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「一つの中国」と台湾をめぐる各国の姿勢


はじめに

 台湾をめぐる報道は近年増加しており、台湾関連の情勢に関心が寄せられています。しかし、台湾に関する外交や政策について、根底には複雑な事実関係や不文律、ダブルスタンダード的な側面が存在しており、それを知る人やまとめている書籍も多くないため、よく分からないのが現状です。
 これだけで一冊の本が書けてしまう内容ですが、ここでは主に各国が台湾に対してどのような姿勢を取っているのかを、各国の公式声明や文書を基に確認したいと思います。

一つの中国について

 台湾との関係でよく問われる「一つの中国」という文言ですが、中国では「一つの中国」原則(One China Principle)、アメリカでは「一つの中国」政策(One China Policy)といったように、それぞれ解釈が異なり、かつ異なる言葉を用いています。
 また、「一つの中国」というキーワードについてどのような文脈において使用されていたのかも考慮する必要があります。1970年代に西側諸国が中国と国交正常化した際に、中国大陸における唯一の正当な統治者は共産党率いる中華人民共和国であり、国民党率いる中華民国ではないとのコンテクストで使用されていたと思われます。ここにおそらく近年「台湾独立」の概念が加えられたことで、解釈が複雑化していると考えられます。1970年代の台湾においても台湾独立派は弾圧されており、独立派は主に日本やアメリカで活動を行っていました。このような情勢を加味すると1970年代当時では「台湾独立」の概念は視野に入っていなかったのでは(当時の関係する文献を読み解かないと確定はできませんが)と考えられます。このように時代とともに言葉の解釈が移り変わり、政策について変化が生じるところも台湾を理解する上で容易ではなくなっている点でもあります。
 ここでは「一つの中国」原則についての中国政府の主張を見ることにします。これら主張はたびたび報道されていますので、目新しい内容ではありません。また、あくまでも平和的統一を進めるが、武力行使の放棄を約束する義務はないことも示しており、ここは近年各国が関心を寄せている内容ではないでしょうか。

一個中國原則
(前略)
解決台灣問題,實現中國完全統一,是中華民族的根本利益。
(中略)
台灣是中國不可分割的一部分。有關台灣的全部事實和法律證明,台灣是中國領土不可分割的一部分。
(中略)
一九四九年十月一日,中華人民共和國中央人民政府宣告成立,取代中華民國政府成為全中國的唯一合法政府和在國際上的唯一合法代表,中華民國從此結束了它的歷史地位。這是在同一國際法主體沒有發生變化的情況下新政權取代舊政權,中國的主權和固有領土疆域並未由此而改變,中華人民共和國政府理所當然地完全享有和行使中國的主權,其中包括對台灣的主權。
(中略)
中國政府在實行和平統一方針的同時始終表明,以何種方式解決台灣問題是中國的內政,並無義務承諾放棄使用武力。不承諾放棄使用武力,決不是針對台灣同胞的,而是針對製造“台灣獨立”的圖謀和干涉中國統一的外國勢力,是為爭取實現和平統一提供必要的保障。採用武力的方式,將是最後不得已而被迫作出的選擇。

一つの中国原則
(前略)
台湾問題の解決は、中国の完全統一を実現することであり、これは中華民族の根本的な利益である。
(中略)
台湾は中国の不可分の一部である。台湾に関わるすべての事実や法律が、台湾が中国領土の不可分な一部であることを証明している。
(中略)
1949年10月1日、中華人民共和国中央人民政府が成立し、全中国における唯一の合法政府と国際上での唯一の合法代表が中華民国政府からとって代わり、そこから中華民国の歴史的地位は終了した。これは国際法の同一主体に変更を加えることのない状況下で、旧体制が新体制に置き換わることであり、中国の主権と固有の領土境界線は変わらず、中華人民共和国政府は正当に中国に対する完全な主権を享受、行使し、その中には台湾の主権も含まれる。
(中略)
中国政府は平和統一政策を追求する一方で、いかなる手段であれ、台湾問題の解決は中国の内政問題であり、武力行使の放棄を約束する義務はないことを常に明らかにしてきた。 武力行使の放棄を約束しないことは、決して台湾の同胞に向けたものではなく、むしろ「台湾独立」を画策し、中国の統一を妨害する外国勢力に対抗するものであり、平和的統一の追求に必要な安全策を提供するためのものである。 武力行使は最後の手段であり、強制的な選択である。

一個中國原則(中国政府)

