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個人事業主向けクラウド会計、もともとIntuit日本法人だった「弥生」が市場シェア56.7%で5年連続No.1

調査会社のMM総研が「クラウド会計ソフトの利用状況調査」を実施し、事業者別シェアで「弥生」が5年連続No.1を獲得しました。

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単一回答による調査結果では、2020年の市場シェアは弥生が56.7%(前年比▲0.3pt)でダントツ1位、freeeが21.1%(+2.9pt)で2位、マネーフォワードが16.8%(▲3.7pt)で3位となりました。

IPO効果もあってか今年はfreeeが4年ぶりにマネーフォワードを逆転。しかし、弥生が市場の6割を握っていることに変わりはなく、背中はまだまだ遠いです。

以前に中国の生鮮EC「Dingdong Maicai」が資金調達した際に言及した「631局面」、つまり、市場シェアが固定化するフェーズに入っているとも見て取れます。

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個人事業主の会計ソフト市場はようやくクラウド比率が20%を突破しました。

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freee 2020年6月期 第3四半期 決算説明資料

freeeのIR資料によると、日本の中小企業におけるクラウド会計浸透率は未だ14%程度。アメリカやオーストラリア等では50%を超えていることを考えると、市場ポテンシャルが非常に大きいことが伺えます。

ちなみに「弥生」がどういう会社なのかというと、現在はオリックスグループの子会社子会社として運営されています。ただ、もともとはクラウド会計比率52.5%を誇るアメリカで市場シェア最大を誇る「Intuit」の日本法人が源流にあります。

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弥生 沿革

1978年に日本オールシステムズが設立され、1987年に弥生シリーズを販売開始。日本では3月決算の企業が多く、会計ソフトが活躍する時期が3月であることから「弥生」と名付けられたと言われています。

その後、アメリカで「Quicken」が大ヒットしたIntuitが日本オールシステムズとミルキーウェイを買収・統合してIntuit日本法人を設立しました。1999年に『大番頭』と『弥生会計』をブランド統合して『弥生Pro』をリリースします。2002年には代表的プロダクト「やよいの青色申告」を発売し、会計ソフト市場で高いシェアを獲得します。

ところが、2003年にMBOが成立し、Intuitから独立して「弥生」株式会社に生まれ変わりました。さらにに翌年、堀江貴文氏率いるライブドアが230億円で買収。堀江貴文氏の逮捕などゴタゴタを経て2007年にはMBKパートナーズに710億円で売却されます。そして2014年、現在の親会社であるオリックスグループに800億円で買収されました。

オリックスグループの一員となってから弥生はクラウド転換を加速しており、2014年に「白色申告」「青色申告」のオンライン版を、翌2015年にSaaSプロダクト「弥生会計 オンライン」をローンチしました。

さらに、2016年には請求書管理SaaS「Misoca」を約10億円で買収。2017年時点で登録事業者数が20万を突破しています。

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2020年3月には弥生シリーズ登録ユーザー数が200万に到達しました。有償会員の継続率は90%近いとも言われています

なお、freeeの有料課金ユーザー企業数は20.5万社ほど。マネーフォワードは開示していませんが、MF Businessの四半期ストック売上が14.1億円なので年間ランレート60億円弱、ARPU6万1,558円。freeeのARRが70.6億円でARPUが3万4,402円と低めなので、マネーフォワードの顧客数はfreeeよりも少ないと思われます。

いずれにせよ、弥生のユーザー数が圧倒的であることに変わりはありません。

2020年11月期_第1四半期決算説明資料

マネーフォワード 2020年11月期 第1四半期決算説明資料

日本に個人事業主は約450万人も存在し、依然として成長余地は大きいといえます。

ここで各社の株価もチェックしておきます。

オリックス_株価_-_Google_検索

freee_株価_-_Google_検索

マネーフォワード_株価_-_Google_検索

各社の時価総額は、

オリックス1.89兆円
freee2,560億円
マネーフォワード1,647億円

freeeとマネーフォワードがここ2ヶ月くらいでグイっと上昇し、上場来高値を更新しています。

そして最後に、Intuit。

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ここ5年で株価は2.5倍となり、時価総額は744億ドルに。日本円で8兆円に到達しそうな勢いです。

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Intuit's Investor Day 2019

Adobeと並んでIT企業のSaaSシフト成功例に挙げられるIntuit。今年に入ってフィンテック・ユニコーン「Credit Karma」を71億ドルで買収し、信用情報サービスにも進出しています。

日本でもLINEを筆頭に信用スコア情報の運用が始まりつつあり、金融サービスへの活用を目指したサービス拡大も着々と推し進めています。弥生も本家Intuitと似たような事業展開をスピーディーに実行できると日本のフィンテック業界もさらに盛り上がりそうだなあと感じました。

本家Intuitと同じくSaaSシフトに成功しつつある弥生ですが、freeeとマネーフォワードの猛烈な追い上げによって日本の会計ソフト市場に変化が起きるのか注視していきたいなという次第です。

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