ヨーグルトメーカーでつくる、手作り納豆
毎朝、納豆売りができたての納豆を売り歩いていた。静岡で少年時代を過ごした父はそう話していたが、父に限らず、関東の人にとってはまさに納豆は毎朝のご飯の友だっただろう。今は日本を代表する伝統食の一つとなってはいるが、関西で納豆が食べられるようになったのはここ30年ほどのことだ。
平安時代に前九年の役で父・頼義とともに奥州へ戦いに出向いた源義家が、地元の農民に軍馬のための飼料供出を命じた際、農民たちが煮豆を藁に包んだものを持ってきたという。その煮豆が何日かたって、偶然発酵してできたのが「納豆」だという言い伝えがある。実はその発祥はもっと古く、弥生時代にまでさかのぼるのではないかという説もあるようだが、今に至るまで、生産・消費の中心が北関東から東北である事実を見ると、義家の納豆伝説にもうなづけるものがある。
▲茨城県の納豆メーカー・タカノフーズ工場内
にある「納豆博物館」の展示。
最近では全国津々浦々のスーパーで、パック入りの納豆が販売されているが、特に関西ではもともと納豆に馴染みが薄かったせいか商品管理が適切でないことがあり、パックを開けてみるとひからびたようになっていたり、二次発酵したような苦みがあったりすることがある。関西人に納豆嫌いが多いのは、実はそんなことが理由の一つかもしれない。
そんなこともあり、「できたての納豆を食べてみたい」ということから、自宅で納豆づくりをするようになった。市販の納豆を「タネ」にして、ヨーグルトメーカーを使えば、比較的簡単に作ることができる。コツは大豆をよく洗って表面に納豆菌がつきやすくすることと、ヨーグルトメーカーに入れるとき、豆の乾燥を防ぐために空気穴を開けたラップを上からかけること。
用意するもの
大豆:250グラム 市販の納豆:小さじ1圧力鍋 蒸し板 ざる(金属製)電熱器(加熱・保温の切り替えができるもの)ヨーグルトメーカー 薄手のふきん
作り方
(1)大豆を水につけておく。(夏場は半日、冬場は丸一日を目安にする)
(2)水につけておいた大豆をよく洗い、防虫剤など表面の汚れを落とす。
(3)2~3センチ水を入れた圧力鍋の底に蒸し板を敷き、その上にざるを載せる。ざるの中に、手で水を切った大豆を入れる。入れるときに、はがれた皮があれば取り除く。
(4)圧力鍋を火にかける。
(5)圧力がかかって湯気が立ってきたら火を止め、電熱器で加熱する
(ガス代節約のため)
(6)1時間ほど経つと、鍋の中の水がなくなり湯気が立たなくなるため、電熱器を保温に切り替え、さらに1時間おく。
(7)ヨーグルトメーカーの容器に水を少量入れ、電子レンジで2分加熱し煮沸消毒する。
(8)タネとなる納豆を小さじ1とり、加熱済みの容器の湯に入れてかき混ぜ菌液を作る(タネとなる納豆はジップロックに小分けし、冷凍しておくとよい。粉末納豆菌を使ってもよい)。今回は「なっとういち」を使用。
(9)蒸し上がった大豆を熱いまま少しずつ入れ、菌液と良く混ぜる。
(10)全部の大豆を入れたら、容器の口にラップをかけ、針で穴をあける(20〜30穴ほど)。ラップをかけるのは加熱によって大豆が乾燥するのを防ぐため、穴をあけるのは納豆菌の呼吸のため。
(11)ヨーグルトメーカーに容器を設置し、45度で12〜24時間を目安にタイマーをセットする。通気のためにフタは少し開けておき、容器の上に通気性のよいふきんをかけておく。
(12)環境やタネにする納豆菌によって、適度な発酵時間が異なるため、12時間たったところで発酵具合を見る。納豆菌が順調にふえていると、豆の表面が白っぽくなっている。全体に均一に発酵するように消毒した匙で上下をよくかき混ぜて酸素を取り込むこともある。発酵具合によって、さらに8〜12時間(最大48時間)発酵させる場合もある。確実なものでないので、発酵の見極めは経験や好みで判断する。下の写真は12時間後にかき混ぜたもの、底の方にあった豆が白っぽく写っている。通気性を考えるなら深さは2〜3センチが適当だが、本格的な発酵器でないメーカーでは難しいところ。
(13)匂いや粘り具合を見て、良いと思ったところで、発酵終了。
(14)二次発酵を防ぐため(パックに詰め替えても良い)すぐに冷蔵庫に入れ、一晩から二晩熟成させれば出来上がり。
(15)吸水により大豆は2〜2.5倍に膨れるため、250グラムの大豆で作れる納豆は550〜600グラムほどになる。1週間は持つので、これがわが家の1週間分。
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