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介護職が世界で活躍する道

レスキューヘルパーの活動がきっかけで、介護指導の依頼が入りました。

在宅介護を行っているご家庭に訪問して、住み込みで働いているメイドさんやドライバーに介護のやり方を教えてほしいとのいうのがその内容です。

なるほど、世界に出るとこうゆう依頼があるのかという新鮮な驚きと、気づきがありました。

裕福な家庭であれば、たいてい住み込みや通いのメイドさん、そしてドライバーがいます。彼らは主(あるじ)であるその家族と共に生活をしています。一緒にいる時間が、長ければ長いほど、その家庭生活の隅々を理解していきます。

例えば、毎日のルーティン、好きな食べ物、行きつけのお店、家族内の人間関係などなど、外側からはなかなか見えない部分を内側から見ています。家族ではないけれども、家族に近い存在と言えます。

さて、介護は、別の言葉で表現すると「日常生活支援」です。加齢や障害によって日常生活に支障が出ている部分を補うのが、介護の仕事です。その意味で、その家庭の日常生活を十分に理解している、メイドさんやドライバーは、介護要員としてはうってつけの存在です。

介護を受ける方としても、まったく見知らぬ人を自宅に招き入れて、日常生活の細かいことを教えるのは手間が掛かります。介護や看護のプロであったとしても、その手間は同じです。

実際、私がヘルパーの仕事をしていて最も難しかったのは、入浴や排泄に代表される「身体介護」ではなく、その人の日常生活を理解し、その人の趣味趣向に合わせて、時間を共有することでした。

何も用事がなければ、空気のように待機をし、手助けが必要になった時だけ、すっと手を差し出す。この塩梅が非常に難しい。ただ待機しているだけだと、「何もしないでさぼっている」と文句を言われるし、やたらめったら手助けをしていると「煩わしい」と怒られます。

なので、我がままで気難しい利用者さんの担当になると、最初の3カ月くらいは何をしても、しなくても、文句を言われ怒られます。そこには、他人の手を借りなければならないという現実に対しての憤りもあるでしょう。

その難しい期間を乗り越えて、その人の日常生活をじっと眺めていると、どこで手助けをして、どこで待機すべきなのかが、徐々に見えてきます。阿吽の呼吸でその人の日常生活支援が出来るようになると、それが「信頼」に変わります。

利用者さんからの信頼を得るまでには時間がかかります。絶対的にその人との時間を共有しなければならないからです。一方で、介護技術というのは、普遍的なものですから、学べば誰でも上手になります。

その家の日常生活を理解し、被介護者からの信頼を得るのと、介護技術を学ぶのとを天秤にかけた時、圧倒的に前者の方が難易度が高く、後者の方が容易です。

であるならば、お抱えのメイドさんやドライバーを持つ富裕層が、彼ら彼女らに介護技術を指導してほしいという要望は、なんら不思議なことではなく、むしろ今後大いに需要が生まれる可能性があります。

私は、日本人介護士や日本で介護を学んだ外国人ケアワーカーが、世界に出て活躍する道を模索しています。

今までは、世界中にあまたある高級有料老人ホームのマネージャーが、その道の先にあるキャリアかと思っていました。しかし、介護現場のプロフェショナル(介護職人)と、自分と文化が異なる外国人を束ねてチームを作る、異文化マネジメントとは、別の専門性であり、あまりしっくりきていませんでした。

むしろ、介護職人が世界で活躍する道は、施設ではなく在宅にあるのではないでしょうか。私は、世界に出たスーパーヘルパーとして、その可能性を調査したいと思います。


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