各国の姿勢

 ここでは各国が一つの中国や台湾に関してどのような姿勢や立場を取っているのかを列挙することにします。

日本

 1972年に日中国交正常化がなされた際に出された共同声明に一つの中国原則と台湾についての内容が盛り込まれています。ここで注目したい点は、台湾についてはあくまでも中国の立場を「十分理解し、尊重し」としている点です。つまり、この点においては中国の立場を明確に「承認する」とは言っておらず、理解や尊重といったように言葉を濁しています。次に見るアメリカや韓国、イギリス、EUも同様の姿勢を取っています。

日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明
(前略)
二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(外務省)

日中共同声明の第三項に「ポツダム宣言第八項に基づく」と記載されています。ここでポツダム宣言第八項の内容を見てみましょう。

ポツダム宣言
「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

ポツダム宣言

また、カイロ宣言では次のようなことが記載されていました。

カイロ宣言
満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ日本国ハ又暴力及貪慾ニ依リ日本国ノ略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルヘシ

カイロ宣言

このようにカイロ宣言では台湾島と澎湖諸島を中華民国に返還する旨が記載されています。なぜこの箇所を共同声明に盛り込んだのかについては、台湾の地位についてが北京での国交正常化交渉において最後まで残った争点であり、「中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」のみの提案では中国側が納得しなかったことが背景にあります。この一文を加えることで中華人民共和国への台湾の返還を認めるとする立場を意味することとなり、中国側の同意を得ることができました。(参考:台湾問題についての日本の立場-日中共同声明第三項の意味-日本国際問題研究所

最後に、日本政府は台湾との関係について非政府間の実務関係を維持するとしておりまして、経済といった民間主体の関係を継続するとしています。

問10.台湾に関する日本の立場はどのようなものですか。
台湾との関係に関する日本の基本的立場は、日中共同声明にあるとおりであり、台湾との関係について非政府間の実務関係として維持してきています。政府としては、台湾をめぐる問題が両岸の当事者間の直接の話し合いを通じて平和的に解決されることを希望しています。

外務省: よくある質問集 アジア

アメリカ

 台湾の政治的地位についてある意味では各国の姿勢に影響を与えることになったのが1972年に発表された「上海コミュニケ」です。この文書はニクソン大統領が訪中したことに伴い発表されました。この文書の中で「米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論をとなえない。」と記されている箇所について、米中双方の立場が一致したわけではないものの、少なくとも双方の主張が相容れたかのように見える微妙な表現をひねり出したそうです。また、双方の認識のズレは半世紀後の現在もそのまま残されているとのことです。(参考:台湾防衛 バイデン政権の"あいまい戦略"
 各国から遅れること1979年にアメリカは中国と国交を正常化しました。

Joint Communique Between the People's Republic of China and the United States
(前略)
The two sides reviewed the long-standing serious disputes between China and the United States. The Chinese side reaffirmed its position: The Taiwan question is the crucial question obstructing the normalization of relations between China and the United States; the Government of the People's Republic of China is the sole legal government of China; Taiwan is a province of China which has long been returned to the motherland; the liberation of Taiwan is China's internal affair in which no other country has the right to interfere; and all U.S. forces and military installations must be withdrawn from Taiwan. The Chinese Government firmly opposes any activities which aim at the creation of "one China, one Taiwan," "one China, two governments," "two Chinas," and "independent Taiwan" or advocate that "the status of Taiwan remains to be determined."

The U.S. side declared: The United States acknowledges that all Chinese on either side of the Taiwan Strait maintain there is but one China and that Taiwan is a part of China. The United States Government does not challenge that position. It reaffirms its interest in a peaceful settlement of the Taiwan question by the Chinese themselves. With this prospect in mind, it affirms the ultimate objective of the withdrawal of all U.S. forces and military installations from Taiwan. In the meantime, it will progressively reduce its forces and military installations on Taiwan as the tension in the area diminishes.

上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)
(前略)
双方は、米中両国間に長期にわたつて存在してきた重大な紛争を検討した。中国側は、台湾問題は中国と米国との間の関係正常化を阻害しているかなめの問題であり、中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府であり、台湾は中国の一省であり、夙に祖国に返還されており、台湾解放は、他のいかなる国も干渉の権利を有しない中国の国内問題であり、米国の全ての軍隊及び軍事施設は台湾から撤退ないし撤去されなければならないという立場を再確認した。中国政府は、「一つの中国、一つの台湾」、「一つの中国、二つの政府」、「二つの中国」及び「台湾独立」を作り上げることを目的とし、あるいは「台湾の地位は未確定である」と唱えるいかなる活動にも断固として反対する。

