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2-3.種類株の権利は財産権、議決権、そして株主の地位。種類株の入り口の話。

資本政策の目的は第三者割当増資や株式移動等の方法により、株主構成の適正化を図ることですが、現在の発行体の株式価値に対して、巨額の資金調達を行わなければならない場合、種類株を活用することを検討します。

I. 種類株とは?
種類株は、株式の権利の内容が異なる株式のこといいます。これは配当の支払いや株主総会での議決権などに関し、普通株式とは権利の内容が異なる株式を指し、発行体にとっては多様性のある資金調達を図ることが可能になっています。

会社法では以下の9種類の種類株を想定していますが、これらを単独発行でなく、複数の権利内容を組み合わせて1つの種類株にすることも可能です。

1.剰余金の配当についての種類株式
2.残余財産の分配についての種類株式
3.議決権制限株式
4.譲渡制限株式
5.取得請求権付株式
6.取得条項付株式
7.全部取得条項付株式
8.拒否権付種類株式
9.取締役・監査役選任権付株式

1. 種類株の資本政策はほとんど開示されていない

今まで種類株の運用は業績不振の上場会社に対して、金融機関や若しくは国(財務省)が事業再生の一環として使用した場合が多く見受けられましたが、最近ではIPOを目指す資本政策で一部のベンチャーキャピタルも種類株を使用しています。但し、上場会社では株主は持株比率において平等であるとの認識が強く、証券取引所から、IPO時には全て普通株で上場する旨の指導があります。

最近では一部のメガベンチャーを中心に、種類株の調達が多くなって来たとは言え、まだまだ専門領域が多く、その仕組みをしっかり理解でき、攻めの種類株を運用出来るCFOの存在の有無が重要です。

日本では2003年にイー・アクセスが種類株を持ち越したまま上場しましたが、現在も種類株を持ったまま上場したのは、2014年3月26日に上場したCYBERDYNEのみです。(合併前の※国際石油開発帝石が上場する時に経産省が黄金株を1株持っていますが、国策が背景にあるので今回参照しません。)

そのために、仮にIPO前に種類株があったとしても、IPO時までには普通株に転換されていることがほとんどであり、転換前の種類株の内容は目論見書にも記載されないため、なかなか一般には認識されて来なかった背景があります。これが今まで種類株の資本政策がまだ一般化されてない理由だと考えています。

2. 創業経営者の支配力を低下させずに資金調達を行う手段

上記に記載されている種類株の権利のうち、実際にIPOの資本政策で使用されるのは以下の表①の内容が多いです。

大きく区別すると、次の3つになります。

① 財産に関する権利
配当を優先して受ける権利、残余財産の分配を優先して受ける権利を持つ、配当、資産分配に関する種類株です。
② 株主の地位に関する権利
株主が発行体に対して株式の取得を請求したり、若しくは発行体が株主から、株式を取得出来る権利を持った株式を強制的に買取る種類株です。
③ 議決権に関する権利
ある議題に対しては拒否権を有したり、役員を選解任出来る等、個別事由にのみ、議決権を有する種類株となります。


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