見出し画像

【書評】「東大教授が教える独学勉強法」著・柳川範之

週末に混み合う書店は、様々なコーナーにいろんな人がいて見ているのが楽しい。それだけいろいろな本が存在するのだろうと想像するとワクワクするものだ。

書店に行くと、自分との対話が始まる。どのような本に興味を持つかによって、何をしたいのか知らず知らずのうちに考えられる。今回は立ち寄ったコーナーが複数あったが、文庫本の平積みのコーナーに、他の書店等で見ていて気になった本があった。

それがこの、「東大教授が教える独学勉強法」であった。

東大の教授が教えてくれるのだから、読みやすいのだろうという期待と、帯の「三省堂書店神保町店で2018年に最も読まれた本」とあり、明治大学のOBとして親近感が湧いたということも理由で挙げられるが、まず第一に「独学」について学ぶべきである、という意見が自分の中にあった。

なぜ独学について学ぶべきだと思ったのか。それは社会人になって自分で答えを出すべき問題に当たることが多くなったこと、学生の時には勉強すべきテーマが目の前にあったが、今はそのテーマが見えないことが挙げられる。学ぶことを止めるのは停滞を意味するので、それは避けたいが何をして良いかわからない、という状態である。その不安を解決するためにこの本を買った。

結論から申し上げると、目を見張るような新しい方法というよりかは、独学について体系的にまとめる+筆者の考えという本であり、非常に読みやすかったし、頭が整理されて良書であると感じた。

各章毎にどんな内容のことが書いてあるのかを自分なりに要約してみる。

1章:新しい勉強が必要とされる時代

勉強の意義を、現在と過去の違いについて述べた上で、現在どんな勉強が必要となってくるのかが書かれている。

過去:今から100年近く前の学問といえば「情報」自体が少ない時代であったがゆえに、洋書を持ち帰り訳すことは一生飯を食えるほどの仕事となり得た。

現在:インターネットの普及により、様々な情報が手に届くようになった。また、「覚える」というような単純作業はAIの得意分野であり、人間は「考えること」が必要となる。

外山滋比古氏の「思考の整理学」でも似た考えの記述がある。過去の教育では自分のエンジンを持たない「グライダー型」の人間を育成していたが、自分のエンジンを持つ「飛行機型」の人間が必要となる、と「考える人間=飛行機型」と捉えた同一の趣旨の発言があったことを、今回思い出した。


2章:なぜ独学が、一番身につく勉強法なのか

独学におけるメリットについて、この章では書かれている。

独学のメリットは①自分のペースでできる、②自分にあった参考書を選べる、③自分の評価をする力が身につくことであると書かれており、確かに自立心が育つ考えだろうと思う。

答えがある試験勉強等では、偏差値等で自分の現在地がどこにあるかを客観的にみることができる。しかし、答えのない勉強ではそうはいかない。私は、③の能力が独学で身につく能力として最も素晴らしい能力であると感じる。評価ありきの勉強ばかりしてきて、相対的な評価がない状態で自分の評価をすることは非常に難しい。これから身につけていきたい能力だ。

3章:勉強をはじめる前にやっておきたいこと

実際に独学を始める前にやっておくべきことが、この章では書かれている。

独学をする前提として「それぞれに思考のクセがあるのだから、理解が早い人、遅い人がいて当然で、自分の理解が遅いから悲観することはない」「ベストセラーでも合う本、合わない本があるのは当然だから、自分にあった参考書を探そう」ということが挙げられている。

書店で立ち読みをすることが多い私だが、ベストセラーだからといって手に取ってみても「読みにくい」と感じる本はあった。もちろん私の読解力不足もあるのだろうが、合う本、合わない本があるとわかっただけでも良いかもしれない。ただし、自分が読みやすい本ばっかり買ったら、凝り固まった考えになってしまうのではないかという怖さはあるが…自戒も込めて書いておく。

4章:新しい分野に、どう取り掛かり、学びを深めていくか

いざ独学をスタートする上で、どんなことに気をつければ良いか、この章では書かれている。

この章で印象に残ったのは「本の中に正解を探さない」「マーカーを引かず繰り返し読むことがよい」というところだ。

私は、本に書かれている知識や考えをなるべく取り入れたいと考えていたが、「疑って考えることで、自分の言葉で噛み砕く」ことができるので、本の記載が正解ではなく、自分で考えてみようという意見であるということで、なるほどと納得したところである。

また「なぜマーカーを引かないのか」。それは最初に読んだときは全てが重要に見えてしまうからで1回目は著者の意見を把握する、繰り返し読み、2回目以降で要点を捉えることで理解が深まるからだということである。著者が意図しない理解であってもそれはそれで自分にとっての理解、学びになっているから良いと書かれていたのはとても印象的だった。独学が自由であることを示してくれていると思う。


5章:学びを自分の中で熟成・加工し、成果をアウトプットする

勉強で大事なことは「加工・熟成」、アウトプットであることが、この章では書かれている。

なぜ「加工・熟成」、アウトプットが必要なのかというと「応用力」を身につけるためである。現実に起きる問題は、想定している状況と異なることがほとんどであり、勉強したことを覚えるのではなく、知恵として身につける過程で考えることで身につくものである、と記述があり、これもなるほどと思ったが、アウトプットについては、早いうちにしたほうがいいかもしれないと思うところもある。「鉄は熱いうちに打て」というように定着を早めるためにはまさに熱いうちにアウトプットすることが有効かと思う。


以上、5つの章から構成されている。

独学をしようと考えている人にはどんな人であれ、一度目を通して損はないというような内容になっていると思う。独学をする上で迷いが生じたら、またこの本を読みたい。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?