者自身が自分の時間を切り売りしていることが多いので、再現性を作る時間が無いという無限ループに陥りがちなのもこのモデルです。

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どちらが良いということを特に言うつもりは無いのですが、一般的なビジネスの価値としては「再現性がある方が良い」と見なされることの方が多いのではないでしょうか。

「どちらか」ではなくて「グラデーション」

ですが、今日ここでメモしておきたいのは、再現性と個別性はゼロかイチかではなく「グラデーション」であるということです。

つまり、全てのビジネスは、この両軸のどこかに位置するのであって、二元論ではないのです。グラデーションの中で、自社の経営思想や経営資源、そして市場環境を踏まえて「どこにポジションを置くか」を考えるということが大事です。

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コンサルティング業界も規模化した大手ファームもいれば、個人事業主の個人コンサルもいますが、その間に「ブティックファーム」と呼ばれるような中間の存在もします。両者の中間に位置することで「融通が利かない」「疲弊する」という両方の罠を回避するような戦略を取ることが出来ます。

また、一社の中で複数のポートフォリオを持つというのも一般的でしょう。カスタマイズした高価格帯の商品サービス群と、汎用化された量産品の商品サービス群をの両方を持つ。恐らく後者の方が利益率は高くなるはずですが、両方のラインナップを持つことで最初に挙げたようなジレンマを吸収することを目指します。

そして、一度決めたポジションがずっと同じとは限らないというのも重要です。汎用化で成功して来たが徐々に顧客ニーズが変化しているので、一度「個別性の方に振って新しいニーズを満たしながら自社の保有能力をアップデートする」という戦い方もあります。その際にはこれまで培ってきた強みを一旦捨て去る勇気が必要でしょう。

ということで、当たり前のようなことをつらつら書いてしまいましたが、市場環境が大きく変わっている現代のような時代ほど、「当社はどのポジションに事業を持つのか」「それをどう社内で組み合わせるのか」の思考投入と、意志決めが大事になるんじゃないかと思う今日この頃です。

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