ゲームを語るためのややこしい「ことば」をまとめてみた
以前、インディーゲームにかんする興味深い記事を読んでいた。ふむふむなるほど、内容はとても勉強になる。ところが「インディーゲーム」が「インディーズゲーム」とか「インディーズ」と表記されているのが、どうしても違和感を覚えてしまい内容があまり入らなかったことがある。
実は「インディーゲーム」に限らず、ゲーム文化には色々な専門用語(テクニカルターム)がある。他にも「レベルデザイン」「ゲームメカニクス」「ナラティブ」など、ゲームを語りたい人によってよく使われるが、実際にそれがどういう意味を持つかはメディアによっても差異があり、しばし混乱を招く。
もちろん、「そんなに細かいことを気にしなくてもよくない?」と思う人もいるだろう。実際、筆者もSNSやnoteで書く分には細かい表現や定義は気にしなくていいと考えている。しかし、ゲーム企業の人や、ゲームについて特に熱く語りたい人であれば「ゲームのことば」をただしく使い分ければより説得力が増すだろうし、SNSで重箱の隅をつつかれる心配も減る。
そこで、一応ゲームメディアやこのゲームゼミでゲームにかんする文章をしばしば書く筆者なりに(そんな自分もちょくちょくやらかすが)、特にややこしい「ゲームのことば」をまとめようと考えた。
もっとも、ここでは「正しい言葉遣い」を強要するつもりはない。どちらかといえば「こういう言葉には色々な解釈があるよ」とか「他にこういう表現があるよ」という考えを、あくまで筆者個人の解釈で「提示」するにとどめている。(より詳細な学術的な議論にかんしては、研究者の著作や発言を追っていただきたい)
もし、SNSやnoteなどでゲームについて語ろうと考えている人や、こういうややこしい「ゲームのことば」について知りたいと考えている人がいれば、この記事は何かしら役に立つはずである。
インディーゲーム vs インディーズゲーム
さて、最初に考えたいのが「インディー”ズ”ゲーム」と「インディーゲーム」どちらが正しいのか、という問いだ。結論から言えば、基本的に「インディーゲーム」が正しいというのが筆者の考えだが、その理由を説明したい。
まず「インディーズ」という表記を、アルファベットに置き換えてみよう。すると「Indies」となる。これは「Indie」に複数形の「s」がついているわけだが、実はここが問題になる。
そもそもインディーゲームの本来の表記は、Indie gameだ。これはgameという名詞に、Independent=独立という形容詞がかかった表記になっていて、併せて「(主に権力的・資本的に)独立した開発者によるゲーム」という意味になる。
だからIndie gameという表記になおし、これを複数形にしたとしても、Indie game”s”のように名詞が複数形になってもIndie"s" gameのように形容詞は複数形にならない。だから、「インディーズゲーム」という表記は文法的に少し違和感を覚える、ということ。
(なおソニー公式で「インディーズゲーム」とあるので、その文脈では間違いとは言えない表現)
一応、Independentは名詞としても機能するのだが、その場合は「a politician who does not represent a political party(無党派議員)」もしくは「a shop, small business, etc. that is not part of a large company(大企業に従属しない、小さな商店もしくは小規模事業)」のような、主に主体性のある人・法人を指すらしい(Cambridge)。
なので、強いて言えばスタジオや開発者を「インディーズのゲームスタジオ」とか「インディーズのゲームディベロッパー」と呼ぶ分には、和製英語の文脈としては(多分)まだ通じると思う。
なお、昨今はインディーゲーム市場の拡大に伴って、「そもそもインディーゲームって何だよ?」みたいな疑問も挙がっている。それは完全に脱線してしまうので割愛するが、いずれこのテーマについも別で論じたい。
ゲームメカニック vs ゲームメカニクス
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