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売れない地下アイドル現場に行く前に、一杯の酒を飲め

お酒を提供しているから、ライブ会場は厳密に言うと飲食店らしい。

例に漏れず、私も推しの売れない地下アイドルライブ後に、ドリンクチケットでアルコールを召喚している。

この記事を読んでくれている地下アイドルオタクは、ドリンクを「前」と「後」どちらに飲むのだろうか。

私はライブ「前」に飲む時もあれば、ライブ「後」に飲む時もある。

本音は毎回ライブ「後」に飲みたい。
なぜなら始まる前にコップをもらって、推しの公演時間になっても飲みきれなかった場合、コップの中身が溢れることを懸念して動きが制限されるからだ。

ビールがなみなみと注がれたコップを左手に持ち、右手でペンライトを天高くかざす。

気持ちの半分はもちろんステージ上の推しに。
ただし、気持ちのもう半分は、残念ながらコップの淵に向いている。

そんな中途半端な気持ちで推しに会いたくない。
推しに会いに来たからには、全身全霊をかけてケチャを打ちたい。

だから本来はライブ「後」に、「今日も推しが世界一可愛かった…最高の時間だった…」としみじみしながら、ほろよいでチェキ物販を待つ流れが理想だ。


ただ、どうしても「前」にアルコールを召喚しなければならない時がある。
ライブ会場に向かう道中「後で飲もう」と決めていたにもかかわらず、だ。


それは、ライブ会場の扉を開けた瞬間に決まる。

入場料を払い、防音扉を開ける…
「今日は売れていますように…」と願いながら、扉を開ける…

目の前に人が10人以上いれば「ああよかった。後で飲める」と安堵する。

一方で、大の字に寝そべり転がり回っても誰にもぶつからないスペースがあれば、そのまま防音扉を閉める。
そしてUターンしてドリンクカウンターに向かう。

一応メニューを一瞥しつつ「ビールお願いします」と一言。

受け取り、後ろを向き、一気に喉に注ぎ入れ、数秒前にコップを差し出してくれた店員さんにコップをお返しし、その足で再度、防音扉へと向かう。

するとアルコールが回り始め、さっきまでの緊張が嘘のように、「よっしゃあああああ盛り上げるぞおおおおおお」とスイッチが入る。

気が付けばスルスルと最前へ赴き、全身全霊で推しを応援し、推しとチェキを撮る。

「今日のパフォーマンスのここが素敵だった」
「今日も会いにきてよかった、ありがとう」
「今日も世界一可愛い」


限られた秒数でいつも以上に饒舌に語り、「また来るね」を合言葉にライブ会場を後にする。

そして、帰路に着くたびに、こう思うのである。

「一気飲みして気持ち悪い」

ストップ、お酒の一気飲み。


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