 米国側は次のように表明した。米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論をとなえない。米国政府は、中国人自らによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する。かかる展望を念頭におき、米国政府は、台湾から全ての米国軍隊と軍事施設を撤退ないし撤去するという最終目標を確認する。当面、米国政府は、この地域の緊張が緩和するにしたがい、台湾の米国軍隊と軍事施設を漸進的に減少させるであろう。

米中関係資料集

 参考までにアメリカの台湾政策は「戦略的あいまいさ(Strategic Ambiguity)」という言葉があります。これは中国が台湾を武力で侵攻した際に、アメリカ政府がどう対応するのか明確にしないことを指します。アメリカは中華人民共和国と国交を正常化させた後に中華民国と断交しますが、「台湾関係法」を制定し、台湾自衛のための兵器供与や台湾に危害を加える行為に対してアメリカが対抗能力を維持することを盛り込みました。(参考:台湾防衛 バイデン政権の"あいまい戦略"
 しかし、2022年にアメリカのバイデン大統領が「前例のない攻撃」があれば米軍は台湾を防衛すると表明し、その後大統領報道官は台湾政策に変更はないとあらためて主張することもあった。情勢次第では「戦略的あいまいさ」が変更される可能性が示唆されています。(参考:バイデン大統領の台湾防衛表明、米国の政策変化を浮き彫りに

韓国

 韓国が中国と国交正常化した際に、台湾については日米政府と同様の立場を取りました。国交正常化の際に1992年8月24日に北京で取り交わされた「韓中修交共同声明」では以下のように記載されています。

한중 수교 공동성명
3,대한민국 정부는 중화인민공화국정부를 중국의 유일합법 정부로 승인하며,오직 하나의 중국만이 있고 대만은 중국의 일부분이라는 중국의 입장을 존중한다.

韓中修交共同声明
3,大韓民国政府は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であることを承認し、唯一で一つの中国があり、台湾は中国の一部であるという中国の立場を尊重する。

韓中修交共同声明

北朝鮮

 北朝鮮政府の姿勢を確認するにあたり、2023年8月24日に駐中特命全権大使の李龍男が出した声明を参考にしました。「昨日も、今日も、明日も台湾は中国の台湾であり」とあるように、中国の立場を認めていることが垣間見えますが、ここでは承認ではなく「支持」という言葉を用いています。

중화의 대지에는 하나의 중국만이 있을뿐이다
(前略)
조선민주주의인민공화국은 무책임하고도 일방적인 강제조치로 대만해협정세를 극도로 격화시키고있는 미국과 그 추종세력들의 책동을 강력히 규탄하며 하나의 중국원칙에 따라 조국통일을 이룩하기 위한 중국의 모든 조치를 견결히 지지한다.
어제도,오늘도,래일도 대만은 중국의 대만이며 중화의 대지우에는 언제나 하나의 중국만이 굳세게 서있을것이다.

中華の大地には一つの中国があるだけだ
(前略)
朝鮮民主主義人民共和国は、無責任で一方的な強制措置で台湾海峡情勢を極度に激化させている米国と追従勢力の策動を協力に糾弾し、一つの中国原則に従い祖国統一を達成するための中国の全ての措置を激烈に支持する。
昨日も、今日も、明日も台湾は中国の台湾であり、中華の大地の上にいつも一つの中国だけが固く立っている。

北朝鮮報道で書かれないこと (dprknow.jp) 「中華の大地には一つの中国があるだけだ」:米国の台湾支援を非難、「一つの中国」を強調 (2023年8月24日 「朝鮮中央通信」)

ロシア

 2023年3月21日に行われた中ロ首脳の共同声明で「一つの中国」原則に対する支持と表明しました。また、台湾が不可分の領土であることについて「承認」するという言葉が使われています。これまで見てきた各国の姿勢の中で最も強い意味合いの言葉を用いています。

中華人民共和國和俄羅斯聯邦關於深化新時代全面戰略協作夥伴關係的聯合聲明
(中略)
俄方重申恪守一個中國原則,承認台灣是中國領土不可分割的一部分,反對任何形式的“台獨”,堅定支持中方維護本國主權和領土完整的舉措。

新時代の全面的戦略協力パートナーシップの深化に関する中華人民共和国とロシア連邦の共同声明
(中略)
ロシアは、一つの中国原則の堅持を再確認し、台湾が中国領土の不可分の一部であることを承認し、いかなる形の「台湾独立」にも反対し、中国の主権と領土保全を守る中国側の努力を断固として支持する。

