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平和の基礎は「正義」

「global middle east」シリーズ(No.001)

 同時多発テロ事件(2001.9.11)が起きたその日から、私は大変忙しくなりました。これは出張先で考えたことをメールマガジンとして送った記事です。その時、私は「正義」とは何だと考えたのでしょうか。その後、世界と日本のマスメディアでは、イスラム教徒の言い分、欧米の偏見、といった議論が盛んに行われるようになりました。

 それから20年。世界は益々情報でつながり、異なる国、異なる民族に属する人々の意識や価値観が近づいてきています。世界的にひとつの人道的価値が生れつつあるように思います。戦争は正義と正義のぶつかり合いと定義されるものかも知れませんが、人道上の不正義はより顕著に語られるようになりました。不正義を行う為政者は報道管制を敷きますが、SNSの発達により、それを隠蔽することが困難になってきています。今、米国を発信源とする「反差別」のうねりがありますが、その一例でしょう。「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ大統領の政策に正義がないことは明らかです。

 米国のSNS各社は、大統領の発言に規制をかけようとしています。普遍的な正義(=反差別)が世界を動かしています。
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グ ロ ー バ ル ・ ミ ド ル ・ イ ー ス ト(特別編集:No.14 / 2001.10.08)
みなさん、こんばんは。この号は、域内出張先からの特別編集につき、短めです。ご了承下さい。
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平和の基礎は正義

 祖父が死んだ翌年の初盆、建具職人の父は精霊流しに使う立派な模型のはしけ舟を器用に作り、船尾に「西方丸」と書き込んだ。「なぜ西方丸なのか?」と尋ねた小学生の私に、父は「インドの向こうに極楽があるんだ。おじいさんが無事に極楽に着けるようにこう書くんだよ。おまえも(仏さんに)拝みなさい。」と父。

 そのとき想像もしなかったが、私がインドの更に西の人々とお付き合いをするようになって20年が過ぎた。偶然にも、米国がこの地域にここ10年間で何度目になるか、3たび、いや4たびミサイルを撃ち込もうという時にこの地域をうろついている。

 久しぶりにこの地域に戻り、また、今回初めてペルシャの地を旅し、つくづく思うことがある。それは、人はどの地域に住んでいようと、富んでいようと貧しかろうと、信心者であろうと、遊び呆けていようと、みんな平和に暮らしたいと思っている。家族とのだんらんが何より大切だと思っている。人を愛し、日々の生活が苦しくても、人それぞれ、日々計画と希望を持って暮らしている。しかし、テロリズムと呼ばれる無差別殺人や、一般犯罪、天災・事故によっても、そんなささやかな幸せは突然に引き裂かれる。

 NYの貿易センターで被災した方々には、その英霊の数だけの不幸とご遺族の悲しみがある。同様に、パレスチナで銃殺された子供、栄養失調で死んでいったイラクの子供、イラクの化学兵器に虐殺されたイラン・ハラプシャ村の人たち、アフガニスタンの被爆者、避難民についても、その数だけの悲劇がある。イランに越境避難している難民は7百万人を越えるという。

 自由社会というのは、ある一握りの人々の幸せのためだけにあるのだろうか。ならば空爆も是としよう。

 ビンラーデンのメッセージは、決して狂信者のたわごとではない。
 例え米軍がビンラーデンの処刑に成功したとしても、そして、一味残党全部を殲滅しても、世にテロリズムの根は無くならない。しかし、ビンラーデンが指摘するように、米国が中東和平問題について公正な立場をとり、湾岸諸国から不必要に拡大したプレセンスを減じるならば、テロの脅威は大きく後退し、米国国民も世界で商売に、観光にと、ドルの威力を見せつけて表通りを闊歩できることだろう。このまま何時まで、在外米国人は自宅待機をするつもりなのだろうか。

 10月4日付イランデイリーのコラムに深く共感する一節があった。
「世界が(9月11日の)悲劇を世界平和の新たな始まりに変えていくだけの賢さと、人道的価値と勇気を持っていると期待したい。もし、世界が本当の平和を望むなら、世界は先ず本当の正義を確立するために努力しなければならない。近年多くのケースが明らかにしてきたように、正義が欠けている限り、平和と安全は守れない時代が来たのだ。」(翻訳:小職)

「global middle east」シリーズ
 小職はメールマガジン、後にブログとして業務上考えたことを、このタイトルで発信していました。還暦を迎えましたので、自己紹介がてら、今日的になお価値があると思われる記事をここにコメント付きで再掲載しようと思います。旧記事は原則そのままに、最低限の誤字脱字、言い回しの改善を行いました。

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