見出し画像

中国のクラウドベンダー3位「Kingsoft Cloud」がNASDAQ上場へ。F-1を軽く覗いてみる

昨今の情勢でIPOマーケットがすっかり冷え込んでしまっていますが、久しぶりに気になる企業の上場申請書類が公開されていたのでチェックしたいと思います。

Kingsoft Cloud概要

今回、NASDAQに上場申請したのが、中国のクラウドベンダー「Kingsoft Cloud」です。

Twitter横幅1枚.003

MS Officeの廉価版を開発したりしている「Kingsoft」社のクラウド事業として始まり、2012年に「Kingsoft Cloud」としてスピンオフしました。

画像2

Xiaomiからも出資を受けていて、保有比率は15.8%ほど。Xiaomi創業者の雷軍はもともとKingsoftで働いて、現在はKingsoftの会長を勤めています。知らなかった。

画像3

Kingsoftのメイン事業はAWSやAlibaba Cloudと同様で、サーバーやストレージ等を提供する「IaaS」を提供しています。ゲームや動画サービスEC向けのソリューションもあるようです。

事業セグメントとしては、一般ユーザーでも手軽に利用開始できる「Public cloud Services」と、大規模企業・サービス向け「Enterprise cloud services」の大きく2つです。Enterprise向けではブロックチェーン基盤も提供しています。

画像4

データセンターはこんな感じで中国各地にあります。CDNノード数は73,000以上を保有しているとのこと。

Kingsoft Cloudの業績

画像5

業績を見てみると、2019年の売上は39.6億元(約600億円)。対前年の成長率は+78.4%と急成長を遂げています。

売上の約9割はPublic cloudですが、Enterprise cloudの売上が2年で30倍以上に爆増しています。売上構成比が12.2%に上昇していて、成長エンジンになっています。

Kingsoft CloudのKPI

画像6

KPIもチェックすると、顧客数は243社(+58%)で、顧客単価も右肩上がりです。主要顧客としてTiktokで有名な「ByteDance」や「Bilibili」、中国建設銀行などが紹介されています。パブリッククラウドのNRR(Net dollar retention rate)155%と、既存顧客からのアップセルがとても大きい。Enterpriseの顧客数は前年の4倍に拡大していて絶好調です。

市場環境〜現時点で中国のパブリッククラウド市場は日本よりちょっと大きいくらい〜

最後に市場環境を確認してみると、意外な事実を知りました。

画像7

2019年時点で中国のパブリッククラウド市場規模は814億元で、日本円にすると1.2兆円ほどです。

IDCによると、2019年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は前年比+22.9%増の8,778億円。現時点では中国の市場規模は日本よりちょっと大きい程度なんですね。

グラフを見ると分かる通り、中国のクラウド市場は爆発的に伸びると予想されています。2024年には現在の4.5倍となる3,681億元(約5.5兆円)まで拡大する見込み。Alibaba、Tencentという2大プレーヤーが立ちはだかりますが、市場のアップサイドを考えれば今後の見通しは明るそうです。

参考:
https://www.scmp.com/business/companies/article/3046081/chinese-firm-kingsofts-cloud-unit-hopes-blockchain-business-will

https://equalocean.com/software/20191205-kingsoft-cloud-raisesusd-50-million-in-series-d

https://pandaily.com/kingsoft-to-spin-off-kingsoft-cloud-with-hopes-for-another-ipo/

http://tamakino.hatenablog.com/entry/2020/01/10/080000

https://jp.wsj.com/articles/SB10913733382003054274504581035410420884634

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?