中华人民共和国和俄罗斯联邦关于深化新时代全面战略协作伙伴关系的联合声明

ベトナム

 2023年12月12日に習近平がベトナムを訪問し、グエン・フー・チョン書記長と会談を行い、「包括的戦略的協力パートナーシップのさらなる深化と引き上げ、戦略的意義を有する中国・ベトナム運命共同体構築に関する共同声明」を発表しました。この際、ベトナムが「一つの中国」を支持することや台湾に関する認識も盛り込まれました。そして台湾が不可分の領土であることについて「承認」するという言葉がここでも使用されています。

中華人民共和國和越南社會主義共和國關於進一步深化和提升全面戰略合作夥伴關係、構建具有戰略意義的中越命運共同體的聯合聲明
(前略)
4.越方重申堅定奉行一個中國政策,承認台灣是中國領土不可分割的一部分,堅決反對任何形式的「台獨」分裂活動,支持不干涉各國內政原則,不同台灣發展任何形式的官方關係。

包括的戦略的協力パートナーシップのさらなる深化と引き上げ、戦略的意義を有する中国・ベトナム運命共同体構築に関する共同声明
(前略)
4.ベトナムは重ねて一つの中国政策をゆるぎなく推し進め、台湾が中国の不可分の領土の一部であることを承認し、いかなる形の「台湾独立」に関わる分裂活動に断固反対し、内政不干渉の原則を支持し、台湾との如何なる公式関係を構築しない。
※ここでは中国語版を取り上げているため「運命共同体」としているが、ベトナム語や英語では「未来を共有する」共同体(China-Vietnam community with a shared future of strategic significance、XÂY DỰNG CỘNG ĐỒNG CHIA SẺ TƯƠNG LAI VIỆT NAM - TRUNG QUỐC)と記載されている。

中华人民共和国外交部

イギリス

 1972年にイギリスが中国と国交正常化した際に、日米政府と同一の姿勢を示しています。

COMMUNIQUE ON THE AGREEMENT BETWEEN THE GOVERNMENT OF THE PEOPLE'S REPUBLIC OF CHINA AND THE GOVERNMENT OF THE UNITED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND ON AN EXCHANGE OF AMBASSADORS.
Both confirming the principles of mutual respect for sovereignty and territorial integrity, non-interference in each other's internal affairs and equality and mutual benefit, the Government of the People's Republic of China and the Government of the United Kingdom have decided to raise the level of their respective Diplomatic Representatives in each other's capitals from Chargeé d'Affaires to Ambassadors as from 13th March, 1972.

The Government of the United Kingdom, acknowledging the position of the Chinese Government that Taiwan is a province of the People's Republic of China, have decided to remove their official representation in Taiwan on 13th March, 1972

The Government of the United Kingdom recognise the Government of the People's Republic of China as the sole legal Government of China.

The Government of the People's Republic of China appreciates the above stand of the Government of the United Kingdom.

中華人民共和国政府とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府との間の大使交換合意に関するコミュニケ
中華人民共和国政府と英国政府は、主権と領土保全の相互尊重、相互の内政不干渉、平等と互恵の原則を確認し、1972年3月13日より、互いの首都に駐在するそれぞれの外交代表のレベルを、代理公使から大使に引き上げることを決定した。
英国政府は、台湾は中華人民共和国の省であるという中国政府の立場を認識し、1972年3月13日に台湾の公式代表部を撤収することを決定した。
英国政府は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法的政府として承認する。
中華人民共和国政府は、英国政府の上記の立場を認識する。

China (Exchange Of Ambassadors) - Hansard - UK Parliament

 2023年8月30日にイギリス下院の外交委員会が「台湾は独立国である」と明記した報告書を発表しました。以下が同報告書から抜粋した内容ですが、非常に攻めた内容を記載しています。国やそれに準ずる機関がここまで明確に独立国であると示した例は近年なかったのではないでしょうか。また、偶然なのかこの報告書が公表された同日に北京にて英国クレバリー外相と中国王毅外相の会談が行われました。

Tilting horizons: the Integrated Review and the Indo-Pacific
(前略)
141. Although Chinese officials claim that Taiwan has been part of China for 1,800 years, it was only when the Manchu Empire took control of China and Taiwan that China ruled there. However just as the British Empire took control of India and Sri Lanka at the same time, it did not make Sri Lanka part of India.
(中略)
142. Taiwan is already an independent country, under the name Republic of China (ROC). Taiwan possesses all the qualifications for statehood, including a permanent population, a defined territory, government, and the capacity to enter into relations with other states—it is only lacking greater international recognition.

