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占い師が観た膝枕 2 〜妄想膝枕編〜

※こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】のストーリーから生まれた二次創作ストーリーです。
◆占い師が観た膝枕season1はこちら💁‍♀️◆

とうとう、とうとう。
禁断の扉を開けてしまいました😱

前々から構想は練っていたのですが、発表する勇気が無く。

でも、今井先生に許可をいただき(ここが一番ドキドキした。笑)無事、公開となりました😆

最初、ラストは占い師が歌った後にお茶を濁して終わる形だったのですが、今井先生に見ていただいた時に
「他の作家にとっては韻が邪魔だけど、占い師には書く材料を与えた、というオチにすると、よりサトジュンさんぽいかも」
とアドバイスをいただき、このオチに変更しました!(今井先生、ありがとうございます✨)

あー、緊張した❗️

こちらは、今井雅子作「修羅場をラップに─単身渡米ラッパーと妻と膝枕と女」と、占い師が観た膝枕2〜リニューアルオープン編〜を読んでからお読みいただくと、更にお楽しみいただけます✨

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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️

できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)

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サトウ純子 作「占い師が観た膝枕 2 〜妄想膝枕編〜」


今日はやけに風が強い。

シトシト降る雨も味わいがあるが、強引に吹く風も占い師は好きだ。

強い風は、電車を止めたり、スプレーで固めた髪型を乱したり、スカートの裾をめくったり。前もって整えた人間の予定を狂わせる。
そういう時こそ、人間の本性が見えるのだ。

そして、その影響を受けた女性が今、占い師の目の前に座っている。

グレーのパンツスーツ姿で背筋を伸ばして座っているメガネの女性。リケジョだ。

この強風で髪が煽られたのであろう、横髪なのか、後ろ髪なのか。わからない髪がメガネを覆って視界を悪くしている。

その横で静かに座っている女の膝から下しかない、オモチャのようなもの。
占い師は、それが「膝枕」だということを知っていた。

ただ、煉瓦色のタイツにチェック柄のスカート姿は、初めて見る仕様だ。

「ヒサコさんに頼まれまして、私が代わりに連れてきました…というか、なぜか私から離れてくれなくて」

リケジョはおもむろにメガネを外すと、はぁーっと息を吹きかけ、軽くハンカチでレンズを拭った。見にくいのはメガネのせいだと思ったようだ。

「あの…前髪。見辛くないですか?」

たまらず占い師が問いかけると、リケジョは突然、声を上擦らせて

「あの、あのですね。実は、実は。先ほど、久しぶりに宅配の方とすれ違いまして。『あれ?髪切ったんだ!似合ってるね!』って…」

両手で覆った顔を、ブンブンと左右に振っている。横で膝枕が膝頭でリケジョの脇腹をチョンチョンと軽く小突く。

思わず、占い師の口から「あー」という言葉が漏れた。

涼しい風と共に、入り口から若い女性の笑い声が聞こえてくる。
占い希望のお客さまが入って来たようだ。
受付の女性が流れるようなリズムで対応をしている。

リケジョが化粧室に行っている間、占い師はぼんやりと天井の右隅の方を眺めながら「そうか。髪を切ったのか…」と呟いた。

次の瞬間、肌の色より明るいトーンのファンデーションで真っ白になった顔。真っ青な瞼。クレヨンのようなピンクの口。海苔を貼ったような眉毛の姿が脳裏に浮かび、思わず口元が緩む。

「すみません。勝手にお邪魔して」

いつの間にか膝をにじらせて受付の方に行っていた膝枕を、リケジョが連れ戻してきた。

膝枕は膝に黄色い冊子を挟んでいた。この店でお得意さまに配っていた金運上昇カレンダーだ。リケジョの手にもちゃっかり同じものが握られている。

「それで、今回のご相談内容は、宅配の方の…?」

「いえいえ!私ではなく、この子の事です」

と、リケジョは顔を赤らめながら膝枕を膝の上に乗せ、両手で膝をガードする。

「この膝枕は、あの、有名な『箱入り娘白雪姫』を書いた脚本家さんがモデルになっていて、作家の方々に様々なアイデアを与える膝枕なのです…が、ちょっと不具合がおきまして」

膝枕が不満そうに膝頭を下に叩きつけている。
仕方がなくリケジョが腕を緩めると、膝枕は辺りを見回すように膝頭を動かした。

「最近、韻を踏んでばかりいると」

膝枕は、占い師とリケジョの間に割り込み、ブラックミラーを覗き込んでいる。

「韻を踏むとは?」

「ラップという音楽で使うらしいのですが、私が聴いたところだと…五言絶句や七言絶句みたいなものかと」

占い師が眉間に皺を寄せて首を傾げていると、リケジョは慌てて、

「ええっと、確か…

 ヘビににらまれたカエルの心境
 ヘビーな空回り帰りたい新居

とか

 その場しのぎの腐ったヘリクツ 
 ほとばしる言葉で書きなリリック

だったと思います」

と、言葉を付け足した。

顎を前に出しながらリズムをとるリケジョの仕草はラッパーそのもので、占い師は思わず目を見開いて身を乗り出す。

いつの間にか占い師の横にきていた膝枕が、膝頭をパチパチ合わせていた。

「そのせいで『妄想が浮かばない』というクレームが」

「なるほど」占い師はカードをテーブルの上に広げ始めた。

その間も

「他にも

 妻は家政婦トンチンカン
 女見下すあんたアンポンタン

 人工知能にのせられて
 自己肯定感ブチ上げて

とか?

 ダンボール箱捨てずに保管
 いずれ返品ズルい魂胆

 度量じゃねーよあんたのは
 ただの浮気症、うわ、きっしょ!

とか…」

リケジョのラップが止まらない。
膝枕も韻に合わせて膝頭を打ち鳴らす。

店内のBGMが耳から遠のいていく。
黄色い丸い間接照明がミラーボールのように回り、どこからかビートの効いた軽快な音楽が占い師の脳内に響いてきた。

「カードの並びは 皆 最高
 このままいっても 無事 成功
 韻を踏むのも 脳内刺激
 妄想膨らむ 思考磨き」

占い師はカードを読み終えると、リケジョが目を見開いて身を乗り出している事に気付いた。
無意識に占い師も顎でリズムをとっていたのかもしれない。

リケジョが身を乗り出したまま固まっている横で、膝枕はリズムに乗って嬉しそうに跳ねている。

その様子を見ていた占い師の脳裏に、突然、『占い師が観た膝枕ップ』という文字と共に、韻を踏んだ文章がズラズラと浮かんできた。

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