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「先行投資した結果、市場で勝てるのか」の判断は、経営戦略の「本質的な問い」である。


たとえ赤字であっても本田のような経営者が市場にエクイティストーリーを訴え、グレアムのような投資家が冷徹な目で企業を鍛えていく。このような攻防が続いてこそ企業は成長し、株式市場は日本経済のエンジンになる。その市場にゾンビ企業の居場所はない。投資家は健全な赤字を容認しても、赤字を垂れ流す企業にも、全体は黒字でも赤字部門を抱え続ける企業にも厳しい目を向けるだろう。上場企業の半数近くはPBR(株価純資産倍率)が1倍を割り、株価が解散価値を下回る。赤字を掘る覚悟があるのか――。重い問いが浮上している。

仕事柄、最近、SaaS企業の事業特性分析やValuationを行うことが多い。

ARR(Annual Recuring Revenue)や、Churn Rate(解約率)、ユーザー獲得コスト(以下、Blended CAC)、LTV(顧客生涯価値:顧客が一定期間内にその企業の商品やサービスを購入した金額の合計)など、従来の財務分析では使わなかったKPIが並ぶが、話の本質はそこではない。

日本の産業構造上、今まで間接金融が中心であった、日本では資金の出し手は銀行が中心であり、永年、1つ1つの「商い」で儲けを出すことを「是」として、黒字至上論がまかり通っていた。その結果として日本ではコストアプローチが前提の「決算書が正義」となっている。

ご存じの通り、日本は損益計算書重視(P/L アプローチ)であり、
一定期間の活動成果である純利益を重視(期間損益計算重視)し、
投資のリスクから解放された時点での収益認識するので、基本、「赤字は悪」だということになる。

一方で、米国は貸借対照表重視(Asset/Liabiity アプローチ)であり、
企業価値を(将来キャッシュフロー)として認識し、公正価値(時価)主義の色彩が強く、2時点間のB/Sの変更内容を包括利益として認識する。

いわゆる、資産の変動の差分が利益という考え方である。

だから、赤字の中身が大事であり、先行投資の赤字なのか、商売としての赤字なのかで、その意味合いは全く違う。

但し、「先行投資した結果、市場で勝てるのか」の判断は、経営戦略の「本質的な問い」であり、発行体も投資家もコミュニケーション含めた様々なスキルアップが必要となってくるので、日々精進が必要だ。

#COMEMO #NIKKEI

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