傾く地平線:統合的見直しとインド太平洋
(前略)
中国当局は、台湾は1800年前から中国の一部であったと主張しているが、中国が台湾を支配したのは、満州帝国が中国と台湾を支配してからのことである。しかし、同時期に大英帝国がインドとスリランカを支配した際に、スリランカをインドの一部にしたわけではない。
(中略)
台湾はすでに中華民国の名の下の独立国家である。台湾は、恒久的な人口、明確な領土、政府、他国と関係を結ぶ能力など、国家としての資格をすべて備えており、より広い国際的な承認が欠けているだけである。

Tilting horizons: the Integrated Review and the Indo-Pacific

EU

 EUも同様に一つの中国政策を追求し、尊重するといった立場を取っています。また、台湾との関係は継続的に発展していくとしており、台湾海峡における問題については平和的解決を支持するとしています。

The EU confirms its "One China" policy
The EU commits itself to maintaining its strong links with Hong Kong and Macao and to promoting respect for the Basic Law and the "One Country, Two Systems" principle.
The EU confirms its commitment to continuing to develop its relations with Taiwan and to supporting the shared values underpinning its system of governance. The EU should continue to support the constructive development of cross-Strait relations as part of keeping the AsiaPacific region at peace. Accordingly, the EU will use every available channel to encourage initiatives aimed at promoting dialogue, co-operation and confidence-building between the two sides of the Taiwan Strait. The EU should promote practical solutions regarding Taiwan's participation in international frameworks, wherever this is consistent with the EU's "One China" policy and the EU's policy objectives.

EUは「一つの中国」政策を確認する
EUは香港やマカオとの強い関係を維持することをコミットし、基本法と「一国二制度」原則を尊重し、推進する。
EUは、台湾との関係を継続的に発展させ、台湾の統治システムを支える共通の価値観を支持するというコミットメントを確認する。
EUは、アジア太平洋地域の平和維持の一環として、両岸関係の建設的な発展を引き続き支援すべきである。従って、EUは、あらゆる手段を用いて、台湾海峡両岸間の対話、協力、信頼醸成の促進を目指すイニシアティブを奨励する。EUは、台湾の国際的枠組みへの参加に関して、それがEUの「一つの中国」政策およびEUの政策目標に合致する限り、現実的な解決策を推進すべきである。

JOINT COMMUNICATION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT AND THE COUNCIL Elements for a new EU strategy on China(2016)

OVERALL RELATIONS

While the EU pursues its “One China” policy and recognises the government of the People’s Republic of China as the sole legal government of China, the EU and Taiwan have developed solid relations and close cooperation in a wide range of areas.

Regular consultations between the EU and Taiwan deal with issues of mutual interest, such as human rights, trade and economic issues, connectivity, innovation, digital issues, green energy, circular economy, labour issues, and disaster management.

The EU has a strong stake in peace, security and stability in Asia. The EU supports the status quo and peaceful resolution of differences across the Taiwan Strait, rejecting the use or threat of force. It continues to encourage dialogue and constructive engagement.

全体的な関係
EUは「一つの中国」政策を追求し、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法的政府として承認しているが、EUと台湾は幅広い分野で強固な関係を築き、緊密な協力関係を築いてきた。
EUと台湾の定期協議では、人権、貿易・経済問題、コネクティビティ、イノベーション、デジタル問題、グリーンエネルギー、循環型経済、労働問題、災害管理など、相互に関心のある問題を扱っている。
EUはアジアの平和、安全、安定に強い関心を持っている。EUは、現状維持と台湾海峡における相違の平和的解決を支持し、武力行使や武力による威嚇を拒否する。EUは引き続き、対話と建設的な関与を奨励する。

An overview of the bilateral relations between the EU and Taiwan

まとめ

 以上で見てきたように各国の台湾に対する姿勢は半分言葉遊びのようなあいまいさを有しており、どのような場面でも対応、弁明できるような余地を残していることが垣間見れます。
 そして一貫して言えることは中国大陸における正当な統治者を中華人民共和国としており、中華民国は国として認めていない姿勢を各国が有していることです。これは中華人民共和国と国交を結ぶにあたり、必須条件でもありますので、西側諸国としても妥協できるポイントだったのではと思われます。その反面中華民国とは断交しても、台湾との関係は非政治的な側面で継続させており、各国も実質的な大使館と呼べるような「経済事務所」を設置するといったように、何らかの形で関係性を継続しています。台湾に対する外交や政策にはこのような複雑な事実関係が絡み合っており、正しく理解をするには事実を基にそれらを紐解いて、今現在何について語っているのか、どのような問題が発生しているのかを理解する必要があると思います。
 今回はそれを見るにあたり、自分なりに各国における台湾に対する姿勢をまとめることにしました。

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