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サンタクロースがやって来る!

オランダ・アムステルダム

X'masとは、ギリシア語のΧΡΙΣΤΟΣ(キリスト)を省略したXと英語のMas(ミサ)の造語で、主に英語圏と日本で使われている。イタリア、フランス、スペインでは、Natalis dies (Domini)(主の誕生)から派生したNatale(イタリア語)、Noël(フランス語)、Navidad(スペイン語)、ドイツ語ではWeinachte(祝福する夜)、オランダ語ではKerstmis(キリストのミサ)と各国様々だ。言葉同様、ヨーロッパ各国のクリスマスの祝い方、慣習も違う。ヨーロッパ各国のクリスマスを訪ねてみよう。

ヨーロッパ各国で、サンタクロースがくる時期は違う。オランダが最も早く、11月中旬にサンタクロースがやってくる。運河の街アムステルダムでは、サンタクロースが船に乗り、市中を流れるアムステル川から運河を経て、アムステルダム港に到着する。

約400人の従者ズワルテ・ピート(Zwarte Piet)を従えたサンタクロースが乗った蒸気船が、アムステル川から運河に入ってくると、待ちわびていた子どもたちから大歓声が上がる。オランダの内陸では、サンタクロースが列車に乗って駅に降りたつ町もある。

アムステルダム港に到着したサンタクロースは、市長さんと報道陣に出迎えれられる。到着の様子はTVでライブ中継され、インタビューを受けた後、市長と子ども代表からアムステルダムの鍵を受け取り、市内パレードが始まる。

サンタクロースとは、聖ニコラオスのこと。17〜18世紀に、オランダ周辺から多くのアングロ・サンクソン人が北アメリカ大陸東部に渡り、新天地を開拓した。その際に、オランダ語のシンタクラース(Sintaklaas)も大陸に伝わり、サンタクロースになったといわれる。その昔、ニューヨークニューアムステルダムと呼ばれ、オランダ系移民の多い都市だった。

パレードは、音楽隊を先頭に、サンタクロースに率いられた従者のズワルテ・ピートが子どもたちにお菓子やオレンジのプレゼントを配って歩く。ズワルテ・ピートに名前を書いてもらったシールを胸に貼って、多くの子どもたちは興奮気味だ。

近年、サンタクロースの従者ズワルテ・ピートが物議を醸している。18世紀半ばに書かれたサンタクロースの物語の中で、ズワルテ・ピートはスペイン生まれのムーア人とされていた。ムーア人とは、アフリカ北部やイスラム圏出身の褐色の人種を指し、そのためにパレードに参加する従者たちは顔を黒く塗っていた(ズワルテ・ピートはオランダ語で「黒いピート」を意味する)。

昨今の人種差別問題で、オランダでもズワルテ・ピートは人種差別に繋がるという意見が多数を占め始めた。それでピートはプレゼントを届けるために煙突をくぐった際に黒く煤がついたと解釈するようになり、ピートの仮装メイクも黒塗りから煤け顔へと年々控えめになってきた。サンタクロース・ストーリーも時代と共に変わっていくようだ。


聖人録

聖ニコラオス

聖ニコラオスの祭壇画
Francois van den Pitte?(1430年頃ー1506年頃 ブルージュ) グルーニング美術館 所蔵

サンタクロースのモデルは、4世紀前半のに小アジア(アナトリア半島)・ミラの司教、聖ニコラオスとされる。270年頃、小アジアのアンタルヤの近くのパタラに生まれ、350年頃ミラで帰天したとされる。その生涯の詳細は知られていないが、資産家の息子として生まれたニコラオスは、財産を貧しい人たちのために使い、弱者を助ける徳を積んでいた。殺されて樽に塩漬けになっていた子どもたちを蘇生させた、難破しそうな船から船員を救った、など数々の奇跡が伝えられている。

娘が3人いる貧困家庭に三晩、ニコラオスが現れ、家に金貨を投げ入れ、貧しい3人の娘を身売りから守った。そのプレゼント行為がクリスマス・プレゼントの発祥に繋がったとも?

ニコラオスは死刑執行人から斧を奪い、冤罪の3人を救った。

聖ニコラオスの聖遺物は、司教の任に就いていたミラに顕示されていたが、11世紀初頭にイスラム教徒セルジュークが小アジアに侵攻して来た際、イタリアの商人によりイタリア南部の都市バリに移葬された。それ以来、バリの聖二コラ(Nicola:イタリア語)とも呼ばれるようになった。
ミラは現在のトルコにあるが、ニコラオスの時代はギリシア語が話されていて、ニコラオス(νίκηλαός)「人々の勝利」を意味した。イタリア語、フランス語は二コラ(Nicola)、英語 はニコラス(Nicholas)、オランダ語はニコラース(Nicolaas)、ロシア語ではニコライ(Николай)
聖ニコラオスは、子ども、船乗り、無実の罪に苦しむ人、酒屋、処女、学生、仕立て屋などの守護聖人。国家では、ギリシア、ロシアが守護聖人としている。


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