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初期教会の財産を貧しい人たちに

聖ラウレンティウス

3世紀半ばのローマの助祭だった聖ラウレンティウス(Laurentius 伊語:ロレンツォ Lorenzo)は、258年8月10日、暑いさ中のローマで火あぶりの刑で殉教した。執事、消防士、料理人、パン焼き職人、ケーキ職人、またローマ、ペルージャなど多くの都市の守護聖人。

4世紀初頭にローマ帝国内でのキリスト教の信仰を認めたコンスタンティヌス大帝は、聖ラウレンティウスの殉教の地に墓所礼拝堂を築いた。後に、6世紀末に教皇ペラギウス2世が教会を献堂し、その教会を13世紀に教皇ホノリウス3世が拡張して現在の教会の基盤を築いた。
まだキリスト教が公認されていなかった3世紀には、キリスト教徒たちの墓は、地下深くのカタコンベか、ローマの城壁外に作られた。
聖ラウレンティウスの墓も城壁外に作られ、その上に築かれた教会は城壁外の聖ラウレンティウス教会(San Lorenzo fuori le Mura)と呼ばれるようになった。

聖ラウレンティウスは鉄格子に縛り付けられ、燃えさかる炭の上で火炙りの刑を受けた。聖ラウレンティウスを描いた絵画、像は殉教の象徴である"鉄格子"を持っている。教会入ってすぐの所に助祭服を着て鉄格子を持った聖ラウレンティウスの像が立っている。

現在、城壁外の聖ラウレンティウス教会の主祭壇の下に聖遺物が顕示されている。

聖ラウレンティウスの記念日(8月10日)には朝8時から記念日の特別ミサが毎時正午まで開催される。夕刻19時からの荘厳ミサ(Solenne celebrazione)はダニエル・サレラ(Daniele SALERA)枢機卿の司式で執り行われた。

教会の入り口では、聖ラウレンティウスがパン焼き職人の守護聖人であることから、記念のパンと聖人の日記念のミネラル・ウォーターがサン・ロレンツォ(San Lorenzo)地区のご婦人たちにより、教会への献金のために販売されていた。
ローマ東南部のサン・ロレンツォ地区はローマ庶民の町として知られる。

荘厳ミサの後、20時頃から聖ラウレンティウス像、聖人の聖遺物を先頭にサン・ロレンツォ地区を回るプロセッションが始まる。プロセッションの後には、野外コンサートがあり、サン・ロレンツォ地区は夜が更けるまで多くの地域民で賑わう。

一方、聖ラウレンティウスを守護聖人としているフィレンツェでは、早朝から歴史的な衣装を纏った鼓笛隊が路上で演奏し、聖人の記念日の到来を告げる。
朝、フィレンツェの歴史的な市庁舎シニョリアでは市長出迎えの儀式があり、鼓笛隊が先導し、市長を聖ロレンツォ教会までエスコートする。

メディチ家の宮殿の近くに築かれたフィレンツェの聖ロレンツォ教会まで厳かな歴史絵巻が続く。フィレンツェに繁栄を齎したメディチ家最盛期の当主が"ロレンツォ"・メディチであったことから、聖ラウレンティウスはフィレンツェの守護聖人の一人となった。

11時から始まる聖ロレンツォ教会での特別ミサにはフィレンツェの消防士たち始め多くの市のお歴々が参加する。

特別ミサでは、フィレンツェ市長からフィレンツェ市を代表して聖ロレンツォ教会に蝋燭の贈呈される。

夕刻19時から聖ロレンツォ教会の階段を演奏ステージにして吹奏楽団のコンサートがあり、聖人の日を盛り上げる。

吹奏楽団の演奏が終わるころから、待ちに待った"施し"パーティがある。その昔からメディチ家が地域住民との親交を図るために聖ロレンツォの日にはパスタとスイカが振舞われる。約300年の歴史のある住民へのお持て成しだと言われる。

施しのパーティには市長さんも裏方としてパスタ作りに、スイカ切りに、市民へパスタ、スイカを配って歩き大活躍。市長さんは聖ロレンツォの日は早朝から夜遅くまで大忙しだった!


聖人録

聖ラウレンティウス

Saint Laurentius

ラウレンティウスは、3世紀初頭スペイン北東部のアラゴン地方のウエスカ(Huesca)でキリスト教徒の家に生まれた。生まれ故郷に近いサラゴサで学んだ後、ローマに行き、教皇シスト二世に仕えた。教皇の信任も篤く、執事として教会の財産を管理していた。
258年、皇帝ヴァレリウスの治政下でキリスト教徒の弾圧が始まり、教皇が捕らえられ殉教した。その後、ラウレンティウスも捕らえられた。教皇から委ねられた教会の財産を差し出すように命じられたが、ラウレンティウスは拒否し、貧しい信徒たちに分け与えてから殉教した。

ピーテル・パウル・ルーベンス作
ミュンへン アルテ・ピナコテーク 所蔵

ラウレンティウスは殉教に際し、激しく鞭打たれた後、鉄格子に縛り付けられ燃え盛る焚火で炙られた。片面が焼かれた後に刑の執行人に「もう片方も焼いてくれ」と言ったという。それを見た人たちがキリスト教に改宗したといわれる。
ローマでは、流れ星はラウレンティウスを焼いた石炭に見立て、流れ星が多い8月の夜は「聖ロレンツォの夜」と呼ばれる。
ラウレンティウスの仏語はローラン(Lauren)、英語はローレンス(Laurence)





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