人生で初めて『夢』を買ってみた話

タイトルをやたら誇張してみたけれど何てことない、先日初めて自腹で年末ジャンボを買ってみたという話だ。

宝くじの類は元々あまり興味がなかった。
中高生の頃、父がたまーに買うスクラッチを渡され、それを無心で削っていた。それくらい。
まあそうそう簡単に当たる訳もなく、せいぜい200円、つまり元値の一割が戻ってくる程度だったと記憶している。

大学生になって都会に出ようが社会人になろうが、今日の今日まで買う気にはなれなかった。
人はどうしてあんなにも低い確率を以てしてまで『夢』を買うのか。
到底理解ができなかった。否、懐にその『夢』を迎え入れてみた今も尚正直半分くらいは理解できていない。
それでも衝動的に買ってしまったのはどうしてだろう。
別にウン億欲しいなんて貪欲な望みはなくて(いやいや当たったら当たったでそれは無条件に嬉しいけど)、ある意味自分に対する『アンタまず行動しなきゃ何も始まらないぜ』という一種の自己暗示なのかもしれない。
ほら、買わないことには当たらない、みたいな。
どうしてそれを宝くじで具現化したのかは未だに分からんけど、そういうことにしておいて欲しい。

どこそこの売り場で高額当選者が出ましたとか、大安吉日に買うもんなのかとか全く意識しなかった。
ただ乗り換えの駅のあの辺りに売り場あったよな、なんて微かな記憶を頼りに足を運んで、売り子のおばちゃんの前でどこかで聞いたような「年末ジャンボ10枚、バラで」という初めての台詞を恐る恐る口にした。それだけで物凄くビビった。実にチキンだ。

10束ほどトランプのように広げてみせたおばちゃんが、この中から選んでと笑う。
少しだけ迷って、右から二番目の束を引き抜いた。
当たりますように、か。
私のような業が深い人間には程遠い世界かな。
テラ銭がぼったくりだろうがいいんだよ。
ハズレ券は綺麗に散って、少しくらいは地方自治体に貢献できるんだろう。それならそれでいい。
自分からちょっと前に進む、行動する“ごっこ”ができたので。

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