右手部分_左からA_B_C_D_

ジャバラのまどVol.11 2つで充分?! ベースボタンの話

数年前からダイアトニックアコーディオンにハマってしまい、入手しては「なるほど~!こうなってるのか!」などとやっていたら、気が付けばその手の楽器が7個も集まってしまいました。そしてよく見たら、そのうちの4種類にはベースボタンが2個しか無かったのです。
アコーディオンのベースと言えば、ご存じの通り120個が主流。もっと少なめ、あるいはもっと多い楽器をお持ちの方もいると思いますが、さすがに2個というのは理解の範疇を超えますよね。ここでいうベースボタン2個とは、ベースとコードのボタンが1個ずつ。コードの種類が蛇腹の押し引きで変わる2つだけということです。
まあ、そんな世界もある、ということで今回は私の手持ちの楽器をご紹介します。トップの写真の左から順番に説明しますね。

ケイジャンアコーディオン

トップの写真一番左はアメリカのケイジャンアコーディオン。その名の通りケイジャン音楽のための楽器です。その左手ボタン部が上の写真。
下がベース、上はコードで、蛇腹を押したときにはC、引いたときにはGの音が出ます。右手側ボタンはハーモニカのように、蛇腹を押すと「ドミソ」引くと「レファラシ」が鳴る。これが左手ボタンの音におおむね調和するようにできています。「ファ」と「ラ」だけちょっと合わないのですが、そこは風味と言えましょう。下の動画は演奏例↓

オルガネット

左から2番目はイタリアのオルガネット。ナポリの周辺で、主にタランテラというジャンルの演奏に使われるニッチな楽器。左ボタンの上下の仕組みはケイジャンアコと同じですが、右手側ボタンは1カ所だけ2列になっていて、押し引きどちらでも「ドレミファソラシ」が出るように工夫されており、ケイジャンアコに比べると演奏の自由度がグンとアップ。ただ、押し引きで右手の運指は逆転します。
下は演奏例。

サラトフスカヤ・ガルモーニ

右から2番目はロシア・サラトフ地方のガルモーニ。ベースボタンは一見3つ。上と下のボタンは、キーは違うもののと同じ仕組み(押し引きで5度違い)。加えて、真ん中のボタンでは上のボタンのオクターブ上の和音が出るようになっているんですね。組み合わせて使うことによって響きに華やかさが増します。さらにベースボタンに連動して鳴るベルが付いていて、小さいのになかなか主張の強い楽器。

タリヤンカ

一番右はこれもロシアからタリヤンカ。左手ボタンの上下は押し引き異音(押しがD、引きがG)ですが、右手側は押し引き同音という変わった楽器。上下のボタンの間のボタンはなぜか押し引き同音で、オクターブ上のDのベース音が出ます。ロシアといってもタタールスタンというテュルク系の国の楽器なので、何かローカルな音楽的事情があるのかもしれません。
下の動画は演奏例。ちょっと左ボタンが私の持っているタイプと違うみたいですが、左が押し引き異音、右手が押し引き同音というこの楽器の特徴がよく分かる演奏です。

それぞれに音数は少ないながら、派手に聞こえるような仕掛けがあったり、弾きやすくするため工夫があったりで、楽器とはこうして変化していくのだなあとアコーディオンの歴史の一端を垣間見る思い。弾きにくそうに見えますが、その土地の土着の音楽を弾くのはビックリするほどラクなんですよ。
しかし、こうしてあらためて整理してみたら、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア(のスラブ系とテュルク系)・・・と地域がバラバラ。ということは2コードで楽しめる音楽が、世界にはたくさんあるということでしょう。そう考えると、なんだか目の前がパーッと開けるような気がしませんか?
(私だけ?)



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